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2010年7月10日 (土)

ねじれを望む

今度の参議院選挙では、民主党が単独過半数を獲得して安定政権になるかどうか、ということに関心が持たれている。

しかしこの「安定政権」とは何か。

安定すれば政治がやりやすくなる、効率よく運ぶ、ということなのではあるが、今の政権が安定して日本が良くなるとは私には思えない。

民主党政権が議員数さえ満たせば、いったい日本の政治は安定するものかどうか、投票する人はよく考えてもらいたい。

全く違う考えの人が寄り集まっている政党である。かつての自民党内の考え方の違いより大きい隔たりだ。だからやることなすことが支離滅裂になってしまう。

そんな党が安定政権となり得るのだろうか。

こういう政権を定着させる、ということは、支離滅裂のまま政治をやらせるということに他ならないのではないだろうか。

そんなことは国のためにならないのは明らかだ。

リーダーがしょっちゅう変わったり、離党者が続出して小党がたくさんできたりするのは、今の時点ではそんなに不安に思うようなことではない。
そのこと自体が悲劇なのではなく、政策が不安定で支離滅裂状態の政党が政権として定着することのほうが国民にとっては比べものにならないくらい不幸である。

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「みんなの党」が勢いを増しているという。

これは「政界再編」を望む有権者が増えていることの表れではないだろうか。

「みんなの党」が、その名前からして、間に合わせの「暫定的」な勢力であることは明らかだ。

この党には「国家観」がない、とか、「政界再編を目標とする」という結党宣言を「そんなことを目標とする政党など見たことない」と批判する人もいるが、みんなの党の役割はそれでいいのだ。

「みんなの党」は、たしかに観念論的な国家観を語らない。党首の渡辺喜美氏や幹事長の江田憲司氏は、いわゆる「伝統」を重んじる「保守派」ではないようである。
それでも、国を衰退させないためにするべきことは何かを念頭に置いて行動しており、この態度が今の政治に最も求められることだと私は思う。この国難の時はそれでいい。

「国家の品格」とか「命を守りたい」とかの情緒的スローガンはこの際あまり意味がない。

なんとしても生き延びたい時は、恥も忍ばなければいけないし、痛みを我慢しなければいけないことがあるし、冷徹に切り捨てなければいけないこともある。品格や命や平和などの言葉は空しいだけだ。

「強い経済、強い財政、強い社会保障」みたいなことをいくら叫んでも、そんなの誰もが望む当たり前のことじゃないの、としか言いようがない。

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「我慢をしてくれ」と腹の底から国民に呼びかけた小泉さんは、「格差を生んだ張本人」などというレッテルを貼られたまま政治家を辞めた。
それでも、何故いまだに小泉さんの人気が高いのか。
それはきっと、国民の多くが、おいしいことを言わなかった真剣な姿、「殺されてもいい」という壮絶な覚悟で改革に取り組んだ姿を覚えているからだろう。

国が生き延びるために冷徹な決断をしなくてはならないこともある。
その政策断行のおかげで、苦しむ人も出るし、それほど痛みを蒙らない人もいる。
これを当然のことと受け止めることができないから、怨嗟の声は大きくなり、為政者はひるむ。

誰もが得をする政治なんて、特に変革期にはあり得ない。
誰もが損も得もしない停滞した社会を望むなら社会主義でも取り入れればいいのだ。

「おいしいこと」しか言わない今の政党は信じるに値しない。

今回の選挙で民主党が議席を減らし、再び「ねじれ国会」になるかもしれない、という。

ねじれが起きて、民主党が大いに困ればいいと思う。法案が通らない苦しみを菅総理も経験してみるといい。

そうすれば、安倍さん以降の自公政権がなぜ連続して短期で頓挫したのか、国民は理解するだろう。

「お坊ちゃんだから甘い」などという短絡的な理由付けが適切でなかったことに気づくだろう。

政策が支離滅裂な民主党を数だけで安定させてはならない。

ぜひとも「政界再編」が巻き起こるような投票行動を望む。

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コメント

robitaさんと同じ考えの人は多かったらしく、見事に「ねじれた」結果となりました(笑)

私も、民主党が、かつて明言したごとく「直近の民意に従って」解散総選挙を行うのか、非常に興味があります。
とはいえ「辺野古」「天下り廃止」「高速道路無料化」「ガソリン税廃止」などで、民主党の明言の価値は、あまねく国民に知れ渡ってしまっておるのですがね(苦笑)

私も、政府与党の国会運営を、興味深く見守っていきたいと思っております。

投稿: single40 | 2010年7月12日 (月) 13時08分

★single40さん、

思いきりねじり上げてやりました(笑)

政権交代というのは実に面白い光景を見せてくれます。
仰るような「直近の民意」だとか強行採決は横暴だとか首相やめろ大臣やめろ総選挙で信を問え等々、野党の時に責めまくっていたことがそっくり自分達に向けられることになりますからねえ。

民主党が自民党化していると言われますが、与党の宿命ですね。こういう現象を国民も肌で感じるのは良いことだと思います。
安倍内閣や福田内閣をさんざん苦しめたくせに、自分達がその立場になると「野党にも協力をお願いして・・・」などと擦り寄る虫の良さには腹が立ちますが、まあ、国政は子供のけんかではないので、ここは自民党には大人になってもらって、国のためになるよう物事を進めてほしいものです。

投稿: robita | 2010年7月13日 (火) 14時15分

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