しっかりなさいませ
「男の覇気」の続編。
1月発行の別冊「正論」に載っていた、漫画家さかもと未明の「野蛮でもいい、力強き“ますらお”の復活を 」という文章を紹介する。
【 少子化、晩婚化が危惧される昨今の日本。それにはもちろんわたくしたち女の愚かさが一因としてありましょう。わたくし自身、フェミニズムの危険思想に多少毒されて二十代を過ごしてしまったことは認めざるをえませんし、「女の時代」などと囃されいい気になりすぎた女たちが、殿方の股間をちぢませてしまったツケが、自分たちにまわってきている現実も認めます。けれど三十にもなった女たちがみないい気になっているわけではないのですよ。わたくしの周りの女性たちは、顔を合わせれば「いい人がいたら生き方を変えたい」と、みんな言っているのです。けれどもわたくしたちに対する男たちの対応は以下のごとくなんですの!】
と、友人知人の女性たちが被害をこうむる、情けない男どもの実情の羅列が続く。
そして、
【 いっときは、ここまで男性をだめにしてしまったのは女の自立のせいなのか、とか、やはり働く女は幸せになれないのか、などとも考えましたわ。男を立派に育てるのには、女は後ろにひいていなくてはならないのかと。___中略___けれどもよく考えたらですね。女が仕事を持ったり、ちょっと才能を発揮したくらいで結婚も申し込めなくなる男って一体何?女が仕事をもたず、経済的弱者であるときしか「男」として振る舞えないなんて、メチャメチャ腰砕けであると証明しているのではありませんか?関係を持った女性を堂々と愛しているといえず、都合のいい女性と結婚して、自分の守備範囲を越える女性とは欲望の対象としてしか関係できない。より優れた女性に挑んでいこうという根性はなくて?】
このあと、軍事などの話に移っていくわけであるが、さかもとさんは、日本の男がだめになったのは国家体制のせいではない、という意見のようだ。
でも、何が原因か、ということははっきり言わず、ただただ男たちに「しっかりなさいませ!」と喝を入れているだけのように読み取れる。
私は、はっきり言って、日本の男に覇気がないのは戦後の国家体制にあると思っている。
そうでなければ、何故日本の男だけが覇気のない情けない存在に成り下がったのか、理由をみつけることができない。
「国を守る」、そのために体を張る、そういうことをくだらないことだと思い始めたところから日本の男は堕ち始めたのではないか。
自国の安全を他国任せにしている日本は世界でも珍しい存在なのだという。
私は何も戦争を奨励しているのではない。
自国の危急存亡を前にして、ただただ「逃げる」「避ける」「人に任せる」、そういう姿勢だけに固執することは果たして、男としてというより、人間としてどうなのか。
たしかに、危険を回避する一つの方法として「逃げる」という選択肢は立派に存在する。
しかし、逃げた自分の代わりに他の誰かが犠牲になることがわかっている時に、男はそれでも逃げるのか。
「命」が助かりさえすれば、「嫌なこと、危険なことは他人任せにする男」が増えても、それは良いことなのだろうか。
誰も思うように私も戦争は嫌だ。回避が先決だし、男をしっかりさせるために戦地へ送る、などという考えは本末転倒だ。
しかし、「大事なものを守る」、この気概がなければ、いったい男が力強く頼りになる存在たりえるだろうか。
こういうことを言うと「年配者はすぐ精神論を振りかざす」と言う人がいるが、人を人たらしめるものが「精神」でなくていったい何だというのか。
みんながみんな危険地帯に赴かなくてもいい。
せめて「兵隊さん、頼みます」という気持ちを持って送り出すことはできないものか。
身を挺して国のために働いてくれる隊員のみなさんに心からの敬意を表することはできないものか。
そうでなければ、誰が志願兵になって国を守ろうという気になるだろう。
さかもと未明のように「しっかりせよ!」と男に対して言い続けるだけで、男はしっかりするものだろうか。
そうであるなら、それぐらいいくらでも言ってあげるのだが、そういうことではないだろう。
ブログ始めた頃に「負け犬の本音」という文章を書いた。
男女問題というのはまさに、国家に関わる重大懸案事項なのであって、窓際OL斉藤由香さんのエッセイで読み取れるように、男が家事育児を分担すればすべてうまくいく、というような話ではないのである。
「男は弱い」「ストレスの影響を受けやすい」と私は何度も書いた。
「男らしくあれ」「強くあれ」と要求されることでその重圧に押しつぶされる男がさらに増えるかもしれない。
それを支え、癒すのが女の役目だろうと思う。
「男は女の掌で踊っているだけ」とか「釈迦も達磨もひょいひょいと生む」などという言葉を引用して女のほうが上級だみたいな偉そうなことを言うからには、上級者の太っ腹や優しさを見せねばなるまい、と思う。
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(男としての「覇気」や「覚悟」は何も国際的な敵を意識することだけで育つものではない、ということについて、続々編をいずれ書きます)
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コメント
robitaさん、
でわでわ、私メがツッコミ役を引き受けさせて頂きましょう。
>「国を守る」、そのために体を張る、そういうことをくだらないことだと思い始めたところから日本の男は堕ち始めたのではないか。
ええええーくだらないことと思ってたの?そしてそれはいつからなの?!と言う素朴な疑問を感じます。
日本人男性に覇気が無い、と言うのが事実だと仮定すれば、それは世界における我が国の地位/立ち位置の不安定さに影響されちゃってるだけではないか、と。
私は、戦後日本の男は国を守ろうとして必死にやって来た、と思っています。それが経済繁栄と言う形だったのではないでしょうか。どんなに現代日本人が自分たちを悲観的に捉えようとも、日本は今でも正々堂々の経済立国です。
「でも…血を流して来なかったのだ」なんゆーのは、人間なら誰しもが一つは持つコンプレックスみたいなもの。戦場でドンパチやって流す血なんてまったくもって幼稚、下品!日本人(この場合主に男性)が流してきた「汗」や「涙」こそ誇るべき「流した血」だと私は思います。てか、そういう「血」、いっぱいいっぱい流れたんでしょうね…
さかもと未明さんの意図は知りませんが、私が「ニッポン男児、しっかりせえよ」と言うには「君らには実績がある、自信を持って、背筋を伸ばして歩かんかい!」そういう意味があります。そうして多くの日本女性がそうなのではないかと…
もう一点は、こちらです↓
>「男は弱い」「ストレスの影響を受けやすい」と私は何度も書いた。
「男らしくあれ」「強くあれ」と要求されることでその重圧に押しつぶされる男がさらに増えるかもしれない。
それを支え、癒すのが女の役目だろうと思う。<
robitaさんはご家庭内の男性諸君が心身を寛がせられる休息場所をしっかりと築き上げてこられた女性なのでしょう。だから、「男は弱い」と言う実感を得られたのではないでしょうか。私はその事自体について否定の気持ちはないんです。
しかし、付け加えるならば、「主戦場」にいる男はやっぱり強いんです、と言うのが私の実感。
体力・エネルギー、そして生来の戦闘嗜好、これはやはり女の方が弱い。加えて、男は「家庭外」と言う社会において、今でも厳然として多数派。
そこから受けるより大きな利益があるのだから、当然不利益(すなわち、より大きなプレッシャーやストレス)もあるわけで、それゆえの少数派としての女の「しっかりしてよ!」なんじゃないでしょうか。
でもね、日本社会は今、特に若い世代の間で「オレ、多数派利益いらない、キミが少数派利益でやってって」と言える男性もアリだよ、と言う社会になって来ているのだと思います。大物女優と芸人さんカップルの出現を見るにつけ、そう思います。
だから、
>それを支え、癒すのが女の役目だろうと思う。
と、言い切ると色んなことが不自由になる。どうして「パートナーの役目」と言っちゃダメなんでしょ?と。
今後も日本が憲法9条的精神を継いでゆくならば、経済的・技術的・知的立国で行くしかなく、その為には、日本人の精神的な不自由が一番の敵、と私は思っています。
今までは選択の余地無く米国一辺倒だったけど、生き残る為なら中国にだって尻尾を振るときはちゃんと振ってみせる、自発的に。そういうしなやかさ・図太さは、論理で生きぬ時間が多い女の方が得意かも?ならば、むしろもっと日本女性はしゃんと自分の看板背負って立つ訓練をすべきなんじゃないかしら?
投稿: kaku | 2007年3月 9日 (金) 22時52分
>kakuさん、
おはようございます。
今日は母はデイサービスの日で、しかも主人はゴルフなので、あとでゆっくり書きます。
たぶん長くなるので、記事にすると思います。
投稿: robita | 2007年3月10日 (土) 08時00分