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2009年1月20日 (火)

根深汁

    控えめに 生くる幸せ 根深汁

中曽根内閣で官房長官を務め、リクルート事件でひとり罪を被り、昨年亡くなった藤波孝生氏の句である。

このような幸せがありさえすればそれで充分だ、と思っている人は決して少なくないだろう。
というか、バブル経済の空しさを経験し、金儲けに狂乱する人々の有様を見聞きしてきた我々が、それを自分自身で体験しようがしまいが、「もう金はいい。心が、愛が、何よりも大切だ」という思いにかられるのは当然のことだ。

おそらく、世の中の人の大半は「根深汁をしみじみとすする幸せさえあればいい」、と思っているにちがいない。

一人ひとりはそうなのだ。

でも、人間社会全体となると、そのようにはならない。

なぜなら、人間とは、「安定」のまま留まる、ということをしない生き物だからである。

競争が大好きで、必ず、必ず、より上を求め、発展し続けるように作られているからである。泳ぐのを止めると死んでしまうマグロみたいなもんだ。

だから、景気の浮き沈みもあり、批判や反省や再生がある。

ためしに、しみじみとした幸せで充分、と思っている人たちだけで「新しい村」を作ってみたとしても、仮に、外界との接触が皆無の状態にしたとしても、たぶんその村は長らく同じ生き方を貫くことはできないだろう。

というと、なんだかみもふたもない言い方だが、社会主義者の人はこれは理解しておいたほうが良いと思う。

人間社会の発展なんて、そんなに論理的に運ばないものだ。経済理論どおりにはいかない。

だって思いもよらない「人間の気持ちの変化」が大きく影響するのだから。

そう考えると、政策なんて、単なる絆創膏や塗り薬と同じ応急処置でしかないのだと思えてくる。

もし、世界の人に公平に恵みが分配されるようにしたいのなら、順番を待つしかないかもしれない。

こんな風に。 →「次はあなたの番ですよ」 

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1月19日産経新聞で、曽野綾子氏が≪透明な歳月の光≫に、「贈り物にも監視は必要」と題して、ガザの難民キャンプで出会った女教師について書いている。

【____前略____ その時、ガザの難民キャンプで会った抗戦的な態度の女教師は、口をきわめてアメリカを罵るので、私は、「あなたたちはそのアメリカに経済的に助けられているんです」と言った。当時もパレスチナに対する支援額は、一位がアメリカ、二位が日本だったのである。すると、この女教師は、急にアラビア語になって喚き出した。
実はこういう事態を予想して、私はアラブ女性を秘書の名目で自費で同行していた。彼女は日本人の妻で国籍も日本人だが、生粋のアラブ人だから周囲の人が何を言っているのかを私に囁く役目を果たしてくれていた。この女教師は私がわからないのを幸い、次のように言ったらしい。
「アメリカが金を出すのは、パレスチナに悪いことをしたという自覚があるからだ。もっと取ってやればいい。そしてこういうことをいう女(私)は誘拐してやればいい」
その日以後、私は宿泊先のホテルから国連の車以外、タクシーにも乗らなかった。____後略____】

そして、曽野さんは「日本が出す援助金の使い道については、パレスチナでは人道的に使ってくれるだろうと日本人は思うが、着服もあるだろうし、その金で武器を買う人もいるだろう。贈り物にも監視が必要なのは世界の常識だ。」という要旨の文章で結んでいるのだが、私が問題にしたいのは、この女教師の激しい気性である。

いやいや、彼女のことに限らず、乾燥し痩せた土地で生き延びなければならなかった人々の民族性については、よく論じられる。「あの厳しい風土で培ってきた価値観は、到底西欧や日本の人間に理解できるものではない。イスラム教徒は民主化を望まない」というやつだ。

そうなのだ。この女教師の過激な物言い、戦闘的な態度は彼女のせいではない。すべて気候のせいなのだ。

彼女の気持ちなんて、肥沃な土地に住み着いて、穏やかに農耕生活を営んできた日本人にわかるわけがない。あちらにもこちらの気持ちなど理解できないだろう。

だから、地球温暖化を無理に食い止めず、砂漠地帯が移動して我々の土地が乾燥し、彼らの住んでいるところが湿潤で肥沃な土地に変わるのを、「次はあなたの番ですよ」と寛容な気持ちで受け入れることが正しくなくてなんであろう。

どうです。これこそ本物の平和主義の考え方でしょうが。(私は乾燥地帯に住むのは嫌ですけどね)

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       いつもありがとうございます →人気ブログランキング

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コメント

パレスチナの女教師の台詞、聞いたことがあります。
北朝鮮の使う論理と同じです。
迷惑を掛けたのは日本だから、資金援助はもらってやっている、というすり替え。
その教師個人が考えたことではなくて、国が国民にそう説明しているのでしょうね。

こんな理屈が大手を振って投げかけられると、お付き合いしたくなくなります。

それでも、前に進まなくてはならないのが、外交。

投稿: 街中の案山子 | 2009年1月23日 (金) 16時15分

★街中の案山子さん、

一知半解さんへTB送ろうとして、案山子さんのコメントを見つけました。
書いた当時コメントいただいてたんですね。
気づかなくてすみませんでした。

>迷惑を掛けたのは日本だから、資金援助はもらってやっている、というすり替え。<

プライドというものがまったく感じられませんね。
でもお隣同士ともなると嫌な相手ともなんとか付き合っていかなくてはならないですね。

投稿: robita | 2009年7月 6日 (月) 13時15分

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