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2008年3月13日 (木)

寄らば大樹

昨日の産経新聞に【「裁判なら日本が勝つ」中国高官、不利認める】という見出しの記事が一面に掲載されました。
日中の主張が対立する東シナ海ガス田の問題について、日本が国際裁判所での決着を提案したのに対し、中国政府高官が「裁判をすれば我々は負けるだろう」と認めたということです。

以下記事の一部を引用します:

【18年から19年にかけての協議で、日本側は「中国の言う大陸棚境界線は30年前の理論だ。(日本に対し強硬的な)中国国内世論が納得する形で協議を妥結させるためにも、国際裁判所の韓国を受けたらどうか」などと、国際司法裁判所や国際海洋法裁判所の審判を仰ぐことを繰り返し提案してきた。国際裁判の手続きには、紛争当事国間の合意が必要だからだ。
 これに対し中国政府高官の一人は協議の場で、「国際法はヨーロッパでできたものだから、裁判に訴えたら(同じ自由主義社会の)日本が勝つだろう」と中国側の不利を認めた。また、その上で「相手がベトナムならばいいが、(裁判で)日本に負けるわけにはいかない」と強調したという。
 中国はベトナムとの間にも、天然ガス資源が有望視される南シナ海のスプラトリー(中国名・南沙)諸島、パラセル(同・西沙)諸島などの領有権問題を抱えており、実際には全く譲歩する構えは見せていない。高官の発言は、歴史問題が存在し、東アジア地域の主導権を争う大国同士である日本に対しては、ベトナムに対する以上に固い姿勢で臨む考えを示したものとみられる。】

つまり、世界標準に合わせると損をするので、絶対に譲歩するものか、国際裁判も断固拒否する、というのです。
これを読んで怒り心頭の人も多いとは思いますが、私は個人的には、あっぱれと唸りたくなるほどのわかりやすさだなあ、と思いました。
世界の先進国は本音を隠して、なんだかんだ理屈をつけて自国の国益を図ろうとしますが、中国のこれほどのあけすけな欲望はむしろ清々しい。

日曜日のフジTV「報道2001」に出演した西部邁先生も仰っていましたが(餃子事件に関しての中国の強引さについて)、「むしろ、中国のこの強引さこそが国家として当たり前の戦略であり、日本は少し見習わなくてはいけない」

ただ、私は、日本も中国に対抗して強引な外交をするべきだとは思いません。第一、したくてもできませんから。

ではどうすればいいか。

今朝の産経新聞には、こういう記事が載っていました。→【「太平洋分割管理」提案 】 

中国という国がどういう国かということは、わかる人にはとっくにわかっていたでしょうが、「話し合えばわかり合える」と思っていた人たちも、こういう中国の本音を見せつけられては、さすがに考えを変えざるを得ないでしょう。

要するに「絶対に譲歩しない強い国」とどのように付き合うか(しかも、こちらの不利益にならない形で)、それを選択しなければいけないということですね。

それを考えると、日本のようにお人好しで優しい国のとるべき道は、その大国の属国的立場をとることしかないんじゃないでしょうか。他に道はあるんですか。

今までは、アメリカという大樹の陰で豊かさを維持してきたけれど、アメリカと中国が太平洋を分割管理(もちろん中国側の勝手な提案にしても)、なんていう事態になった時、日本はどちらの側につくべきか、そういうことを考えていくしかないんじゃないかと思うのです。

それともですよ、「国のプライド」はどうなるんだ、と奮起するならば、・・・さあ、どういたしましょう。

            
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コメント

 いかにもありそうな話だと感じたと同時に、私も中国のしたたかさを感じました。
 もっとも中国側も日本に対し意図して負けを認めるかのような発言をするはずはなく、これを発言として定着させようとした産経新聞の行動にも(日本政府要人が関わって仕掛けたと信じたいです)、同時にしたたかさを感じました。

 ただこうした発言が要人の口から不用意に出るというのは、日本政府も舐められていますね...。

投稿: 山本大成 | 2008年3月14日 (金) 08時56分

★大成さん、

「馬鹿にされてもいい、舐められてもいい、生活レベルが維持できるならそれで満足」というのが日本人の本音であるなら、それもいいじゃないか、と思います。
アメリカにつくか中国につくかなんて二者択一の問題ではない、なんて言われてしまうかもしれませんが、考えてみれば、どんな国でも、世界で生き延びて(豊かさを保ちつつ)いくためには、ある意味ずる賢く手段を選択する「したたかさ」が必要なのであり、その上に「国の誇り」なるものを上手にかぶせる知恵を絞ってるんでしょうね。

遅くなりましたが、赤ちゃん誕生おめでとうございます!
お子さんが3人になって、さぞ忙しく賑やかで、そしてますます楽しいご家族になられたでしょうね。

投稿: robita | 2008年3月14日 (金) 10時24分

こんばんは。初めてまして。
なかなかユニークで鋭い視点のブログですね。

ただ、日本の属国的立場なら戦後一貫してでしょう。冷戦時代も表面的に米ソは対立しているようで、テーブル下では手を握ることもしばしばだった。寄らば大樹、でも必ずしも豊かになるとは限らず、時代と「大樹」によりけりなのです。
キッシンジャーも「国家間に友情はない」と言ってますが、これはいつの時代も大国、小国問わず国際社会の現実です。

豊かな内はまだいいですが、貧すれば保守化するのはどの国も同じこと。「親と金」は何時までもある訳ではなし、「衣食足りて、礼節を知る」のが人間。貧しければ生き残るのに必死なので、「お人好しで優しい」状態もイヤでも変化せざるを得ない。専業主婦など特権階級の奥様だけになったりして、“中国化”する可能性もあるかも。
その時、さあ、どういたしましょうね。

投稿: mugi | 2008年3月15日 (土) 21時03分

robitaさん、

>>「馬鹿にされてもいい、舐められてもいい、生活レベルが維持できるならそれで満足」というのが日本人の本音であるなら、それもいいじゃないか、と思います。<<

ここんとこ重要なので、強調しますが、今、この国には次の二つの現象が起きています。ひとつは国民の高齢化、もうひとつは労働人口の急速な減少です。この減少というのは、徐々に減っていくというのではなくて、減る率が増えて減っていきます。子供が減るということは、その次の世代はもっと減るということですから。つまり、減少は加速して起こります。 「団塊の世代」が定年退職し、高齢者が増えるということは、その保険料負担、年金負担がべらぼうなものになるということです。誠に申し訳ありませんが(とワタシが謝ることではないですが)(笑)robitaさんのお子さんが働き盛りになる、あと10年後ぐらいには、この国は現役世代二人が高齢者一人を支える世の中になります。当然ながら、65歳以上の保険料負担も40歳以下の人々が支払うようになるでしょう。robitaさんのお子さんの世代が、この国の国と地方の天文学的な借金を負い、ものすごい額の社会保障をまかなって頂くことになるのです。まあ、おそらく、その頃にはこの国は経常収支赤字国になっていますが。今、北海道の夕張で起きているようなことが、今後、この国の各地の地方自治体で起こるようになります。東京都ですら例外ではありません。

何度も強調しますが、カネがない、高齢者が増える、労働人口が減る、というのは、個人がガンバルとか、国を信じるとか、ナニをドウするとかすれば回避できるということじゃあないんです。単純な算数の話としてもはやカクテイしていることなんです。これは、アメリカ従属のままでいれば回避できるとか、いや、中国の手下になればオッケーとか、そういう話じゃあないんです。もはや、この国、そのものが、坂を転げ落ちるように転落していくのです。

「馬鹿にされてもいい、舐められてもいい、生活レベルが維持できるならそれで満足じゃないか」「だから、アメリカにつこうと、中国につこうと、どっちでもいいじゃん」と言っている場合じゃあないんです。もっと根本的な、自分たちの足下に、大きな穴がボッカリと開いているんです。その穴に、これからこの国は入っていくのです。生活レベルが維持云々の話じゃあないんです。財政が破綻するんです。財政が破綻する程の借金がありながら、さらに高齢者の増加という、ものすごいカネをくうことがどぉーんあるんです。じゃあ、そのカネを支払う側はどうかというと、支払う側である労働人口は、こっちは急速に減少するんです。払えるわけないじゃあないですか。

どうすればよかったのか。1980年の頃から、将来の高齢者増加に対応するために、それをまかなう国の収益の増加と労働人口の増加をすればよかったんです。しかしながら、そんなことをまったくしなかったわけです。経済はバブルという実体経済にはなんの意味もない騒ぎに狂奔し、バブルが収まった後は失われた10年という、これもまた、なんの意味もない年月を過ごし、その後はなにがどうなるわけでもなく、ただ借金が増えていく財政になっています。その間、インド、韓国、中国は着実に力を伸ばし、2008年の今、アメリカ経済の崩壊の始まりを前にして、中国が世界経済で大きな力を持ち始めています。労働人口の減少についてはどうかというと、以前から、国は、子供が少ない、子供が少ないと、まあー言っているだけで、抜本的な対策をしませんでした。それらのツケが、全部、robitaさんのお子さんの世代に返ってくるわけです(脅すわけではありませんが)(笑)


投稿: 真魚 | 2008年3月16日 (日) 12時44分

★mugiさん、

はじめまして。

>鋭い視点<

年配者ならではの「ゆるい視点」だと自分では思っているのですけど(笑)。

>寄らば大樹、でも必ずしも豊かになるとは限らず、時代と「大樹」によりけりなのです。<

仰るとおりですね。中国に依存して幸せになるとは到底思えません。
しかし、こと防衛に関してはどこか強い国を頼るしかないわけでして。

>貧しければ生き残るのに必死なので、「お人好しで優しい」状態もイヤでも変化せざるを得ない。<

まったくその通りで、日本は今後どう変わらざるを得ないのか。改憲して軍隊持って、領土領海資源死守奪取に努めるのか、私のような肉体労働しかできない専業主婦など野垂れ死にしてしまうのか、それとも、図々しく生き残るのか、行く末を見てまいりましょう。

投稿: robita | 2008年3月17日 (月) 09時23分

★真魚さん、
>これは、アメリカ従属のままでいれば回避できるとか、いや、中国の手下になればオッケーとか、そういう話じゃあないんです。<

いや、まったくもって仰る通り。
高齢化と少子化のもたらすものがどれほど恐ろしいものか、母を介護しているその一点からだけでも日々想像しています。

>以前から、国は、子供が少ない、子供が少ないと、まあー言っているだけで、抜本的な対策をしませんでした。<

私は、少子化の原因を国の抜本的対策の不備だけとは思っていません。それもあるでしょうが、もっと根本的で大きな原因は別のところにあると、今までもさんざん書いてきました。
女性が子どもを産まないのを、政治のせいだけにするのは、そりゃあないだろうと私は思っているのです。
人間の意識の変化に気づかず、対策が遅れたのは政治の責任ですが、それは日本だけでなく、先進国はどこも少子化に悩んでいるのではないですか?
少子化対策が有効に働いている国があるとしても、おそらくすべてうまくいっているというわけでなく、その代わりに失うものもあってそれもすべて受け入れた上での出生率向上ではないかと思います。

>その間、インド、韓国、中国は着実に力を伸ばし、2008年の今、アメリカ経済の崩壊の始まりを前にして、中国が世界経済で大きな力を持ち始めています。<

そうですね。
でも、その大きな経済力をつけてきたインドや中国が、国内にさまざまな問題を抱えながら、いったい我がニッポンを凌駕するような国に発展するのかどうかも甚だ疑問です。

もし日本も世界に後れることなく経済的な発展を望むのであれば、それにはどうすればいいか考えればいい。世界の中で勝ち組になるにはどうすればいいか考えればいいことでしょう。
それが竹中さんたちの考える金融政策だったんだと私は思っていたのですが。
まずは、世界の中で勝つこと。
インドや中国が世界経済で大きな力を持ち始めているから日本も負けてはいられない、と思うのであれば、勝たなければならないわけですよね。

>それらのツケが、全部、robitaさんのお子さんの世代に返ってくるわけです<

そうですね。
死ぬほどの苦しみは貴重な経験と心得よ、などと言ったら息子たちはどう反応するでしょうか。
次世代へのツケをできるだけ減らしたいと思うのであれば、「政治が悪い」「誰それの責任だ」と同じことばかり繰り返していても仕方がないので、何かが変わるように動かすしかないでしょうね。

政治討論番組などを見ていると、与党の若手議員たちの顔が疲れきっているように見えます。
福田首相の顔色も冴えず、同じくお疲れなんだろうなあ、と思います。何をどうすればいいかわからないのでしょうか。
それとも寝る間も惜しんで一生懸命にやっているのに、何も動かないのでしょうか。

首相のリーダーシップがない、と言われますが、首相は今、何をやるべきなんでしょうか。具体的に。
真魚さんが首相だったら、今、どこをどうしますか。
私が首相だったら、国民に話しかけて、「もう一刻の猶予もありません。みなさんが何と言おうと野党と一体となってこの国難を乗り切る覚悟です。大連立をどうかご理解ください」と演説します。
そういうのだめでしょうか。政治のことわからないのでバカみたいかもしれませんが。
 
私たち庶民も政治家を批判するだけでなく、できることをしなければ、と思います。
地域力向上のために何かできることはないのか考えたり、国内消費に努めたり、子どもを産んだり、無能な政治家を選んだ自分たち自身の責任を感じたり。

真魚さんの仰る通り、日本は大変な未来を迎えようとしています。
でも、大変なことは日本でだけ起こっているのでなく、温暖化や食糧不足や終わらない数々の紛争など、それらをどうにも解決できないままここまで放っておいた人間そのものが世界的無策状態に陥っているのでは。
バカな政治家は日本ばかりではないと思います。いや、私はこれらすべてを政治家のせいなどにはしたくないですね。人類社会の当然の成り行きだと考えていますから。

投稿: robita | 2008年3月17日 (月) 09時37分

robitaさん

コメントの続きを自分の方に書きました。
TBにして送ります。

国家に重きを置くrobitaさんに、こう言うのはたいへん失礼ですが。まー、国なんてものは、栄えては滅び、滅びてはまた生まれるもんです。そう言っちゃうと、身も蓋もないというか、すべての議論は終わっちゃうんですけど。

国について考える時、その根底には、そうした人の生きていく意志への信頼と希望を持ちたいですね。日本列島とそこに住む民族が地球上から消えてなくなるわけじゃありませんし。人々に生きていく意志さえあれば、国はまた創ればいいんです。今のニッポンのワカイモンを見ていると、生きる意志すらアンタらにはあるんか、と言いたくなるかもしれませんが。そこに道があれば、必ず誰かが歩いていくものです。その誰かというのに、robitaさんのお子さん方もいるかもしれません。

投稿: 真魚 | 2008年3月31日 (月) 01時20分

★真魚さん、

>国家に重きを置くrobitaさん<

これはまた不思議な表現ですね。
今のところ国家がなければ人は生きていけないように思うのですが。

>人々に生きていく意志さえあれば、国はまた創ればいいんです。<

まったくその通りですが、なんか小説や漫画の世界のことみたいですね。
「太陽の黙示録」とか、昨日テレビでやってたリメイク版「タイムマシン」とか。(笑)

しかし、仰る通りみもふたもないですが、たしかに焼け野原になってもまた作りゃあいいんですよね。同感。
還暦を迎えた私はそう思います。

真魚さんの記事を拝読しました。
私も若い世代に躍動感がほしい、と一昨日「もやしのヒゲ」に書いたのですが、今求められるのはやっぱり「元気」ですかね。

真魚さんは、韓国の人は元気があっていいから、あの元気を真似するのがいいのだ、というお考えですか?

私は日本人には日本人の元気の出し方というものがあると思いますよ。

個人だって「あの子はあんなに元気ではきはきしてるからあんたも見習って頑張りなさい」と言われても、持って生まれた性格も能力も環境も違うのに、同じようにできないし、したくないことだってあるじゃないですか。
幸い、日本は官僚組織が(良いも悪いも)しっかりしているので、少々政治家がダメでも、支障なく過ごせているようです。
ただこれが今後も続くと国がダメになるんでしょうから、今のうちに国民が元気を取り戻すことでしょうね。

民族の持ち味を大事にしながら、元気を出していきましょう。

投稿: robita | 2008年3月31日 (月) 10時55分

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