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2010年9月 2日 (木)

アカデミー

NHKドラマ「坂の上の雲」で、秋山好古が弟の真之に「自分の考えも持たないうちに新聞なんか読むな」と破り捨てるシーンがありました。
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35年前、産経新聞に連載されていた保守派論客による評論文が、現在「昭和正論座」として再掲連載されています。
それらの論考を「うんうん、なるほど。そうよねえ」と共感しながら読みます。
35年前に読んでいたら自分はもっと早く大人になっていただろうに、とは思うものの、青い時期を経て大人になるのが人間の成長として順当でしょうから、あまり早く悟るのもそれほど良いことなのかどうかはわかりません。

多くの書物には「読み時」があると思います。
私が若い時分に読んだ本といえばSF小説ぐらいしかないのですが、人間観、世界観の形成上、少なからぬ影響を与えられたように思います。
中年過ぎてからいくらあれらを読んでもあの頃と同じ感動は得られないだろうし、人間形成や思想形成にそれほどの影響があるとは思えません。

また、世界観の形成とは別に、SF小説で描写されるへんてこりんな世界を受け止めることができるのは若者特有のみずみずしい感性ゆえだろうと思います。年を取ってからではわけがわからないのではないでしょうか。
未熟な人生にスパイスのように利いたその風味を今でも懐かしく思い出すにつけ、あの年齢にこそ意味があったのかなと思えてきます。

青春小説への共感や感動も、悩み苦しみの真っ只中にたたずむ若者ならではのものです。
世界的ベストセラー「ノルウェイの森」も年を取ってから読んだからでしょうか。その意味も良さもさっぱりわかりませんでした。(若い時に読んでもわからなかったかもしれませんが)

若い時は小説、演劇、映画などの作品にできるだけたくさん触れるのがいいと思います。
評論の類にあまり傾き過ぎないほうがいいのかもしれません。つまり理論でかためた「頭でっかち」になるより感性を磨くのがいいでしょう。

もちろん子供のうちからできるだけ多くのことを学んだほうが有利だとは思いますが、優先されるべきは実地訓練であり、感受性を刺激することであり、理屈は後まわしでかまわないと思います。

しかしながら、若い時期に「知の巨人」に出会い、「知の興奮」を覚える体験も、これまた格別な財産となります。

境い目はきっと高校生と大学生の間にあるのでしょう。

猫も杓子も大学をめざす今の時代、その境い目が判然としなくなったこともあるでしょうが、最高学府の学生としての特別な「知の体験」は、ほとんどの大学であまり期待できなくなっているのではないでしょうか。

大学というところに行っていない私には昔の状況もよくわかりませんが。

先日、ハーバード大学のマイケル・サンデル教授(「これからの『正義』の話をしよう」)が東京大学で講演をし、白熱した議論に学生たちは「知の興奮」を体験した、という新聞記事を読んで、「大学」という場で湧き上がる知的ダイナミズムを私も少しばかり感じさせてもらいました。

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コメント

robitaさん、お久しぶりです。

やっと復活しました。5月にショックなことがありまして体調(精神的にも・・・)悪くしていました。

私は高校時代、読書感想文ていうやつがほんとに嫌でした。なんだか無理して感想ひねり出して書いている感じでしたね。

今なら、なんだかいろんな感想文が書けそうな気がします。

今夏、猛暑に読むにはぴったしの児童文学作品読みました。
なんでもすごい賞をふたつもお取りになったという、大人にも断然お薦めの本です。内向的な少年の夏が描かれていて心がほっこりします。

椰月美智子の「しずかな日々」という本です。

今日は息子と大きな書店に出掛けます。買いたい本があって行くのではないので、どんな本と巡り合えるのか・・・それも楽しみです。

投稿: そよ風 | 2010年9月 5日 (日) 07時38分

★そよ風さん、

>体調(精神的にも・・・)悪くしていました。<

大変でしたね。今は大丈夫ですか?
復活なさって何よりです。

>私は高校時代、読書感想文ていうやつがほんとに嫌でした。なんだか無理して感想ひねり出して書いている感じでしたね。

今なら、なんだかいろんな感想文が書けそうな気がします。<

私もまったく同じです。
文章が溢れるように出てきそう(笑)

良い本にめぐり合われたのですね。
私も書評など目にして、読んでみたい本が次々と出てくるので、どれから読もうかと迷いっぱなしです。
「しずかな日々」、読んでみようかしら。

>どんな本と巡り合えるのか・・・それも楽しみです。<

本屋さんはぶらぶら歩き回るだけでなんとなく楽しいですね。私は特に読書家というわけではありませんが。あー、もっと早く読めたらなあ。

投稿: robita | 2010年9月 5日 (日) 11時06分

robitaさん

8月半ば頃から本来の私らしさが戻ってきました。もう大丈夫です。ご心配有難うございます。

以前、速読術についてのテレビ番組見たんですが、書かれてある情景を頭に思い浮かべて読むと早くなるそうです。

あと、新聞の短いコラムを早く読む訓練するといいそうです。下のほうに幅の狭いコラムよくありますよね?!あれも中心部分をば~っと読んで、内容を理解する練習いいそうです。

私もまだまだ読むの遅いのですが・・・。

投稿: そよ風 | 2010年9月 5日 (日) 12時30分

★そよ風さん、

>8月半ば頃から本来の私らしさが戻ってきました。もう大丈夫です<

良かったですね。

>書かれてある情景を頭に思い浮かべて読むと早くなるそうです。<

小説などはいつもそうしてるんですけどね。というか自然にそうなるし小説を読むというのはそういうことだと思ってました。

>新聞の短いコラム<

これは割と早く読めるんです。

私が読むのが遅い理由は、一行読むごとにそこから派生する思考がとめどなく広がって行っちゃうからなんです。
これは若い頃からで、どうしても直りません。要するに集中力がないということなんですけどね。

投稿: robita | 2010年9月 6日 (月) 09時17分

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