誰のおかげで食っていけるんだ
口にすると女性が強い拒絶反応を起こす言葉に、「誰のおかげで食っていけると思ってるんだ」というのがある。
たしかに民主主義の世の中、人権重視の世の中、男女平等の世の中、これを男は口にしてはならない。というか、どんな世でもそんなことを言って女性を押さえつける男は男らしくない。
しかし、私が子供の頃、この言葉は現在のように忌み嫌われる禁句ではなかった。
生活力のない妻に対して夫婦喧嘩の折などに発せられるのと同様に、親に対して生意気な口を利く子供にもこの言葉は結構一般的に投げつけられていたと思う。
普通は、母親が「お父さんに向かって何て口を利くんです。誰のおかげで食べていけると思ってるんです」などと叱責したものだが、妻がそう言ってくれない場合、父親は仕方なく自分でそう言っていたんじゃないか。
つまり、「誰のおかげで・・」というのは、一家の大黒柱たる親父の威厳を示す常套句のようなものだったとも言える。ちゃぶ台をひっくり返すのと同じようなことだったかもしれない。
子供のほうも、そう言われればそれもそうなので、自分で稼ぐことのできない子供のあいだは親に従わざるを得なかった。得なかったというより、素直に「食わせてもらっていること」に感謝をしていたと思う。
「誰のおかげで・・・」という言葉にそれほどの拒絶反応はなかったのである。
こういう感覚は、人権最優先個人主義の時代に生を受け、育ち、覚醒した今の若い人にはどのように説明したってわかってもらえないだろう。
ところで、これを読んでいる人は「父親の威厳をそんな言葉で示していたのか。情けないことだ」と思うにちがいない。
その通りである。
みなさん(特に女性)は、男とは「強くて、雄々しくて、決断力があって、愚痴を言わず・・・」なんて生き物だと思い込んでいないだろうか。
美輪明宏がこんなことを言うのを聞いたことがある;
「男らしくないなんて怒ってるけど、あなた何か勘違いしてらっしゃらない?男が男らしいと思ったら大間違い。男というのはもともと、気が小さくて女々しくて劣等感の塊で優柔不断なものなのよ」
男が女より強い点は腕力だけだと私も思う。
男性全般を正確に分析できるほど私は男性を知っているわけではないが、人生の達人であらせられる美輪さんもそう仰るなら、きっとこれは間違いではない。
【参照】
「貧しさに負けるのは」
女性の思いやりや賢さ(したたかさ、巧みな戦略と言ってもいい)によってのみ、男の威厳は保たれる、と言ったら言い過ぎだろうか。
男性の名誉のため言っておくが、「弱い」というのは「悪いこと」ではない。生き物としての特質である。
「威厳は着せてあげるものではない、本人の実力に伴って醸し出されるものだ」、というまっとうな考え方もよくわかるが、実はそのまっとうさを固辞しているかぎり、男の人生は苛酷さを免れることはないだろう。
そして、それをすっかり見通した女性だけが、男に強さや威厳などという幻想を求めず、「同格の人間同士として共に生きる」という思想を貫こうとしているのだと思う。
まだまだ多くの女性が、男に男らしさを期待し、それが女の後ろ盾なしに実現するものだと信じている。
男は弱いものと納得して仲間同士として共に生きるのか、男を立てて守ってもらう過去への回帰の道をたどるのか、あるいは、何か別の道をみつけようと、人は果たして努力をするようになるだろうか、カップル成立のために。夫婦円満のために。
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コメント
robitaさん、こんばんわ
わたしも「誰のおかげで」について記事を書いたわけなのですが、このrobitaさんの記事を拝読しながら、いつから「男も弱い」と思うようになったのかと思いを馳せました。たぶん、若い女の子を卒業したあたりだと思われます。つまり、自分が強くなりはじめてからでしょうか。経済的にも精神的にも。
ただ、そうやって「男も弱い」と思っている女性を、どうも男性は好きじゃないらしいということも察しておりまして、しかも若くもない女性にそんなこと思われたくないんじゃないかと。だから、なかなか巧く男女関係が深めに成立しないのかもしれない、なんてことを思いました。
投稿: 珍獣 | 2006年11月 6日 (月) 23時35分
>珍獣さん、
>そうやって「男も弱い」と思っている女性を、どうも男性は好きじゃないらしいということも察しておりまして、<
仰るとおりで、実は私の書いたことは、女性同士の中だけで話されるべきことで、男性も読むブログ上に載せるものではないなあ、と思いつつも、もうこの年になりますと、図々しいというか、開放されたというか、年配者だけに許される毒舌の類を私もようやく楽しめるようになったかなあ、年取るって素晴らしいっ、という気分でおります。つまり、こわいものがなくなったということですかね。言われるほうにしてみれば良い迷惑かもしれないけれど、ま、毒舌に耐えて強くなってくだされ、男たちよ。
ですから、
>しかも若くもない女性にそんなこと思われたくないんじゃないかと<
珍獣さんは若いし未婚なので、そんなこと思わないで。好きな人の前でそんなこと言わないで。
>わたしも「誰のおかげで」について記事を書いたわけなのですが<
今、珍獣さんの記事読み返してみました。「続」のほうを読み落としておりました。
人格や思想は育った環境で大きく左右されますね。
私も実はこの記事は、時代によって物事の受け止め方が大きく違うジェネレーションギャップについて書いたつもりなんです。
私の父も「誰のおかげで」的なことを言ったり、禁止事項を課したり、厳しく叱責したりの人でしたが、子供たちが慕っていたのは、やはり体を張って家族を守ってくれている愛情を感じることができたからだと思います。
投稿: robita | 2006年11月 7日 (火) 10時22分
>ま、毒舌に耐えて強くなってくだされ、男たちよ<
ここはやはり、美輪明宏さんばりで高らかに「おほほほほほ」でしょうか(笑)
男性読者といっても、結婚前の若い男性ばかりが読者でもないと思いますので、robitaさんの解放され具合を、充分男性方も肩の力をぬかせてもらえて、楽しんでいらっしゃることでしょう。外で気を張って闘うというのもお疲れでしょうからね…
投稿: 珍獣 | 2006年11月 8日 (水) 14時09分
>珍獣さん、
>robitaさんの解放され具合を、充分男性方も肩の力をぬかせてもらえて、楽しんでいらっしゃることでしょう<
あっそうか。百戦錬磨の男性のほうが、専業主婦より一枚も二枚も上手か、やっぱり(笑)
二重投稿になってましたので、ひとつ消しておきました。
すぐに反映されないようにしてあるのでつい二回押してしまいますよね。
なるべく頻繁にチェックするようにはしているのですが、今日は
遅くなってすみません。
投稿: robita | 2006年11月 8日 (水) 17時27分