学生街の下宿屋
昨年11月の 「湯島本郷界隈」の続きです。
東京大学の正門を出て、本郷通りを渡って、古い住宅街に入ります。
以前、新聞記事で「本郷館」という、古びた木造三階建ての下宿屋の写真を目にし、これを見てみたいものだと思っていました。
しかし事前にネットで調べるたところ、もう随分前に取り壊しが決まり、既に取り壊されて今はない、というような記事が2.3出てきたので、すっかりないものと思っていました。
せめて建物の痕跡でもないかと所番地を頼りに歩いていますと、これも本郷の古い旅館として知られる「鳳明館 森川別館」の看板が目に入りました。近寄ってみますと、今ではあまり見られなくなった街中のこじんまりした旅館の風情が懐かしさを呼び起こします。
そして、その綺麗に掃き清められた玄関前から、視線を道の向かい側に移した時、それはいきなり眼前に現れました。なんとそこには写真で目にした「本郷館」が、そのままの姿で残っていたのでした。まだ取り壊されていなかったのです。
その威容に度肝を抜かれた娘は「なにこれ~、わあ~、おもしろい~」などと言いながら携帯で写真を撮り始めました。
こんな古くて汚いアパートは私の子供の頃には珍しくありませんでしたが、木造三階建てというのは見たことがないように思います。
地方の温泉などではまだ見られる木造三階建てのレトロな旅館(山形県銀山温泉の「能登屋旅館」 など )を彷彿とさせる、と言うには規模も美しさも違いすぎますが、この時代までよくもまあ残してくれましたと感謝したいほど、年月の重みが感じられます。明治33年に建てられ、大震災にも空襲にも耐えて生き残ったつわものです。
苦学の中にもそれぞれの青春を噛みしめたであろう学生たちの日々の残像が感じられるような、かまやつひろしの「青春挽歌」や「我が良き友よ」が聞こえてくるような、そんな街角の風景でした。
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