「女王の教室」
ちょっと前話題になったテレビドラマ「女王の教室」の話なんですが、昨日、二、三のブログでそれについて読みました。
あのドラマはとても面白く、私は毎週とても楽しみにしていました。最終回が期待はずれで拍子抜けでしたけれど。
ネット上では、教師のありかたについて色々論評がなされているようですが、私はごく単純に、「導く者は自分が嫌われる覚悟をしているか」という問いかけであろうと理解しました。
体罰は許されない、とか、授業中にトイレに行かせないのはあんまりだ、などの意見はわかりますが、「子どもが反発心を抱く教師像」を、ドラマ用に思い切りデフォルメした形に過ぎないでしょうから、あの先生のやり口にそんなに目くじら立てる必要はなかろうと思います。
ああいう教師は良いも悪いも、悪いに決まっていますから。
現実にあんな先生がいたら保護者達は黙っていません。
私はあのドラマを見ていて、昔読んだ星新一のショートショートを思い出しました。
死刑囚と刑務所長の話です:
【人情味あふれる所長は、死刑が確定している受刑者が穏やかな心で死を迎えることを願い、せめて死ぬまでの間、暖かく接することを心がけた。
所長の真の愛情に触れた死刑囚たちは涙を流しながら罪を心から反省し「今度は必ず真人間に生まれ変わります。あなたに出会ったことは本当に幸せでした。」と言って死んでいった。
しかし、その後も凶悪犯の数は減らず、相変わらず死刑囚が次から次へと送り込まれて来た。
なぜ、悪い人間は増え続けるのだろう、と悩んだ所長はあることを思いついた。次に送り込まれて来た死刑囚に、今までとは全く違う対応をしたのである。死刑囚を罵り、あざけり、非人間的な扱いをしたのだ。死刑囚の方も負けてはいない。世の中や所長を口汚く罵倒しながら死刑執行に臨んだ。
不思議なことにそれ以来凶悪犯の数が激減した。】
これは生まれ変わりを題材にしたファンタジーなので、荒唐無稽ですが、面白い示唆ですよね。
私は短大の時、教えるより怒鳴っていたという印象の教員に出会ったことがあります。(「哲学の時間」)
しかし、その経験は後になって考えるととても興味深い問題提起をしてくれていたのです。
「女王の教室」では、子ども達が怖い先生の本当の姿を卒業式までに知る、という筋書きでしたが、本当は、子ども達が大人になってからの一つのストーリーを最終回のエピソードとして作り上げれば良かったんじゃないか、と思いました。
「仰げば尊し」を、あんなに長々と聴かされるのは、ちょっと辛かった。
人間の自己矛盾の極みとして、「人を育てる教育者の逡巡」がありますね。 つまり、「ものわかりの良い先生」「行き届いた教育」が「賢い人間」を育てるとはかぎらないということを教育者自身が身にしみてわかっていることじゃないでしょうか。
「英国文学は、名門私立の悲惨な学校生活から生まれた、とはよく言われるが、私の通った公立校も、作家を生むに充分悲惨だった」___イギリスのある作家の言葉だそうです。
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コメント
コメント・ありがとうございました。
「女王の教室」「株の話」
読ませていただきましたが、人生の味が”ピリッ”と効いていて、ほほえましい記事ですね。
私も聖書は6回も読みましたが、このエピソードは忘れていました。
どちらかというと旧約聖書の波乱万丈な「パレスチナの興亡」のほうが好きだったのですが、新約にもブログの記事になる題材がありますね。
私も機会があったら書いてみることに致します。
では、今後ともよろしくお願い致します。
投稿: 紫藤ムサシ | 2005年10月20日 (木) 02時42分
>紫藤ムサシさん、
読んでいただいてありがとうございます。
>どちらかというと旧約聖書の波乱万丈な「パレスチナの興亡」のほうが好きだったのですが<
そうですね、読み物としては物語性のある旧約のほうがずっと面白いでしょうね。私はよく知られているエピソードのところ以外はあまり読んでいませんが。
あの長大な書物を6回もお読みになったとは・・・、驚愕。
これからもそちらの記事を楽しみにしております。
投稿: robita | 2005年10月20日 (木) 11時47分
書き忘れました。
紫藤さんのブログにTBしたのですが、届いてないようなのでURLを貼り付けます。→http://blog.livedoor.jp/robita_48/archives/50013200.html
紫藤さんのような科学的分析はできませんが、「なんとなーく」の文章もよろしかったらお読みください。
投稿: robita | 2005年10月20日 (木) 12時03分
死刑囚と所長ですか?本当に扱いを変えるなら、刑期を終えれば社会に戻る人達ではないでしょうか?そうしないと、この話しの筋が通らないように思えてしまいます。
ところで何ヶ月か前から気づいていましたが、robitaさんはいつから意地悪婆さんに変身したのですか?以前は「なるべく毒舌はひかえます」だったのに。
そうですね。ここは変身前と変身後のイラストかアバターを付けると面白いと思うのですが。
投稿: 舎 亜歴 | 2005年10月22日 (土) 20時48分
>舎さん、
もうほんとに真面目なんだからあ。
生まれ変わりのファンタジーですてば。
でも、仰るとおり現実的に考えれば、刑務官は、受刑者の心を溶かす温情型が良いのか、それとも「もう二度とこんなところへ来るもんか!」と思わせる非情型がいいのか・・・・うーん。
プロフィールなんですが、たまに変えます。「お気に入りお笑い芸人」を入れてた時もあったのですが、あんまり人気が出ちゃったので消しました。
>アバター
そうですね。長谷川町子の「いじわるばあさん」なんかつけると、過激さがちょっと緩和されるかも。
投稿: robita | 2005年10月24日 (月) 10時09分