時間がない
危機に直面した国の経済を立て直そうにも、政治家や官僚が旧弊をどうしても改められず、何も進まないまま徒に年月が10年20年と過ぎていく時、「思い切ってこの状態を打破しよう!」と頼もしいことを言い、実際にガンのような組織に勇ましくメスを入れる人物が現れると、その人物にいちゃもんをつける人々が必ずいる。
私がよく目にするのは、山口二郎、内田樹、浜矩子、佐伯啓思ら各氏であるが、この人たちの反橋下論は、ちっとも建設的じゃない。つまり、日本が今抱える重大問題を志ある政治家に解決してもらいたいという意思がゼロなのだ。「とにかく性急はいけない」と言うだけで、「それでは、この20年何も変えられず、悪くなる一方の事態をどう考えるのか」ということについて、何も言わない。
例えば、産経新聞【土曜日に書く】「維新の会」は何を目指すのか(論説委員 福島敏雄)も同様だ。
≪トリックスター(いたずら者)は外部から不意にやってきて、さまざまなトリック(奇策)をめぐらし、権威に挑戦する。≫
≪強圧的な部分もかなりあったが、抵抗する職員らに対しては、しきりに「民意」を強調した。
だが「民意」は、いかようにも解釈することができる。最低限、求められるのは、反対派の「民意」をくみいれつつ、諸施策を打ちだしていくことである。
その意味で、民主主義は、とんでもなく「手間」がかかるシステムである。英国の宰相チャーチルが「最悪の政治形態」と指摘したとき、念頭にあったのは、ワイマール憲法下で、正規の民主主義の手続きを踏んで登場したヒトラーであったはずである。≫
経済が右肩上がりの時には、政治家も官僚も、「思い切った政策」「厳しい措置」など打ち出す必要もなく、どんどん入ってくる税収を、政治家、官僚、経済界のさまざまな結びつきに従って、ただ配分していれば良かった。政治家はその配分を調整する能力がありさえすればそれで済んだ。
潤沢な税金が国庫に入り続け、政治は同じ事をやっていればうまくいくという時代がとっくに終わり、「これを続けていたら国は破綻する」と気づいてもう20年も経った。
政治が動かないのは、「変わることを怖がる人々」がいるからだろうと思う。
先に挙げた評論家思想家の先生方は、「過激はいけない」「性急はいけない」「少数の意見も取り入れて」と、一見至極まともなことを言いながら、実は「変えたがらない人々」の後ろ盾になってしまっている。
「短兵急に変わりすぎるのは民主主義に反する」とか「大衆は独裁に騙されやすい」などといって、せっかく現れた勇気ある政治家にケチをつけるのである。
橋下さんもスーパーマンでも神でもないのだから、間違うこともあろう。
しかし、大局的に見て彼のやろうとしていることそのものを否定するのでなく、疑問があるなら、一つ一つの具体的なやり方について、「ここはこうしたほうがいいのではないか」と提案するのが筋というものではないだろうか。
学者には政策の具体的なことはわからない、と言うなら、逆に、具体的なことがわからないのになぜ批判できるのか、と聞きたい。
要するに、いかにも日本人らしい「出る杭は打たれる」のたぐいではないのか。
20年間できなかったのは、誰も「本気」を出さなかったからだろうし、守旧派との「妥協」を大切にしてきたからだろう。
それを、今に至っても「妥協」を大切にするべきと言い続けているのを見ると、それではいったいあなたがたは日本の財政がどうなればいいと思っているのか、と聞きたくなるのが正常な反応というものではないだろうか。
今はすでに、時間がたっぷりあった時代ではない。
「民主主義とは恐ろしく時間のかかるものなのだ」などとのんびり言っていられた時代ではない、と私は思うのだがどうだろうか。
それでもハシズムは恐ろしいと思いますか →人気blogランキング
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コメント
【大阪人の格言】という本に、こんなことが書いてありました。
【人は信じたらあかん。人は疑ったらあかん。そいつがいま何をやっとるか?それだけ見てたらええんや】
テレビで評論家が、何を言っても、ただ言うだけなら私でも言える。と思いながら、見ています。
投稿: ゆったり | 2012年3月22日 (木) 16時21分
★ゆったりさん、
>そいつがいま何をやっとるか?それだけ見てたらええんや<
そうですねえ。
橋下徹市長と、反橋下評論家が、何をやっとるか、慎重に見て行きましょう。
「大阪人の格言」、おもしろそうですね(^^)
投稿: robita | 2012年3月23日 (金) 10時03分
おやおや、感動すると何でも信じ込む境地になっていませんか?彼と違って、robitaさんは間違いだらけのアクション・ヒーローと呼ばれて爆笑されるようなキャラではないだけに・・・。
それはともかく、こちらの論文を参照してみては?3連載なので、右上の「ツリーを表示」をクリックしてください。橋下が好きか嫌いかはともかく、中立的な視点で論じられています。
robitaさんが変身するのはどうも。あれは真魚さん一人で充分です。
投稿: Σ・亜歴 | 2012年3月24日 (土) 13時37分
★Σ・亜歴さん
紹介していただいた論文は要するに「ポピュリズムについての考察」ですよね。
「ポピュリズムについての考察」はどうでもいいんです。
そんなことは評論家がよくやることで、勝手におやりなさい、と言うしかないです。
大事なことは、橋下さんが大阪(日本)の立て直しに本気であるかどうか、じゃないですか。
ポピュリズムが危ういものであるということは大抵の人はわかってますよ。
ポピュリズムとはこういうものですよ、と説明することが大事なんじゃなくて、大事なのは本気で改革する人であるかどうかの見極めだと思うのです。
例えば、昨日の産経新聞、「花田紀凱の週刊誌ウォッチング」で小泉元総理秘書官の飯島勲氏の橋下批判が紹介されています。
私はこういう具体的な批判を聞きたい。
改革の意欲そのものを否定するような批判でなく、「ここはどうなんだ」と、物事を前進させる議論を生み出すような批判をどんどんぶつければいいじゃないですか。
具体的な指摘があれば、聞く耳持つ人であれば必ず反省をしたり修正をしたりするはずだと思うのです。
アドバイスも聞かず突っ走るようであれば、ただのアホやと思います。
橋下徹をつぶしたい人はそうやってつぶせばいい。
つぶした後、また別の「本気のひと」が出現するのを待つんですかね。
今、政治に必要なのは、評論家ではなくて実際に動く人、「動ける人」です。
官僚たちも政治家もとかく批判されがちですが、ほとんどの人は真面目だし志もあると思います。
でもさまざまな理由で動けない、変えることができないのだと思います。
私は政策の細かいことはわかりませんが、それぐらいの全体像は見えます。
「抵抗勢力を作って悪者に仕立て上げ」という改革者へのステレオタイプの見方を、私は「まだそんなことを言ってるのか」と思います。
橋下さんのような人が、志ある官僚や政治家を「動けるように」組織改編する意欲があるならば、私たちはそれを応援するべきなんじゃないでしょうか。
賛同いただけましたら お願いします
投稿: robita | 2012年3月25日 (日) 10時05分
すいません。ちょっと変なことを書かせて下さい。あの村上春樹氏の口癖に、やれやれ、というのがあるのですが、やれやれ、には、どこか対象に対する愛を感じるのですが、おやおや、には、愛よりも、上から目線を感じますね。やはり、誰かに何かを言う時は、愛がほしいです。
投稿: チャンプル | 2012年3月25日 (日) 10時40分
★チャンプルさん
>誰かに何かを言う時は、愛がほしいです。<
「厳しい言葉=愛がない」でもなく、「優しい言葉=愛」でもないとは思いますが、私も愛を込めて厳しく語っていこうと思います。
コメントありがとうございます。
投稿: robita | 2012年3月25日 (日) 13時47分
橋本さんの改革が正しいかどうか、あるいは成功するかどうか、それとも彼はヒトラーなのか(笑)色々議論はありますが、どうも論点が微妙にずれている気がするんですね。
橋本さんの主張を冷静にみますと、たとえば地方への権限移譲、役人の特権や給与制度の改定、一部の既得権益の剥奪など。それらの一つ一つが「目新しい」でしょうか?正直、かなり前から「かくあるべき」と言われ続けてきたこと(国旗国歌の問題もそう)にすぎず、にもかかわらず、今までの政治家は手をつけていません。理由は簡単で、普通の政治家は役人と喧嘩をすると損をしますので、適当にやることになっているからです。
では、橋本氏は、なぜ政治家としては損なことをするのだろうか?
理由は、以下の3つのうちのどれかでしょう。
1)日本を征服するため(笑)
2)損得勘定ができないただのバカなので
3)彼にとって、政治は道楽なので、損をしてもうれしがっている
ちなみに、ハシズム批判の人は1説、人格攻撃する人は2説に大別されます。robitaさんは
おそらく3だとおっしゃっている。
閑話休題。
「誰もが必要だと言ってきたが、だれもしなかったこと」(=手垢にまみれた改革案)を行うとポピュリズムだという話になるわけですが、その前に、今まで何もしなかった奴の批判が先でしょうが。
ハシズム批判をする前に、そのへんはキッチリしてもらわんと、と思うのですが、そういう人に限って
従来の施策の問題には沈黙してますね。きっと損得勘定のできる、賢い方々なのでしょう(笑)
投稿: single40 | 2012年3月27日 (火) 02時00分
★single40さん
「ハシズムについての考察」、いやもう仰る通りでありまして、基本的なこういうことを凡人はなかなかズバッと書けないもんですねえ。私は気づきさえしませんでした(^^;)
>1)日本を征服するため(笑)
>2)損得勘定ができないただのバカなので
>3)彼にとって、政治は道楽なので、損をしてもうれしがっている
4番目に、彼は正義の人で愛する日本と日本人のために滅私奉公している(笑)、というのがありませんが、たぶん、仰るように橋下さんは(3)だろうな、と思います。
だって私自身、政治を語る時、なんかこれって趣味なんだろうか、と気づいたりするから(笑)
「損をしてもうれしがってる」ってのがいいじゃありませんか(笑)
>「誰もが必要だと言ってきたが、だれもしなかったこと」(=手垢にまみれた改革案)を行うとポピュリズムだという話になるわけですが、その前に、今まで何もしなかった奴の批判が先でしょうが。<
パチパチ(拍手)
投稿: robita | 2012年3月27日 (火) 10時57分