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2007年2月20日 (火)

「オール1の落ちこぼれ、教師になる」

手元に一枚の新聞切り抜きがある。
1996年(平成8年)2月14日
見出しは【中学通知表「1」でも名大合格】

【中学の通知表は、ほとんど「1」。「勉強をやる意味が見出せない」と高校へ進まずに大工を続けた愛知県豊川市の男性が、27歳で名古屋大学理学部の推薦入試に合格した。私立豊川高校定時制三年、山元延春(まさはる)さん。14日に入学手続きを済ませた。
豊橋市内の中学に通っていたころの成績は、音楽と技術は「2」だったが、ほかは全部「1」。一人っ子で、ラーメン屋の父が体調を崩していたこともあって、進学は考えなかった。
中学を出て、豊橋市で大工の修業をし、豊川市の建設会社に就職した。16歳で母を、18歳で父を亡くした。22歳のころ、たまたま、テレビでアインシュタインの番組を見て、「これまでの自分は、時間と空間が不変のものだという間違った自然観を持っていた。もっと違った世界が広がるのではないか」と、相対性理論の世界に目を開かれたという。
進学を思い立ったものの、九九や分数の計算もままならず、まず小学三年のテキストを買い込んだ。三年前に豊川高校定時制に入学し、やっと中学レベルの学力に追いついた。
入学後も、朝8時から夕方5時まで大工の仕事をこなし、同5時20分から3時間あまり授業を受けた。家に帰っても深夜まで勉強を続けたが、時間が足りないうえに疲労がたまり学習のブランクは埋まらない。
2年生になって、担任の土田修一教諭(59)の勧めで十年続けた大工をやめ、同校の理科実験助手になった。空き時間に勉強できるようにはなったが、大工のときは手取りで20
数万円あった月収は三分の一になった。貯金を崩して食いつないだ。】

この記事を読んだのが11年前。
深く心に残り、この青年のその後はいったいどうなったかと時々気になっていた。

去年あたりから、新聞などで話題になるのを見かけるようになり、「とうとう来たか」と感無量だ。

山元さんは結婚して姓が変わり、宮本さんになって、現在母校の豊川高校で教諭として勤務している。

先ごろ、自身の体験を本に著した。→オール1の落ちこぼれ、教師になる」(宮本延春)

そのメッセージは「夢と希望をあきらめさえしなければ必ず道は開ける」という、ありきたり過ぎるものではあるけれど、どん底から這い上がる努力を続ける青年の生き方に、まるで偉人伝を読む時のようなワクワク感を覚える。
一段一段ステップアップして自信を深めていく様子は思わず「ほんまかいな」と疑ってしまうほど劇的だ。しかし結局素直に感動する。読者にも力がみなぎってくるような体験記だ。

「夢を持ち続けて頑張れば必ず結実の日はやってくる」というのは、しかし、本当のことを言えば、誰にでもあてはまるものではない。ダメな自分を知れば知るほどどんどんやる気をなくすだろうし、助言をしてくれる人にめぐり合わなければ何から手をつけていいやらわからない。

宮本さんは、小さい頃から「勉強ダメ」「腕っぷしダメ」「発言力もなし」「イジメラレっ子」、すべてうまくいかない「ダメ人間」の自分に自信がなかったけれど、「このままではいけない」という気持ちは心のどこかに持っていた。
「自分は色々な人に助けられた」と宮本さんは言うが、周りの人の助けを得る以前に「何とかしなければ」という自らの心の発動があったに違いないことは本を読めばわかる。
周りがいくら何とかしてあげたいと思っても、自らの「このままではいけない」「なんとかしなければ」という強い気持ちがなければ人は変わらない。

「このままではいけない」という気持ちはどうやって育まれたものなのだろう。
親だろうか。学校だろうか。いや、宮本さんの場合、親も、小学校中学校の教師たちもほとんどそういうことの助力にはなっていないようだ。
そうだとしたら、持って生まれたDNAにそういうものが書き込まれていたのだろうか。

今、ニートやフリーターを描いた小説が目立つという。
作者自身がそういう体験をしていることが多いのだそうだ。
角田光代、金原ひとみ、モブ・ノリオ、絲山秋子、伊藤たかみなどの芥川・直木賞作家はそういった体験をもつ、と日経の文化面に書いてあった。
私はそれらを読んでいないけれど、「将来に自信は持てないがどうにかして自立したいというおとなしい女性から、この閉塞した世で、夢や目標なんて持つのは面倒くさいと拒否する青年まで、社会の底辺で静かに主張する若者の姿を映し出している。」のだそうだ。

働かない若者に厳しい視線が向けられる一方で、これも時代だ政治の無力だ、と彼らに同情の声も集まる。

たしかに「時代」なのだろう。
他の時代だったらちゃんと職を得て働いていたであろう若者たちが、選べぬ時代に生まれてきたおかげでそういった境遇を余儀なくされている。
例えば勤勉で活動的な性格とは言いがたい私自身、今の時代に若者であったならニートとなっていた可能性は高い。

持って生まれた「DNA」や、たまたま生を受けた「時代」、いかにも不公平ではあるが、しかし、これを不公平だと思った瞬間、「このままにしてなるものか」という原動力が生まれないだろうか。

眠っている遺伝子というものは実はものすごくたくさんあって、人間の行動の違いはそれを引き出すか引き出さないかの違いに過ぎない、のだそうだ。
それを引き出すか引き出さないかは、つまるところ自らの意志に他ならない・・・・、だとしたら、そういう意志の遺伝子が最初から表に現れている人が有利になるんじゃないか。

自分の境遇を愚痴ることもなく、社会を恨むこともなく、ひたすら自己を鍛えることに邁進する宮本さんはやはりただ者ではないのかもしれない。

自分の力ではどうにもならないと思われる環境に立ち向かい乗り越えるのは自分の意志であり、それを引き出そうとする強い力は万人に備わっているのだとしても、それを引き出そうとする意志の力はそもそも・・・・うーん、堂々巡りか・・・・・。

「人間死ぬまで勉強」だそうだから、私も高齢化社会に向けて、脳を活性化せにゃいかん、筋肉も鍛えなきゃならん、ああ忙しい。

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コメント

はじめまして。この本を読むと、情熱を持ち続けることの重要性がよく分かります。生きることに対して前向きになれる本ですね。

よかったら、私のブログも読んでみてください。

投稿: 三毛ネコ | 2007年4月15日 (日) 19時37分

>三毛ネコさん、
はじめまして。
ブログ読ませていただきました。
始めたばかりなんですね。
よろしくお願いします。

投稿: robita | 2007年4月16日 (月) 11時58分

情熱なんてもはや死語
頭で考えるだけの人間が増えただけの事
夢はかなうというのは、かなえられたヤツがネタとして本売るための常套文句なので参考にはならない。そんなもので鼓舞される人って羨ましいや

投稿: IMAGINE | 2007年10月23日 (火) 17時23分

>MAGINEさん、


>そんなもので鼓舞される人って羨ましいや<

だいじょぶよ。年取ると案外素直になります。斜に構えてた若い頃が懐かしいがや。

投稿: robita | 2007年10月24日 (水) 09時21分

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