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2013年7月30日 (火)

幸せな評論家

社会学者内田樹氏の「参院選の総括」

相変わらずの長文で、ざっと読むしかできませんでしたが、
≪政治システムは「よいこと」をてきぱきと進めるためにではなく、むしろ「悪いこと」が手際よく行われないように設計されるべきだという先人の知恵を私は重んじる。≫
≪人々が「スピード」と「効率」と「コストパフォーマンス」を政治に過剰に求めるようになった≫
といった文章が目に入ります。

要するに「劇的な変化は起こらなくていい。話し合いを尊重しながらより良い政策を練り上げていくのが民主主義の利点だ。長い目で見なければならない」ということを言っているのだと思います。
そしてまた、「衆参ねじれが解消されたことは与党の暴走を招くので歓迎すべきことではない」との考えも述べています。

≪選挙制度の違う二院が併存し、それぞれが法律の適否について下す判断に「ずれ」があるようにわざわざ仕立てたのは、一党の一時的な決定で国のかたちが大きく変わらないようにするための備えである。言うならば、「ねじれ」は二院制の本質であり、ものごとが簡単に決まらないことこそが二院制の「手柄」なのである。≫

国民の中には、物事が早く決まらなくても困らない人もいるし、早く決まらなくてはすごく困る人もいると思います。

おそらく内田さんは困らない人なのだろうし、日本の将来にもあまり興味がない人なのだろうと思います。

≪国民国家はおよそ孫子までの3代、「寿命百年」の生物を基準としておのれのふるまいの適否を判断する。「国家百年の計」とはそのことである≫ 
とは書いていますが、今すぐに決めなくては近い将来日本は大変なことになるのであれば、そんな悠長な構え方はどうなんでしょう。「国家百年の計」は当面の財政問題には当てはまらないんじゃないでしょうか。

国民が今自民党を支持しているのはもちろん経済が良くなりつつあるというのが一番の理由でしょうが、持続させるための成長戦略に早く着手しなければならないとなると、規制緩和や民営化を進めなければならず、そうすると抵抗が激しくなり・・・、ということになります。

改革を急がなければ財政は破綻する、という説を信じるならば、大転換を急いだほうがいいと思いますが、このままじっくりと民主主義によって話し合いながら進めていってもまだまだ時間はあるというなら、自民党の内部抗争を我慢して眺めるのも良いでしょう。

日本は明治維新という大改革を経験しています。目立つのは若い志士たちの革命的な動きではありますが、新政府のしくみや政策は旧幕臣たちによるアイデアが中心になっていたそうですね。
急進的な改革でなく、とことん話し合いをするべきだというなら、あの明治維新でさえ必要ではなかったのでしょうか。

試しに「明治維新は必要だったのか」で検索してみると、やはりいくつか出てきますね。

答えとしてこんなことが書かれています。
≪「幕府」という組織そのものが腐敗・疲弊していたので内部改革はできなかった≫
≪各藩(薩長土肥)が武力を持ち、徳川に代わって権力を握りたがったので衝突は必然だった≫
≪欧米の帝国主義に飲み込まれないために中央集権の近代国家建設が必要だった≫
≪幕府内に外交ができる人材が育っていなかった≫

内田氏の言うように、「改革」はいつの世も緩やかに成されるべきもので、時間はかかっても徳川の英明な幕臣たちだけで(そして現代においては、自民党内だけで)、守旧派を説得し近代国家への緩やかな移行ができたのかどうか。

要するに「時間をかけていいものかどうか」という問題ではないでしょうかね。

.

明治維新がなかったら幕末の数々の面白い物語は生まれなかったでしょうが 
                                                                           
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コメント

>国民の中には、物事が早く決まらなくても困らない人もいるし、早く決まらなくてはすごく困る人もいると思います。
>おそらく内田さんは困らない人なのだろうし、日本の将来にもあまり興味がない人なのだろうと思います。

国会が1回開かれると、約100本の法律が成立しますが、主権者である国民はそのうち何本を理解して遵守していますかね。衆議院参議院のHPで確認できますが、ブログ主さん今国会で成立した法律何本ご存知ですか。ハッキリ言って無意味な法律ばかりで、必要な法律はほとんどありません。なぜこんなに多くの法律が成立するかと言うと「官僚の実績」になるからです。官僚の「天下り先」は現役中に何本法律を成立させたかで決まり、多く成立させた方が「天下り先」が高給で影響力が大きいところになり、元官僚の中で大きな顔ができるからです。「困る人がいるから成立した法律」なんて聞いたことがありますか?全ては官僚の都合ですよ。それに法律を一本作るのに、莫大な調査コストがかかるんですよね。無意味な調査コストの結果、無意味な法律が大量生産されているのが本当の話ですよ。

財政を心配されているようですが、本当は「政府が日銀から無利息、無期限で1000億円を借り、それで国債をすべて返済する」とすれば、国債の利息支払の年間何十兆円は一瞬で不要になり、財政なんて何も心配する必要はないのですよ。もちろん財務省は財政の健全化より増税が目的ですから、そんなことしませんがね。

投稿: 急がば回れ | 2013年8月 4日 (日) 15時12分

★急がば回れさん

ご意見ありがとうございます。
すみません。明日から旅行で早く寝なければなりません。
木曜日にお返事します。

投稿: robita | 2013年8月 4日 (日) 22時32分

★急がば回れさん

日本の財政が破綻寸前だとか、規制緩和をしなければ経済成長もないなんて嘘っぱちで、消費税を引き上げたい財務省や自国に利益をもたらしたいアメリカ金融界による情報操作だというのは散々言われてきましたよね。
私は日本の財政がどうなっているのか知りません。でも借金が恐ろしい速さで増え続けているのは確かで、将来世代がどうなるのかとても心配です。
貴方の仰るような方法で財政に問題がなくなるならなぜ日本政府はそれを速やかにやらないのでしょう。
私の長年の疑問なのですが、官僚はなぜ日本の国のためにならないことをやるのでしょうか。ためになることをやろうとしないのでしょうか。
「官僚は自分たちのことしか考えていないから」という答えは簡単ですし、政治家が官僚に操られているというのも長年イヤというほど聞かされてきました。

でもたいていの日本人が心配している財政問題がそんなに簡単に片付くなら、首相が決断して国民に説明し「こうします」と方針を明らかにすればいいのにと思います。
そうすれば財務省やアメリカにだまされている無知な日本人(私のような)も納得すると思うのです。

財務省は本当に日本の国のことより、目の前の自分たちの利益を優先させているのでしょうか?
国がつぶれても自分の地位や財産のほうが大事なんでしょうか?
ほんとうに、国って、「国民vs悪徳官僚」の構図になっているんでしょうか? 政治家は無能で官僚の言いなりになるしかないのでしょうか?

>「困る人がいるから成立した法律」なんて聞いたことがありますか?<

法律ってそういうものじゃないんですか。この法律ができればシステムが改善されてもっと便利になるとか国のお金が効率的に使われるようになるとか、そういうことじゃないのかな、と思っていたのですが。

被災地の復興がなかなか進まないのも法律の壁があって難しいと聞いたのですが、こういうのも速やかに法律作ったり改正したりすればいいのではないですか?
電気事業法改正案は発送電分離に向けたものだそうですが、今国会で成立できなかったそうですね。発送電分離は国民の生活に直結しますよね。国民のためになる法律だと思うのですが。

だけど、たとえば内田樹さんのように言論だけで充分食べていける人は、法案が通らなくても国会がねじれていても、それに対して評論していれば済むだけなので、困らない人だと思います。そういう類の人を私は幸せな評論家とお呼びします。

>ブログ主さん今国会で成立した法律何本ご存知ですか。ハッキリ言って無意味な法律ばかりで、必要な法律はほとんどありません。<

すみません。知りませんでした。
ただ、国会議員が「国民全体」のために働くかといえばそんなことはなくて、支持母体の利益のために法案に反対とか賛成とか言ってるのは私にもわかります。
だから、そんなことで国にとって大事なことがなかなか決まらないのは、著しく国益を損ねていると思うのです。

安倍政権が特定の業界団体のためでなく国益を考える政権であるならば、ねじれが解消されたのは良いことだと思います。

「急がば回れ」というのは素晴らしい教訓で、大抵の場合私も賛同しますが、長年回りすぎて堂々巡りになっているのではないでしょうか。


投稿: robita | 2013年8月 8日 (木) 23時04分

きっと、「急がば回れ」さんは、身近に官僚の周辺情報が伝わってくるあたりの方なのでしょうね。
官僚社会って、国家試験の順位が生涯付いて回るというし、固有の価値観を持っているような気もしないではない。
そんなもの、かなぁ~。あ~ぁ、です。

そして、内田樹さんの文章も読んでみました。注文主の意向の4000字の枠を満たすために、文章を膨らませた、って感がしました。かつては切れ味鋭く、良識の旗手と思っていたのだけれど。

投稿: 街中の案山子 | 2013年8月 9日 (金) 12時33分

★街中の案山子さん

>きっと、「急がば回れ」さんは、身近に官僚の周辺情報が伝わってくるあたりの方なのでしょうね<

そうかもしれませんね。
「官僚にも色々な人がいる」だとか「官僚をうまく使いこなせばいい」だとか「組織を解体しないとだめだ」とか色々なこと言われますが、どれも当たっているのかな。

>注文主の意向の4000字の枠を満たすために、文章を膨らませた、って感がしました<

あ、そうか。依頼原稿でしたね。字数が決まっているんですね。

投稿: robita | 2013年8月 9日 (金) 22時40分

お返事ありがとうございました。

「財政赤字」とか「国の借金」というと悪いイメージが強いですよね。でも、誰かが貯金をすれば、それは誰かの借金になりますから、国全体で見れば「全員が貯金している状態」ということは絶対に起こりえないのです。外国を無視すれば、国全体の貯金と借金の合計は常にゼロになるゼロサムゲームが起きている訳です。このため「国(政府)も国民も貯金の状態」は絶対に起きません。財政再建を進めて、血のにじむような努力の結果、国の借金がゼロになれば、民間の貯金の総合計も必ずゼロになってしまいます。ここを錯覚してしまうのですよね。元大蔵省の高橋洋一さんあたりが、ネットでここら辺を良く発言しています。

そうは言っても「借金が悪いのは常識」であり、その常識の罠から抜け出せない訳です。実は昔も「常識の罠」のため経済が破滅し、第二次世界大戦の遠因になったものがありました。それが「金本位制」でした。金本位制では通貨は一定量の金(きん)といつでも交換できるようになっていました。今の通貨は金本位制ではなく、金と交換できることはありませんし、何の裏付けもない紙です。しかし、金本位制では経済が破綻するのは誰でも知っていますし、現在の通貨体制を金本位制に戻そうなどと言う人は誰もいません。しかし、昔、世の中が金本位制だったころ「金本位制をやめて管理通貨制にしよう」なとと言うと、「通貨を金の裏付けがあるものから、ただの紙切れにしよう」と言うことですから、「常識に反する」と攻撃を受けた訳です。戦前、日本は世界の流れを受けて金本位制から管理通貨制に移行したのですが、それを常識に反するとして大蔵省がわざわざ金本位制に戻し、結局経済が恐慌状態になってしまいます。それを立て直すために高橋是清が登場し、再度金本位制を管理通貨制に変えます。しかし、高橋是清は暗殺されてしまいます。常識の罠にはまった人の犠牲者です。

前のコメントに1000億円借りると書きましたが、1000兆円の間違いでした。日銀から1000兆円無利息で政府が借りれば、財政赤字だけでなく、若年失業者問題、年金問題、円高、デフレなども全て解決できるのですがね。

官僚についてですが、官僚の人事って誰が決めているかご存知でしょうか。大臣は「官僚を降格させることが出来ない」と法律に書いてあります。すると、官僚最高位の事務次官は移動させることはできなくなり、定年もないので、大臣は手が出せません。すると、その下の局長も「降格させることができない」し、上が詰まっているので、大臣は動かすことが出来なくなります。するとその下の審議官クラスも上が詰まっているため大臣は動かすことができないと連鎖し、結局大臣には官僚の人事権がないのです。どうするかと言うと、事務次官が「私の後任を誰々にするなら退職しても良い」と言い、その後任者も「私の後任者は誰々」と、玉突き人事が年一回の大移動のときに行われることになり、結局、退任する事務次官が退任の条件として人事を決めることになります。大臣には人事権はありません。「官僚の人事は官僚自身が決める」と言う制度が絶対的な腐敗を生んでいます。大臣に人事権がないので、官僚は大臣の言うことを聞きません。官僚の興味は、官官接待と責任回避になってしまいます。早く法改正して、「局長級、審議官級以上の幹部官僚は、政治的理由で降格させることができる」としないとどうしようもありません。会社で言えば取締役クラスですから、身分保障なんかする必要ない訳で、社長(大臣)の方針に反対なら退社してもらえば良いし、まじめに働いてないのであれば、降格されれば良いのです。


投稿: 急がば回れ | 2013年8月10日 (土) 23時57分

★急がば回れさん

ていねいなご説明ありがとうございました。
消費税増税、是か非かについては専門家でも意見が分かれているので私などに判断できるわけはありませんが、上げるにしても時期については考えたほうがいいということですか。
安倍首相が慎重な態度を示し、同じ閣内で麻生財務大臣が「予定通り上げさせていただきたい」と言ってるのは、何らかの戦術なのでしょうか。

>大臣に人事権がないので、官僚は大臣の言うことを聞きません<

それじゃあ、そういう法律を変えればいいということですね。なんか簡単そうですね。
法案を作成するのに官僚の手を借りなければならないので難しいということですか。
法案が提出されて国会で反対する人はいるのでしょうか。

投稿: robita | 2013年8月12日 (月) 10時47分

あまり書き込むと、ご迷惑になるかとも思いましたが、質問をいただいたので。
>それじゃあ、そういう法律を変えればいいということですね。なんか簡単そうですね。

そうですね。国家公務員法第75条「職員は、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。」

「職員は、課長級以上の者を除き、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、降任され、休職され、又は免職されることはない。」と変えれば良いだけです。ただ実際にやろうとすると、官僚たちは必死に抵抗=復讐するでしょうけどね。

消費税の話ですけど、ここ毎年、法人税の税率がどんどん引き下げられているのご存知でした?調べればすぐ出てきますよ。法人は毎年のように減税なんですよ。消費税上げても、結果的に法人税の引き下げに使われているようなものなんですかねえ。財務官僚の狙いは消費増税であって、「財政再建」なんてやる気もないし、やる意味もないという話でしょう。

投稿: 急がば回れ | 2013年8月12日 (月) 23時23分

★急がば回れさん

>ただ実際にやろうとすると、官僚たちは必死に抵抗=復讐するでしょうけどね<

ここですよ、私たち一般の国民が持つ素朴な疑問は。
その「必死な抵抗」とやらは具体的にどういう行動なのか。なぜ政治家はそれをやられてしまうのか。単に頭が良い者と悪い者が対立すればこうなる、というだけのことなのか。
「なぜ官僚に負けてしまうのか」、これが長年国民が不思議に思い続けてきたことですよね。

「官僚をうまく使いこなすことが大事だ」などとさんざん言われながら、そんな凄腕の政治家は一向に現れず、「うまく使いこなす」というソフト路線では結局やられてしまうのがオチで、それならば、と強い力で公務員制度改革を断行しようとする政治家がせっかく出てきても、マスコミや世論がなぜかそれをつぶしてしまってるんじゃないんでしょうかねえ。

>消費税上げても、結果的に法人税の引き下げに使われているようなものなんですかねえ<

そういえばさっき夕方のラジオで評論家の宮崎哲弥さんが同じこと言ってました。

官僚が悪いのか、政治家が弱いのか。それともやっぱり一番責任があるのは真剣に考えない国民、ですかね。

>あまり書き込むと、ご迷惑になるかとも思いましたが、質問をいただいたので<

いえ、全然迷惑ではありませんが、私のコメントが質問形になっていても、わずらわしければどうかご放念ください。

投稿: robita | 2013年8月13日 (火) 22時22分

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