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2010年9月 5日 (日)

しあわせ

もう30年以上前になるでしょうか。生涯独身を通した上坂冬子さんの、あるテレビ番組での発言が印象に残っています。

上坂さんは別に独身主義者というわけではなく、普通に結婚願望はあったようで、20代半ばでお見合いをした時のことを次のように語っていました。

「身上書を読んだ時点で、学歴も職業(弁護士)も申し分ないし、ご家族もしっかりしてらっしゃるようなので、私はほとんど『このかた』と決めていました。
大いに期待して会いに行ったんだけど、そのかたのお顔がね(と、手を顔の両側に添えて)、こんなだったの」

とても顔の幅が広いとかエラが張ってるとかそういうお顔だったのだと思います。

「ほんとに優秀で誠実で穏やかな良いかただったんですけど、私はどうしても受け入れることができなくて。自分でお断りに行きました。『あなたのお人柄がどうこうではなくて、男の人として・・・』って、できるだけ失礼のないような言い方でお断りしました。
相手の方はやはりとても良いかたで、わかりました、と快く納得してくださいました。
でも、後から考えるとどうしてあんないい人断っちゃったのかって・・・・。若かったのね・・・。そのかたは今、立派な弁護士としてご活躍中です・・・」

上坂さんはそう言いながら、苦笑いというか、恥ずかしそうな笑みを浮かべ、私は好感を持ちました。

同じ「強い女」でもフェミニストと呼ばれる進歩的知的女性たちと決定的にちがうのは、こういう可愛げのあるところなんだろうなあ、と今にして思います。

さて、女性たちは結婚相手を選ぶにあたって「同じ価値観を持つ人」「同じ話題で楽しく話せる人」「妻の話を聞いてくれる人」といったことを条件にあげます。

もちろんそれは大事なことで、同じ価値観で楽しく話せて妻の言うことをよく聞いてくれる人のほうが、そうでない人より心地よいに決まっています。

民主主義を学んだ団塊世代の男女が、考え方や趣味や興味を共有し、「友だち感覚」で「友だちファミリー」を作り、以後その民主主義による家族形態は代々受け継がれることになりました。

私も若い頃はご他聞にもれず、そういうのがこれからの人間が持つべき価値観だと理解していたため、家族に対する夫の姿勢にずいぶん疑問を持ったものです。

同い年で、時代を共有しているというだけで、共通の体験話が接着剤となり、見合い恋愛して結婚しましたが、共に生活してみると、なんとまあ話のわからない人だろう、話題が乏しくつまらない人だろう、と思うことが多々ありました。

しかし、私も少しずつ成長していく中で、家族というものの持つ意味をだんだん理解するようになりました。

夫婦が気の合った友だちのように話題を共有し、趣味を共有することは、家族を守るためにそんなに重要なことだろうか。

もちろん、人の価値観はいろいろですから、そういうことを一番大事にする夫婦関係を否定するつもりは全くありません。

同じことに関心を持って共に趣味を楽しむ夫婦の姿は素晴らしい。夫婦の絆はそういうことでよりいっそう強まると思います。

しかし、最初からピッタリ合っていなくても、年月をかけて共に楽しめるものを見つけていく過程もまた大事なのではないかと思うのです。

第一、夫を「話題が乏しくてつまらない男」などと決め付けた私は、家族を養う生活力もないつまらない人間で、夫の足元にも及ばないのです。

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また、男性は女性とはメンタリティがずいぶん違うので、女性の気持ちもわかってほしい、私と同じように考えてほしい、とあまり強く要求するのも酷な気がします。

夫のあまりのわからなさに腹を立てる気持ちもよくわかりますが、基本的に悪人でないなら、なんとかなるものです。

そんな風に結婚し家族を作っていった時代だから、昔はみんな「お互いの価値観がどうの共通の話題がどうの」という話がなくても、「稼ぎ」「家のつりあい」「好感が持てるかどうか」、そんなことで納得してみんなすんなり見合い結婚していたのでしょう。

まあしかし、もうそんな時代でないのは事実なのだし、それらの条件だけで結婚するなんて「不純」なことはしたくないのだから仕方がありません。

上坂冬子さんが断ったお相手の方のように好感が持てないほどお顔の幅が広ければ、やはり躊躇してしまう娘さんの気持ちもよくわかります。

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だけれども、「夫に対する憎悪」というのが恋愛結婚だから起こらないとか、見合い結婚だから夫婦の危機を乗り越えられない、などということはまったくない、と私は思います。

むしろ恋愛感情だけに依りすがって結ばれたカップルの破綻は少なくありません。

古い新聞のコラムの切り抜きで、作家の林真理子さんのこんなエッセイを見つけました。

【___略___ このコラムに宛てて、たくさんのお手紙をいただく。___略___たいていの手紙は夫と夫の家族に対する恨みに満ちている。それによると多くの女性たちは、夫から家事や育児を「押し付けられ」、「強要され」、毎日失意と苦悩の中で暮らしているのだそうだ。
夫の母親や兄弟たちも非常に性格が悪く、意地悪で女たちの気持ちを逆撫でしている日々だという。
こういうことはすべて「社会制度のゆがみ」や「男性社会の強固さ」が生んだことだそうで、私はまだやっているのかと腹立たしくさえなる。夫婦仲が悪かったり不幸なことが、どうして社会制度のせいなのだろうか。その男を選んだのは自分ではないか。誰が押しつけたのでもない。自分が愛して選択した男に、これほどの憎悪はまったくどうしたことであろうか。
___略___社会をよりよく変えようとすることを、もちろん否定はしない。しかし自分のオトシマエは自分でつける。このあたり前のことが出来ない女性たちが、これからどんな世の中を創り出せるというのだろうか。
___略___私もこの連載でいろいろなことを勉強させていただいたが、自分の幸福は自分で努力してつくり上げる、という言葉を今さらながら噛みしめている。自分の人生の主役は私なのだ。これから先も私は頑張って決して私を不幸にはさせない。】

林さんらしいキビシーイお言葉ですが、グウの音も出ません。

ちょっと前、「心の知能指数」(EQ)という言葉がはやりました。はやったというより今もそれは重要な意味を持つものだと思いますが、私は「どうしたら自分が幸せになれるか考える能力」と解釈しています。

林真理子さんはきっとEQの高い人だと思います。
その能力の中には「自己実現」だけでなく、さまざまなことに対する忍耐や調整力が最も多く含まれているのではないかと思います。
忍耐は不幸だ、ではなく、幸せな未来への土台となるものだということをご存知なのでしょう。

特に夫婦の間でこれはすごく重要かなと思います。

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民主党の党首選の騒動を受けて、テレビ局が街頭で菅さん小沢さんについてのアンケート調査を行っていました。

女性対象の質問で「結婚するとしたらどちらがいいですか」というのがありました。

圧倒的に菅さんを選ぶ人が多く、コメンテーターの森永卓郎さんが「ハンサムだからですよぉ」と発言していました。(たしかに菅さんは若い頃かなりの男前でした)

しかし未婚の女性ならともかく、人生経験を積んできたであろう年配の女性までもがこぞって菅さんを選ぶ気持ちがわからないなあ、と思っていたところ、「修羅場をくぐった女性ほど小沢さんを選ぶ傾向にあるようですよ」と司会の男性が言ったので納得。
日本女性はまだまだ苦労が足りないのか、それともわかっちゃいるけどヴィジュアルだけは譲れない何らかの理由があるのか。あるいは、どっちも同じぐらい嫌だけど、どちらかを選ばなければならないのなら好みの顔のほうがいいじゃない、という程度のことなのか。

私はお二人がどういう人物なのか詳しくは知らないからどっちとも言えないけれど、大口をたたくばかりで結局は小物だった菅さんに全然魅力は感じないし、小沢さんの顔は嫌いじゃない。

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    菅も小沢も政治的に支離滅裂なのは同じだけど 人気ブログランキング

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コメント

夫婦は直角の関係がいい・・・と養老猛司さんが「養老訓」の中で書かれていますね。ふたつのベクトルが直角になっている時に力はいちばん大きくなると。

この本を読んで、ある意味正面から向き合い過ぎると離婚ということになるかもしれないと感じました。

周りを見渡すと離婚している知人の多いこと多いこと・・・。みんな好きで一緒になったはずなのに。
おんな一人で生きて行くのは大変そうです。友達は仕事をふたつ掛け持ちで働いています。

昔の結婚はそれなりの「覚悟」があったような気がします。どんな状況であろうと添い遂げる人が多かった。

先日ママサー(だったかな?)若いママさんたちのサークルのことをテレビでやっていました。皆ギャルママで80パーセントができちゃった結婚だそうです。
若くして安易に性的関係を持ち、親になる・・・。子供が子供を産んで育てているように私には見えます。

長い年月一緒に暮していれば相手の嫌な面も見えてくる。それを変えようとやっきになればだめですね。そのまんまを受け入れることが出来るようになればしめたものです。


夫婦一緒に趣味を楽しむというのも素敵ですが、お互いを尊重して干渉せず、それぞれが好きなことをするというのもいいいですね。うちはそのパターンです。

投稿: そよ風 | 2010年9月 7日 (火) 14時28分

★そよ風さん、

>夫婦は直角の関係がいい<

なるほど。なんとなくわかります。
しゃかりきになって正面から向き合うとか、同じ考えで揃えようとか、無理やり頑張るとかえって良くないのかもしれませんね。
養老猛さんの本は読んだことがないけれど、コメント欄などでいろいろ知ることができて儲けものです。

>周りを見渡すと離婚している知人の多いこと多いこと・・・。みんな好きで一緒になったはずなのに。<

そうなんですよね。私の周りも多いです。
でも学校時代の友人たちは安定しています。ほとんどみんな見合い結婚ですが。

>お互いを尊重して干渉せず、それぞれが好きなことをするというのもいいいですね。うちはそのパターンです。<

うちもどちらかといえばそうですね。

>皆ギャルママで80パーセントができちゃった結婚だそうです。<

私も何かで見たことがありますが、彼女らは結構真面目に楽しんで育児をやっているように思えました。
サークルを形成して、苦労を相談し合ったり、愚痴を言い合ったり、子どもを預け合ったりするのがいいんじゃないかと思います。
「若くしてできちゃった婚」というのは、私も賛成しませんが、結果が良くなるように周りでサポートできることはあるんじゃないかと思います。
自主的にサークルを作るのは賢いしたくましいと思います。

投稿: robita | 2010年9月 8日 (水) 11時00分

>>しかし、最初からピッタリ合っていなくても、年月をかけて共に楽しめるものを見つけていく過程もまた大事なのではないかと思うのです。

武良布枝さんと一緒に講演してみたらどうですか?何と言っても結婚式でのガス爆発など、最近の女性なら確実に「成田離婚」でしょう。

ところで、
>>圧倒的に菅さんを選ぶ人が多く、コメンテーターの森永卓郎さんが「ハンサムだからですよぉ」と発言していました。・・・、「修羅場をくぐった女性ほど小沢さんを選ぶ傾向にあるようですよ」と司会の男性が言ったので納得。


こういう考え方は結論が逆でも、結局ハンサムに感動すると何でも信じ込む人達と同じ目線だと思います。やはり、しっかり発言の中味を検討しないと間違いだらけの女房になってしないませんか?

私はツイッターで以下のように記しました。

@SatoMasahisa <<そもそも、菅氏の安保政策があるのか疑問だ。>> 確かにその通りですが、かと言って小沢氏のような親中かつ国連志向の首相よりも、何も知らない菅氏の方がはるかに望ましいです。
6:54 AM Aug 27th via web in reply to SatoMasahisa

投稿: Shah亜歴 | 2010年9月19日 (日) 20時04分

★Shah亜歴さん、

>武良布枝さん<

検索してみました。漫画家水木しげるの奥さんなんですね。
NHKドラマ「ゲゲゲの女房」は見たことがないのですが、お見合いして5日で結婚したというのは聞いてます。

>しっかり発言の中味を検討しないと間違いだらけの女房になってしないませんか?<

そう。顔も悪いし、中身も悪いのでは良いとこなしですよ。

夫婦は友愛でなんとか乗り越えられると思いますが、政治は友愛ではどうにもなりませんね。

投稿: robita | 2010年9月21日 (火) 10時23分

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