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2011年8月31日 (水)

親を安心させたい

私の両親はもういない。
父が20年前に83歳、母が2年前に91歳で亡くなった。
長く生きたせいもあるが、たぶん、もういつお迎えが来ても心残りはないという心境で旅立ったのではないかと思う。

若い頃は私たちきょうだいもずいぶんと親に気苦労をかけた。

姉の結婚問題では修羅場があり、兄は進路問題ですったもんだがあり、私は定職にもつかずなかなか嫁に行けないまま齢30を越え、私が行かないもんだから妹の行く末にも暗雲が垂れ込め、子供に関する両親の気苦労はいかばかりだったかと、現在諸問題を抱える自分の子供たちを見るにつけ、つくづく申し訳なかったと思うのである。
いや、あの頃でさえ申し訳ない気持ちでいっぱいだったが、自分の力ではどうしようもなかった。

きっと私の子供たちも「早く親を安心させたい」と思っていることだろう。

親は子供に幸せになってほしいのである。それが一番の親の幸せなのだ。それが親を安心させるということなのだ。

ある親は目的地まで決めて人生のレールを敷いてやり、ある親は困難や危険がわかっていても子供の望む道を望みどおりに行かせてやり、ある親は将来の道の選択肢が広がるからと、とにかく勉強させ受験させ良い学校に行かせようと叱咤激励する。

みんな子供の幸せを願ってのそれぞれのやりかただ。
親というものは子供が幸せになることで自分が幸せを感じるものなのだ。
それは、子育てがめんどくさいと思ってしまう親、時には子供を後回しにして自分の生きがいを優先してしまう親だって同じこと。
親がどれだけ自分を犠牲にして子供の幸せを優先するのかその度合いに関係なく、とにかく親は子供が幸せになることで安心する。

だからこそ、「お前の幸せのためにはこの道が一番いいの。お願いだからわかってちょうだい」と必死に子供を説得し続けた親も、最終的には多くの親が「この子自身が幸せだと感じさえすればそれでいいのだ」という結論に達する。 
このころには、親は温かいめしを用意してやりさえすればいい、と気づくようになる。 

だから、成功しなくてもいい。お金持ちにならなくてもいい。自分自身が「これでいい」と納得できる居場所をみつけて自分なりの幸せを手に入れてほしいと思う。

私たちきょうだいは何かを成し遂げたとかお金を沢山儲けたとかそんなことは一つもないけれど、両親にはひとまず安心してもらえたのではないだろうか。

私の子供たちもまだまだ不安定で、それぞれが将来に不安を覚え悩みを抱えていることだろうが、何年かかっても自分の幸せをみつけてほしい。

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ところで、その幸せをみつけるために、かなりの努力をしなければならないのか、あるいは、ほんの一歩踏み出すことでそのきっかけがつかめることがあるのか、私の場合でいうと、私はそんな努力などしなかったが、あっちこっちへランダムな一歩を踏み出した。

そんな無節操なやつでも、なんとか自分の居場所と幸せをみつけることができた。

そういった「ランダムな一歩」が直接のきっかけになったわけではないが、今振返るとあれは「笑う門には福来る」の類ではなかったかと思う。

私は宗教を持っていないが、気持ちが停滞している時には後で考えるといつも何かが背中を押してくれたように思えた。神様なのか仏様なのかはわからない。「笑っていれば神様はきっと助けてくれる」という宗教があるのかどうか知らない。背中を押してくれる何か、というのは自分の脳の中にあるのかもしれない。
でも「なぜ私はあの時あのような行動に出たのか」と考えると、何かの力が働いたと思えてならないのだ。
神様仏様にしろ脳内物質にしろ、自分を支えてくれるものが必要だ。

苦しい時に楽天的な気持ちにといってもなかなかできることではない。
しかしどんなことでもいいから一歩踏み出すことで、悩んで閉じこもるより少し幸せに近づくこともあるんじゃないかと思う。ほんの少しの気持ちの切り替えがあればいい。

子供たちは年月を重ねてこういうことを会得していくのだ。

親の心配の種は尽きない。

思い通りに子供が育つわけもなく、特に自由と民主主義と豊かさの定着した社会ではコントロールは効きにくい。

社会のせいにするわけではないが、今の時代、どこの親も昔とはまた違う子育ての苦労を味わっていることと思う。

子供たちの幸せを見届けて安心して死ねるのか、あるいは「幸せになっておくれ」と言いながら死ぬのか、どちらも人生だ。
私は子供を持っただけで充分幸せを味わった。何の不満があろうか。

せめて親は生きている間はいつでも子供たちが帰って来られる「我が家」でありたい。

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