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2011年11月20日 (日)

「逝きし世の面影」

好感度抜群のブータンの国王ご夫妻が帰国された。

国王から発せられる言葉には誠実さと確固たる意志が感じられ、国民から信頼されているのがよくわかる。

観光と水力発電による売電で外貨を得、国内は主に農業の自給自足体制だそうだ。

国民のほとんどが幸せを実感している「世界一幸せな国」ということだが、国王が慈悲深く英明であること、人口が少ないこと、信仰心が厚いこと、鎖国をしていたこと、こういう条件が揃えば、そういう国になる可能性は高いと思う。

江戸期に我が国を訪れ、滞在した外国人たちの日本の印象もおそらくそのようであったろう、と思っていたら、昨日の「産経抄」に、このような記事が載った。 → http://sankei.jp.msn.com/life/news/111119/imp11111903110001-n1.htm 

国土・人口の規模も歴史も違うので、一つの村のようなブータンとは異なる面もあるだろうが、おそらく日本は「美しく幸せな国」として欧米の人々の目に映ったことだろう。

【気品と威厳をそなえた廷臣たちの態度、名だたる宮廷に栄光をそえる洗練された作法、そういったものはインド諸国のすべてのダイヤモンドよりもはるかに眩(まばゆ)い光を放っていた(『ヒュースケン日本日記』から)。質素で飾り気がなく、子供たちの無邪気な笑い声に満ちた幕末の日本を愛した彼は同時に、この国の将来に大いなる危惧を抱いた。】

ハリスに随行した通訳のヒュースケンは自分たち欧米の悪徳がこの国を飲み込んでしまうことを悲しんだ、というのだ。

戦いに明け暮れ、資源獲得のため世界中の民族を無理やり自分たちの経済圏に引っぱり込む植民地主義を自ら「悪」と認めながらもその流れは止まらず、素朴な人々の住む地域の資源や労働力を搾取していった。

それだからグローバリズムは悪だ、植民地を作り、搾取した西欧諸国は悪だ、グローバリズムを推し進めるアメリカは悪だ、というのは物事の本質を語っていない。

なぜなら、ヨーロッパがやらなくたって、アメリカがやらなくたって、他の誰かがそれをやったに決まっているからだ。

人間の欲望にきりがないのも、自分だけは生き残ろうとするのも、人間であるかぎり、当然なのだから。

強いものが主導し、世界を巻き込んでいく。アメリカがそれをしなくてもどこかがやる。

道徳は歯止めの作用があるが、道徳など神代の昔から今と変わらずあったものだ。にもかかわらず人間は欲望を抑えることをせず、戦争と再生を繰り返し、発展してきた。

この広い宇宙には争いの概念を持たない種族があるいは存在するのかもしれない。宇宙人のことは知らない。しかし、地球の人類は欲望と挑戦の原理で動く。

「ブータンの人々が無知だからではない。世界の国々の事情を知った上で、あえて自分たちの流儀を守っているのだ」と力説する社会学者もいるけれど、エリート層の人々と肉体労働をする人々との間のさまざまな格差はいずれ問題になってくるのではないかと思う。

グローバリゼーションを悪いことと決め付ける人もいるが、これは当然の成り行きであり、その流れの中で起こるさまざまな苦難を乗り越えた先に統一世界があるのではないだろうか。

タフなのは「変わらず幸福な国」に住む人々なのか、それとも、変化を受け入れ、経済低迷や争い、それに伴う悩み苦しみを経験した人々なのか。

「まあ、それはわかってはいるけど、せっかくの国王ご夫妻の来日の時に、そういう水を差すようなことは言わないようにしてるだけですよ」ということかもしれないけれど。

 

心優しいブータン国の皆様、多大な義援金に感謝いたします 人気blogランキング

 

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