「幼年期の終わり」
10代の終わり頃だったからもう40年以上も前になるでしょうか、アーサー・C・クラークの「幼年期の終わり」を読みました。
泥沼化したベトナム戦争に世界中が疲弊していた時代に、その物語の衝撃は、世界の人々と同じように戦争の終結を願っていた私の心に火をつけました。
それはこの作品の「物質文明を乗り越える人類の行く末」というメインテーマはさておき、「地球人同士で争っている場合か」という、SF小説というジャンルそのものが常に突きつけてきたお定まりのテーマを非常に高尚な形で初めて提示してくれたと私には感じられたからでしょう。
その名作が「光文社古典新訳文庫」として、新たに出版されたので、40年の時を越えて再び読んでみました。
こんな筋だったかなあ、と首をかしげるほど細部はすっかり忘れていて、初めて読むような面白さや興奮を感じたのは儲けものでした。
この新訳は1953年の初版ではなく、アポロ月面着陸や冷戦終結という歴史的大事件を経て1989年に書き直されたものの翻訳です。書き直しとは言え、物語にはいっさい手は加えられていません。 ただ東西冷戦や月面着陸以前を前提としたプロローグの部分だけがすっかり書き変えられています。
一章の最後「人類はもはや孤独ではない」という言葉だけを残して。
ちょっと前、政府の要人たちがUFO談義に花を咲かせたことがありました。
「バカバカしい」と一笑に付す人もいたけれど、地球上の諸問題を自分たち自身で解決できなくて閉塞状態に陥っている時、全く別の世界からの訪問者による何らかの介入が、驚異的な方向転換を人類にもたらすかもしれない、と想像ぐらいしてみるのもたまにはいいんじゃないでしょうかねえ。
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コメント
これは懐かしい本ですなあ。
大学時代に読みましたが、あの頃は「人類の新たなステージ」を素朴に信じていたような気がします。
今思うと。「アメリカ人も、実は外圧頼みのところがあるのかもね」なんて穿った見方になるのかもしれませんなあ(苦笑)
昔は「西欧文明に触れて進歩するという植民地主義の肯定」なんていう紋切り型の批判もありました(笑)懐かしいなぁ。
「異文明に触れて、新しい文化を切り開くとしても、その文化が今の我々の基準から考える素晴しさとは限らない」ことを描いたレム「ソラリス」なんて、ある意味で対極の作品でした。だけど面白くはないんだな、これが(笑)
投稿: single40 | 2008年3月11日 (火) 19時29分
★single40さん、
世界秩序なるものが、いったい強大なアメリカによってもたらされるものなのか、それさえ混沌としてきている、と新聞の論説で読んだばかりです。
つまり個人個人の力は案外大きなものではないかと。
インターネット社会ならではの到達点ですかね。
>「ソラリス」<
これは、いったんSFから離れたずっと後、20代の終わりに読みました。たしか映画化されたので興味を持ったのだと思います。
思考を持つ惑星ですね。
宇宙ではSF作家が想像する全てのことが起こる、とありきたりの感想を持っただけだったような気がします。
似たようなのそれまでに結構読んでましたから。
投稿: robita | 2008年3月11日 (火) 20時27分
あまり宇宙人には期待しない方が。何と言っても無重力の宇宙船で長旅を続けてきた人達です。体力は極度に低下しています。
地球の重力でまともに立つことすらできないようでは、頭脳の働きも著しく鈍っているはずです。しかも地球のバクテリアやウィルスに抵抗力はあるのか?
そんな障害を見事に克服したのがウルトラマンです。ただし、怪獣退治には熱心でも地球の街や自然環境への配慮に欠けた戦い方が気になります。別に3分以内で怪獣退治してくれなくても良いです。もっと地球に優しく戦って下さい。派手に転びまわるのはやめて下さい!
問題はウルトラ星人と地球人のコミュニケーションができてないこと。そもそもハヤタやモロボシの体を借りて地球に滞在しながら、賃貸料すら払おうとしていないし・・・・。ウルトラ文明と地球文明のギャップはすさまじいです。
ところで頼みのウルトラ星人の戦闘能力ですが、ウルトラマン・エースでアメリカ第7艦隊と同等だそうです。
え?ということは、ウルトラ星人にお出ましいただかなくても、アメリカ第7艦隊を主力にすればあの怪獣達はやっつけられるわけです。初代ウルトラマンがやられたゼットンを地球人が倒したのは当然のことだったのです。
やはり地球のことは地球人で解決しましょう。ウルトラマンのKYな戦いぶりを見てそう思います。アメリカ軍であれNATO軍であれ、ウルトラマンよりも一般市民の安全に気を配って戦っています。
別に怪獣退治を3分で終わらせなくても結構。1時間でも2時間でもいいじゃないですか。もっと一般市民の安全に気を配ってください。あ~、でもウルトラ星人と私では言葉が通じないんだ。どうやって訴えようかぁ~?
投稿: Shah亜歴 | 2008年4月19日 (土) 14時55分
★Shah亜歴さん、
平和は武力均衡によってかろうじて保たれると判断する人たちと、世界の国々が「戦争はやめましょう」と誓い合えば恒久平和が訪れると信じて疑わない人たち、この二大勢力がどうしても折り合わず戦争を始める前になんとかオーヴァーロードが現れてくれないものかと思っているのです。
投稿: robita | 2008年4月20日 (日) 10時40分