横田めぐみ__怒りと正義
金英男氏の会見について、ワイドショーなどでは、「あれは北朝鮮に言わされている。あの国では自分の意見は言えない」という論調が主流だ。
もちろん、北朝鮮政府の方針に従って語っている、というのは間違いないのだが、彼の表情や語り口を見ていて、ああ言わざるを得ない苦しさを全く感じることができなかった、というより、非常に堂々とした態度から察するに彼は普段からこういう話を聴衆の前でするのに慣れている人ではないかと思った人も少なくないと思う。本心を偽っているのでなく、あれは彼自身の意見でもあるのだろうと思う。
そこら辺に横田めぐみさんが入院を余儀なくされるほどに病を深刻化させた原因があるのではないだろうか。
金英男氏は高校生の時に拉致され、北朝鮮で教育を受け、きっと優秀だったのだろう、成果を上げれば評価され、地位も与えられ、そうやって何年も暮らせばそれが自分の人生そのものになって行く。
しかし、めぐみさんは「理不尽に拉致された口惜しさ」を忘れなかった。
同じ拉致された者同士、痛みや口惜しさを分かち合えるはずの夫は、いつしかそれを忘れたか割り切ったか、北朝鮮体制の中で生きることを選んだ。その「選ぶ」こと自体は生きる術として仕方のないことかもしれないが、魂まで売り渡してしまったことにめぐみさんは耐えられなかったのではないか。唯一頼れるはずの夫が北朝鮮の人間になってしまったことに絶望したのではないか。
理不尽なことをどうしても許すことができない、その中でのうのうと生きることなどとても耐えられない、この強い正義感は両親である横田夫妻から受け継いだものであろう。
これは山口母子殺人事件の本村洋さんに通じるものがある。
「個人の問題ではない」、「国がからんでいる」、いいでしょう。
国が正義を通さないでいったいどうするんだ。
犯罪者におもねってどうするんだ。
膠着状態、結構。あの犯罪政権が自壊するまで辛抱強く待てばいいんです。
本村さんも頑張った。横田さん他被害者家族のかたがたも頑張ってほしい。
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コメント
おひさしぶり。「国が正義を通さないでいったいどうするんだ。犯罪者におもねってどうするんだ」。その通りです。
拉致は国家主権の侵害です。国家主権の侵害に抗議しない国が、他のどんな利得を国民に約束できるというのでしょうか。また、そんな国を国民が支持するとでもいうのでしょうか。つまり、国家主権の侵害に抗議しない国権力は自己の正当性を自分で放棄しているのです。だからこそ、損得でいえば損なのに、英国はフォークランド諸島(マルビナス諸島)を武力奪還したのです。
投稿: KABU | 2006年7月 1日 (土) 12時41分
拉致家族のことを思うと、小泉さんが最初の訪朝をする前までは、日本の国においても、拉致を疑問視する人たちがいましたよね。朝鮮総連の回答を信じて社会党もずっと、拉致を認めていませんでした。韓国の被害者の人たちは、今現在も自分の国が、積極的に拉致行為を指弾してくれない政府に忸怩たる思いを持っていると報道されています。言論がことごとくチェックされる体制化で、彼が発言していること、それを承知の上で、横田夫妻がコメントしていらっしゃる画面を見ていました。
金さんのお姉さんが横田さんのお孫さんヘギョンちゃんの肩にやさしく手をかけていらっしゃったところ、きっと横田さんは、お気づきだったと思います。
投稿: 街中の案山子 | 2006年7月 2日 (日) 12時07分
>KABUさん、
フォークランド紛争の頃、何もわからなかった私は、「せっかくの女性首相なのに、女性ならではの穏やかな対処の仕方ができないものか」などと何となく思っていただけでした。
国の威信だとか誇りだとかの真の国益について考えるようになった今では、何事もそう単純なものではない、と少しは成長したように思います。
拉致問題については、日本は戦争をするわけにはいかないのだから、膠着状態が続いても仕方のないことだと思います。
投稿: robita | 2006年7月 2日 (日) 18時01分
>案山子さん、
拉致問題は、1990年代の中ごろに安明進という元工作員の証言でにわかにクローズアップされましたが、実際はそのもっとずっと前、日本海側の海岸でアベックがいなくなる事件が複数回起こり、行方不明少女(めぐみさん)も同じように連れ去られたのではないか、つまり、北朝鮮工作員による犯行ではないか、というようなことは週刊誌などで書かれていたように思います。不思議な出来事なので私は印象に残っていました。
警察も政府もわかっていたでしょうが、相手が北朝鮮だけに公にできないことだったのでしょう。
金さんのお姉さんは優しそうな人ですね。
お母さんも、高齢であることを考えれば、北朝鮮に行って息子に会わずにはいられなかったと思います。
ただ、「言わされてる」といっても、金英男さんの話し方があまりに冷たくふてぶてしく、「ほんとうに無理やり言わされてるだけなの?この人北朝鮮の人間になってしまったんじゃないの?」と思ってしまいます。でも、蓮池薫さんは「このようにせざるを得ない」と言っているようですから、経験した人でないとわからないのかもしれません。
本当のことは今はわかりませんね。北の体制が変わればいろいろ明らかになるでしょう。
あの体制が崩壊しないかぎり何も解決しない、ということについて明日書こうと思います。
投稿: robita | 2006年7月 2日 (日) 18時04分