なんとたくましい
先月の産経新聞にこんな記事があった。→「臨月選挙」に決意
故小渕元首相のあとを継いで政界入りした小渕優子少子化担当大臣が、第二子を身ごもった体で衆院選の臨戦態勢に入ったという記事である。
大きなお腹を抱えて移動の列車内で関係者との打ち合わせをする小渕大臣の写真が添えてある。
一歳の長男がいて、お腹が大きくて、大臣の職務があり、自分の選挙だけでなく、他候補への応援活動など、ちょっと想像しただけで、なんと大変なことかとお察しする。
私は去年このような記事を書いた。 →「民主主義と宗家」
その中の一部である;
≪世襲議員は、政治家になった以上は一生懸命政治に取り組もうと決意するでしょうし、選挙区だけでなく国全体のことや世界のことも考えながら忙しい政治生活を送ることでしょう。
辛いこともきっとたくさんあると思います。
仕事が大変なわりに受ける批判は激しく、国民の敵のような言い方をされることにひたすら耐えなければならない。
政治家の家に生まれなければ、あんなこと、こんなことやりたかったなあ、と夢想することもあるでしょう。
自由に職業を選べる人間に、世襲を逃れられない宿命を背負った者の気持ちはわからないと思うんですよね。≫
ちょっと前、TVタックルで、世襲は決して楽ではないと言う話になった時、司会の阿川佐和子さんが小渕優子さんと対談した時の話を披露していた。
自殺まで考えるほど立候補の要請には悩んだ、と。
ごく普通のお嬢さんが、政治家の家に生まれたばかりに、地元支援者の要請を無視することができず、引き受けざるを得なくなる。
普通に結婚して、子供を2.3人産んで、平凡な家庭を築きたい、そう願っていたかもしれない女性が、自分の意思とは違う生き方を強いられる。
いっそ消えてなくなりたいと思いつめるのも無理はない。
しかし彼女は決断し、政治家の道を選び、大臣の仕事も引き受けた。
そこに名誉欲などあったろうか。
うわついた気持ちなどあったろうか。
彼女が父小渕氏の地盤を受け継いで立候補した時、政治家の娘というだけで、なぜ立候補し、議員にならなくてはいけないのか、と私は訝しく思っていた。
おっとりした普通の娘さんのように見える彼女にいったい政治家が務まるのだろうか、と疑問に思っていた。
ネット上では今も彼女への誹謗中傷を見ることができる。
しかし、強固な組織は、小さな個人の力ではどうにもならないほど巨大だ。
彼女はどのような思いで決断したのか。
おそらく、もうこうなったら思いきって政界入りして、自分のできることをせいいっぱいやるしかない、と考えただろう。
小渕氏の政治的能力については私は知らない。
しかし、二人目の子供を持ちたいという希望をかなえながら仕事に奔走するその彼女の姿に私は胸を打たれる。
そこには「自分」はさておき、という強い意志が読み取れる。
「滅私」が感じられるのである。
「少子化担当」の大臣が、そういう姿を見せてくれるだけでも、私は小渕優子さんという存在は大きな意味を持っていると思うのだ。
世の中には色んなお母さんがいて、おおいに結構である。
自己実現をなにより優先するお母さんだって、お母さんのひとつの形なのだから。
お母さんというものはこうでなければならない、というプレッシャーにどうか負けないでほしい。
ただ私は、より大きなもののために自我を取り合えず横に置いておけるたくましい女性の姿に勝手に感動させてもらっているだけなのだ。
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