世界はひとつ その2
街中の案山子さんのところで、ドイツ在住の作家川口マーン恵美さんの記事が紹介されています。
年配者から見た若者の理想主義的考え方について、川口さんの娘さんたちへの姿勢はとても好感が持てます。
現実的なことを懇々と言い聞かせるのでなく、娘さんたちの「若気の至り」には疲労感を覚えるものの、若さゆえの人道的思想に理解を示し、爽やかさを感じるともいいます。
私も若いころは平和や平等を夢想する者でしたが、年配者となった今でも理想は必要なものだと思っています。
いずれ国境はなくなるとも思っています。左翼的な発想から、というより、それは人間には止めることができない自然な流れとしか言いようがないのではないでしょうか。
インターネットの発達や経済のグローバル化がこの先どうなっていくのか。
世界の国々は、未来永劫、それぞれの政府の方針や施策によってお互いぶつかり合いを続けていくのか。
「ぶつかり合いは良くない」「譲り合って仲良くしよう」「まずは世界政府実現に向けて世界中で議論しよう」・・・とまあ、こんな話し合いのような流れではないのは確かでしょう。
やはり、経済、情報、人間の行き来の急速なグローバル化によって世界中が否応なくそういう流れに巻き込まれてしまうのだと思います。
その過程で、歪みや痛みがどれくらい続くのかはわかりませんが、ある地域やある人々に不利な状況が生まれたり、とてつもないダメージが及ぼされたりすることも少なくないでしょう。いかな人間の良心をもってしても避けられないことだと思います。
今の世界の経済の混乱を見ていると、どうやら始まりの始まりが始まっているようにも思えます。
その始まりとは、人々が一人ひとり私欲を捨てるなどという瑣末な動きによってではなく、「世界が一つにならざるを得ない」成り行きによって始まるのではないでしょうか。私たちはその「現象」をなすすべもなく見守ることしかできないかもしれません。
共通の法と貨幣で治めなければ、世界秩序がどうにも保たれないというどんづまりに来た時、世界政府の構想に自然に行き着くのではないでしょうか。
ちょうど一年前にこんな記事書きました →「世界はひとつ」
ところで、先日のニッポン放送「ザ・ボイス そこまで言うか」での、評論家の宮崎哲弥氏の言葉です:
「ヨーロッパと一口に言っても、北と南の国々では価値観がぜんぜん違う。ラテン系の国々ではそこそこ稼いで毎日陽気に楽しく暮らせればそれでいいという考え方だが、それらとドイツに代表されるような、勤勉で上昇志向を持った人々が暮らす国々を一つにしようという発想にそもそも無理がある。
EUなどなかったらギリシャはあんなことにならなかったのではないか。ギリシャは今までも何度も財政危機に襲われている。それでも自国でなんとか切り抜けてきた」
EUの失敗については、おそらく「理想」が入り口にあったからではないのでしょうか。
そしてヨーロッパという「一地域」だけでやろうとしたところに無理が生じたのではないのかなと思います。素人の考えですが。
統一は「人工的に」無理やり作り上げるものではないような気がします。
このコメントで紹介した青山繁晴さんのTPPに関する報告から想像できることは、サービスや物や人が独自に行き来することが世界をひっくり返す大きな原動力になるのではないかということです。それはもう「政治の事情」などから手を離れて勝手に歩き出しているんじゃないでしょうか。
若者たちの近視眼的な甘い理想は年を経るに従って現実的な考えに変化していきます。
私たち人間が生物である以上、生き残りのための戦いを否定することはそもそも矛盾です。
川口さんが「私たちはただ快適に生きているだけで、すでに地球上の誰かを搾取しているのかもしれない」と書いていますが、「人間って生きてるだけで人に迷惑かけてんだから」と、若い頃に年長者から聞いて共感した言葉を思い出します。
生きることとはそういうことだと理解しつつ、人間は本当に単に「はびこるため」だけの存在なのか、に対する答えを見つけようとする時、精神の土台に据えるべきものがやはり理想というものではないかなァと考えたりします。
青山さんの報告の中でもう一つ非常に興味深い話がありました。
「アメリカの次期大統領選挙に立つ候補者がいない。
日本と同じく割に合わない政治家という職業を選ぶ人が少なくなり、政治の世界に人材不足が起こっている。
次の選挙には、中国系あるいは韓国系アメリカ人が出馬してもおかしくない。大統領として当選するのは次の次の選挙あたりだろう。
実際、彼らはそれを目指していて、本国(中国、韓国)の国家戦略として計画している」
オバマという黒人大統領が誕生したことも、すでに白人の中に人材がいないということの現れであると、はっきりとは言いませんでしたが、そのようなニュアンスでした。
昔、バブルの頃に日本人が住んでいたアメリカの住宅の殆どに今や中国系や韓国系の人々が住んでいるそうです。
「この人たちの人口が増え、選挙への影響が大きくなり、本当に中国人韓国人の大統領が誕生すれば、日米同盟はどうなるのか。だから、日本はいつまでもアメリカに寄りかかって安心するのでなく独立しないといけないのです」と力説します。
こういう動きを考える時、いったい「国」ってなんだろうと思いますよね。
国境は大事だけれども、国境は経済発展の障壁になる。国境を低くすれば、民族は入り混じり、アメリカのような現象は他の国々でも起こるかもしれない。アメリカは特殊なのか。
グローバリゼーションという現象は、国境が意味をなすものであり続けるのかと私たちに問いかけます。
世界はひとつになる方向に否応なしに進むのか、未来永劫、国境はなくならないのか、まあ、自分が生きてる間はひとつにはならないだろう、と普通は思いますよね。
4・5年前だったか、外交評論家岡崎久彦氏が、「日米同盟は重要です。国際情勢は変わりますから見直す時もあるかもしれない。しかし少なくともあと10年くらいは強固なものでなくてはいけない」と言っていたのを思い出します。
10年・・・・・、あと5・6年の間に、日本に敵愾心を持つアメリカ大統領が誕生するのが先か、国同士のいがみ合いなど意味がなくなるほど国境がボケたものになっているか。
もちろん可能性が高いのはアメリカ大統領のほうでしょうが、その事自体が世界の大変革をもたらすような気もします。
川口さんの言うように、理想を抱く若者が巨大な山を1ミリ、1ミリ動かすことで世界は地崩れが起きるとは私は思いませんが、いつの日か世界がひとつになることを想像するのは若者だけの特権ではないでしょう。
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コメント
>>日本はいつまでもアメリカに寄りかかって安心するのでなく独立しないといけないのです。
自主独立を志向したのは鳩山政権ですが、その下で日本はアメリカとも中国とも良い関係を築けませんでした。他のアジア太平洋諸国とも、自主独立によって関係が進展したわけではありません。一体、世界のどの国と関係が良くなったのでしょうか?むしろ日米同盟を多少とも立て直しにかかった野田政権と安倍政権になってから、アジア太平洋、中央アジアなどとの関係も進展しています。英仏との戦略提携が進展するのも日米同盟立て直しに入ってから。鳩山政権下では、とてもこんなことは望めません。
ところで政治家になりたがる人材はいないのか?なりたい人は多いと思います。そもそもネットで政治を語る人が無数にいます。多くの人は運と実力の両方とも恵まれたりはしません。ただし、ネットでのほとんどの政治談議は幼稚で感情的でお話になりません。たまに感動のし過ぎで爆笑,を誘うものもありますが、それはご愛嬌です。
同様にアメリカで白人に人材がいないというのも誤りです。というよりも、オバマという人物をメディアが祀り上げてしまいました。感情本位の反ブッシュ気運に軽薄にも乗ったのが、国際メディアです。そのため、あろうことかベトナムの英雄ではなくオカマが大統領になってしまいました。
そもそもアメリカには世界最高水準のシンクタンクが目白押しです。政治家が選挙地盤を固めるためには田舎者にならないといけないこともありますが、田舎者では一国や世界を運営できません。そうしたパラドックスを埋めるのがシンクタンクです。政治家の人材よりも政治のインフラが重要です。
投稿: Σ・亜歴 | 2013年8月24日 (土) 23時24分
★Σ・亜歴さん
鳩山さんは政治家というより夢想の人ですから、論評に値しないと私は思っているのです
>なりたい人は多いと思います。そもそもネットで政治を語る人が無数にいます<
無数にいますが、なりたい人、さらにその中で政治家としてちゃんと働ける人、となったらものすごく少なくなるんじゃないですか。
優秀な人はみんな他のもっと「やりがいのある」職業を選ぶそうです。
私は政治家はやりがいのある仕事だと思っていたのですが、どうも近頃はそう思う若者は少なくなったみたいですね。
>オバマという人物をメディアが祀り上げてしまいました<
そうだろうとは思います。でも他にめぼしい人がいなかったというのも事実ではないですか。
仮に中国系韓国系の大統領が誕生したとしても、彼らはアメリカ的価値観を持っていますから、中国韓国の司令に従うなんてことはありませんよね。
とはいえ、こんなブログ記事 を読むと、アメリカ、中国に乗っ取られるんじゃないの?なんてちょっと心配になります。
サンフランシスコの市長は中国人で西海岸はほとんど中国人の牙城になっているとか、次の大統領選挙に出馬予定のヒラリー・クリントンの選挙資金は中国の福建省から流れてきている、とか。
だから、アメリカやカナダのように移民を許すべきではない、と言われます。
でも、簡単に外国人を入れないヨーロッパや日本も少子化という難問を考えれば、それでことが解決するわけもありません。
結局何をしてもうまくいかないんだろうなあ。なるようになるしかないか
投稿: robita | 2013年8月25日 (日) 14時56分
航空機が世界各地を繋ぎ、映像を持った情報が瞬時に伝わるようになったのですもの、同じ地球という星に暮らしていることを実感するのは容易になりました。
でも、文化の違いはそれぞれだから、「ひとつ」という概念に行き着くのは、それがどういうものなのかも含めて、判りません。
人の命(の値段)は同じかという話をしたことがあります。
途上国の飛行機搭乗券が自国人と外国人で値段が違うのはおかしい、という話から発展してのことでした。
途上国の彼は言いました。そりゃー航空券の値段に差があるのは不自然じゃない。だって、もし事故が起こった時の補償に大きな差があるのだもの、と。
多分、補償額の差以上に、その国の外貨稼ぎ分も見込んでの高額料金になっているのでしょうけどね。
国境なき医師団のお医者さんが書いた本にも印象に残っている箇所があります。現場の状況が(戦争などの)危険にさらされたとき、僕らは、現地の人以上に身の安全確保に配慮しなくてはならないのです。何で差が(?)と自分も思いましたけれど、もし僕らが事故死したら、僕らの活動そのものの継続の是非の問題へと発展するのです。活動を続けていくためには、身の危険をできるだけ避ける、それが優先するのです、と。
民主的先進国の価値観を持ち、現地の状況を理解しつつ、かかわりを持ち続ける。そういう人たちが、今も現実にたくさんいらっしゃるのでしょう。そして、途上国の人たちも、私たちの国にくる機会があれば、こんな文化もあるのか、と感じてもらえる、ということ。交流があって、その先の先に、いい世界ができていくような、それは思います。
投稿: 街中の案山子 | 2013年8月26日 (月) 07時57分
★街中の案山子さん
>人の命(の値段)は同じかという話をしたことがあります。
途上国の飛行機搭乗券が自国人と外国人で値段が違うのはおかしい、という話から発展してのことでした。<
あー、そういえばありましたね。何かで読みました。案山子さんのところだったのかな。
私たちは民主的先進国で不自由なく生活をしているわけで、世界中の人々、とりわけ最貧国の人々がどんな文化を持ち、どんな価値観でどんな暮らしをしているのか想像することしかできません。ジャーナリズム、国連、NGO活動、商社、曽野綾子さんのようなクリスチャンとしての海外支援活動、そういった人々の報告でしかわかりません。また、そういう方々自身、ある期間だけの滞在ですから、身の危険や労苦は並大抵のものではないにしろ、現地の人と同じ思考にはならないでしょう。
一つの国内だって、他地域の事情なんて実際にそこに住んでみなければわかりませんよね。見捨てられたとか差別されている、とされている地域は多々あるでしょうし、文化の違いも大いにあると思います。
世界は痛み苦しみながらも徐々に統一の方向に向かうか、あるいはその前に人類が滅びるか(近未来SFによく描かれるような暗く細々とした未来のない社会も含めて)、どっちかじゃないなかあ、と私は思っているのですけどね。
>でも、文化の違いはそれぞれだから、「ひとつ」という概念に行き着くのは、それがどういうものなのかも含めて、判りません。<
文化はそれぞれ。法と通貨の統一ですね。つまり世界政府。
しかもこれ、「理想社会」ではないと思います。
投稿: robita | 2013年8月26日 (月) 09時55分
通貨の統一。…ギリシャの場合は統一通貨であるために、ここまで危機に陥った、とも聞きました。
通貨が違えば、その価格差を利用して凌げたのに、そしてこれまではそうして外貨稼ぎをして観光立国であったけれど、同一通貨ではその効き目を利用できなかった、と。
途上国は自国民からの徴税があてにならないから、関税で税収を稼いでいるのだろう、と素人考えで思っています。輸入品を買う人は裕福な人、そこまでして輸入品がほしいのだったら、課税負担もしなさいよ、という仕組みです。だから、途上国の人たちは車所有するにも、当然国境を通過してくるわけで、高ーい関税がかかるのです。
一般庶民は、納税しているか、という話題もしたことがあります。例えば、徴税係官がお店の状況をチェックしようと出かけても、担当官に賄賂を握らせ、売上を過少申告を受け入れ、お店は納税額なし、双方ウィン・ウィンになるのが相場でしょ、覚めた捉え方でした。
かつての日本でもワイロや不正が蔓延していた時代はあったのでしょう(今でも?)。
途上国の人からみると、ODAできた人たちは、まず自分の仕事を進めるための車を用意し、その車のための道を整備し、といったやり方で、予算が切れたらそこでおしまい、という風に見えるらしいですよ。
それでも、国境の垣根が低くなって、交流するのは「よい」「利益だ」と思える風が吹いているのはいいことですよね。
投稿: 街中の案山子 | 2013年8月26日 (月) 10時42分
★街中の案山子さん
>ギリシャの場合は統一通貨であるために、ここまで危機に陥った、とも聞きました<
本文に書いた宮崎哲弥さんもそういうこと言っていました。
でもそれぞれの国で関税率も通貨も違うから、将来性のない企業の利益誘導合戦で政府が振り回されたり、金融の混乱が起きて世界経済危機なんてものに始終脅かされるんですよね。
こういう状態を「常態」として受け入れるんならそれでもいいのかなとは思うのですが、こういうことが途上国が置き去りにされることに関係しているのかなと思います。私は経済というものがわかってないからこんなふうに考えるのかもしれませんが。
どっちにしても、「世界統一」などということは善意とか正義とか強い意志によってなされるものではないでしょうけどね。仕方なくこうなった、ぐらいのことではないでしょうか。
ワイロなど不正行為はいつでもこれからもあるものでしょうね、人間ですから
>それでも、国境の垣根が低くなって、交流するのは「よい」「利益だ」と思える風が吹いているのはいいことですよね<
そうですそうです。
人類の行く末に何らかのヒントを得るために、交流を盛んにしたほうがいいと思います。
投稿: robita | 2013年8月26日 (月) 13時16分
robitaさん、
日米同盟については産経新聞の古森義久記者が最近『いつまでもアメリカが守ってくれると思うなよ』(幻冬舎新書)という本を書いています。
この本の中で書かれていますが、今、アメリカがなんとなく日本に冷たい(笑)ような気がするのは、オバマ政権は日米関係よりも米中関係を優先しているからです。
古森氏は今後もこうした傾向は変わらないと述べています。なぜならば、日米同盟を強固にし、中国の脅威に対抗すべし!と主張しているのは共和党のジョン・マケイン上院議員などなのですが、マケイン氏の支持者は主に白人中年男性です。しかしながら、今のアメリカの有権者は白人中年男性の数よりもアフリカ系やヒスパニック系やアジア系の有権者の数の方が圧倒的に多いからです。そうした有権者はマケイン氏のような政治家には投票しません。古森氏は、オバマはアメリカという国家の主要な担い手である白人中年男性層の求める政策や価値観に背を向けていると(産経の記者らしく)(笑)書いていますが、しかたがありませんね、有権者は白人中年男性だけじゃないんですから。
女性も大きな力を持っています。もし仮に(もし仮にですが)クリントン女史が大統領になれば、オバマ以上に(オバマ以上にです!)日米関係よりも米中関係を優先するでしょう。アメリカは中国と別に領土問題で争っているわけでもなく、中国と仲よくしていた方が経済は良好になるのですから。
さらに、この本の中では、アメリカは軍隊をアフガンとイラクから撤退させたのだから、ドイツと日本に置いている米軍も撤退させよ、日本の防衛は日本だけでやらせよ、アメリカは財政危機にあり外国の防衛にアメリカの経費は使えないと述べているサンディエゴ州立大学の学者の意見を紹介しています。古森氏は、こうした意見はさすがのオバマ政権でさえも取り上げることはないが、こうした考えが有力な大学やシンクタンクから出てきているということが重要ですと述べています。アメリカでは有力な大学やシンクタンクの意見が政策を左右します。
このように日本が頼りとするアメリカは、オバマ政権になって大きく変わりました。そしてこの変化はオバマ以後も変わりそうがありません。
アメリカがこうなんですから、日本は対米従属なんかさっさとやめて、本当の意味での毅然とした国家意識と自主独立が必要ですね。「いつまでもアメリカが守ってくれると思うなよ 」(しつこいか)(笑)
原爆については産経新聞が自虐的な歴史観はもうやめよと書いていますね。
http://sankei.jp.msn.com/politics/news/130808/plc13080811510011-n1.htm
上記のコラムの中にもありますが、NHKで放送された番組でオリバー・ストーン監督は原爆を使わなくても日本を降伏させることはできた。原爆投下はトルーマン大統領がソ連を威嚇するために行ったことだと述べています。日本はアメリカにも中国にもいうべきことをきちんと言う。そういう国であって欲しいものです。
投稿: 真魚 | 2013年8月27日 (火) 00時01分
★真魚さん
お久しぶりです。
アメリカでは白人がマイノリティになる方向に進んでいるというのは、もうずいぶん前から言われてますよね。
黒人、ヒスパニック、アジア系などマイノリティとされてきた人々の人口が30年後には白人を上回ると予想されているとか。
有色系有権者の全てが民主党派だとは限りませんが、次期大統領選挙についての情勢分析によれば、ヒラリー・クリントンは圧倒的優位に立っているそうです。
ヒラリーは(民主党は)国内でヒスパニックや女性の支持を受け、対外的に中国と結びつき、アメリカをどういう方向に持って行こうとしているのかを考えさせられます。
もちろんアメリカだって中国がどういう国かということは充分承知しているし、あの国と結びつきが深くなることによって痛い目に合うことがあるかもしれないこともわかっているんですよね。
普通の人々が考えも及ばないような戦略で動いているんでしょう。
損得勘定で世界は動くわけです。
記事の中で、岡崎久彦さんの何年も前の見解を紹介しましたが、いくら親米でも保守でも永遠に日米同盟が機能するとは思ってないですよ。
「とうとう古森記者も真実に目覚めたのか」とお書きになってますが、今のところは日米同盟が大事なのは言うまでもないことですよね。
古森さんはワシントン在住のジャーナリストですから、アメリカの事情や国際情勢がわからないはずがありません。
日本は核を持っていないので今のところは日米同盟を堅持するか、核兵器を無力化する強力隠しだまを独自に開発するしかないですね。
投稿: robita | 2013年8月27日 (火) 11時28分
白人はアメリカの人口の75%ほどを占めています。人気解説者はしばしば特定の事を強調しがちです。じっさいにこれまでのマイノリティが主流化してくると黒人の95%がオバマ氏支持という現象が2度も続きはしません。逆に白人がマイノリティになれば、彼らの結束が高まります。マケイン、ロムニー両氏とも白人の55%ほどの得票でしたが、仮に白人がマイノリティになれば、彼らの利益を代表する候補への固定票基盤になります。
マイノリティ出身者が出身民族への利益誘導ができるか?むしろ主流派からの疑念をそぐ努力が必要以上に求められます。キッシンジャー氏が大統領補佐官および国務長官を務めた際にはユダヤ系故にイスラエル贔屓にならないかという疑念の払拭に苦労しました。
それどころか自分の出身民族にほとんど考慮を払わない場合もあります。かつてのソ連で最もロシア的な政治家と言えばヨシフ・スターリンです。たとえ杉原千畝よりロシア語が下手であっても、赤いツアーリという称号が似合う政治家はスターリンしかいません。実際に彼はロシアの右翼の間で偶像です。
ところでヒラリー・クリントン氏が次期大統領だと誰が決めたのでしょうか?ベンガジ事件を厳しく責められているクリントン氏だけに、場合によっては予備選で落ちかねません。そもそもアメリカの大統領には予備選までほとんど無名だった候補者がザラです。民主党でも共和党でもそうです。それだけに候補者になる人材がいないなどという評論を簡単に感動して信じ込むべきではないでしょう。
最後に日米同盟についてですが、もっと大局的に見るべきだと思われます。アメリカがオバマ路線だろうとマケイン路線だろうと、日本が自主独立なる方針をとっても誰も得をしません。アメリカの同盟国である日本なら、日中の緊張が異様に高まったとしても国際社会が両国の対立を管理できます。自主独立なる日本と中国の緊張が高まった場合、国際航路となる東シナ海の紛争を誰も管理できなくなります。これに太平洋戦争の日本は悪くなかったという狂ったナショナリズムが絡めば最悪です。
類似の例はインドとパキスタンの対立です。90年代に両国が核実験をやり合って地域の緊張が高まりましたが、非同盟のインドと軍事独裁のパキスタンの暴走を止められる者はいませんでした。ところが9・11を機にインドが対米接近をするようになると、パキスタンとの対立にもアメリカのコントロールが効くようになりました。
また自主独立の失敗例はエルドアン政権のトルコです。欧米離れとイスラム諸国接近を掲げましたが、肝心の中東で孤立する羽目に。イスラム主義の盟友だったエジプトのモルシ政権も失脚。詳細はこちらに。今やシリア危機ではNATO頼み。内政でもEUの人権規定の遵守を心がけるほど。
ともかく誰かの論文や著作を文字通りに受け止めるだけ、自分なりの内容咀嚼と論考もできていないのではお話になりません。地球儀を俯瞰するような大局観を持ち、黄色い肌と平たい顔の世界以外にも目を向ける必要があります。
もう、このくらいにしよう。不特定多数への反論よりも自分のブログ更新だ。
投稿: Σ・亜歴 | 2013年8月29日 (木) 21時55分
★Σ・亜歴さん
夏風邪で寝込んでいたものでお返事遅れてすみません。
>候補者になる人材がいないなどという評論を簡単に感動して信じ込むべきではないでしょう。<
感動して信じ込んだわけではありませんが、一応一つの情報として頭に入れておいても良いのでは?
Σ・亜歴さんも青山繁晴さんも国際政治の専門家ですから、それぞれ正反対の意見を表明しようが、私などがどちらが正しいなどと判断できるものでもありませんし。
>自主独立なる日本と中国の緊張が高まった場合、国際航路となる東シナ海の紛争を誰も管理できなくなります。これに太平洋戦争の日本は悪くなかったという狂ったナショナリズムが絡めば最悪です。<
経済力、技術力、軍事力など日本には強みがたくさんありますよね。しかも好戦的でない平和を愛する民族性も誇るべき点です。
いったい誰の意思で無謀な行動に突入するというのでしょうか。一部の狂ったナショナリストをもって日本民族全体を語るべきではないと思います。
「海上自衛隊の能力は中国を上回る」ということですので、軍事力を誇示することが中国を牽制することになりますね。
アメリカが日本の同盟国としてふさわしくない時代がくれば同盟をやめればいいのであって、それまでは合同演習に励み、しっかり軍事力をつければいいのではないでしょうか。その時までに韓国が、日本についているほうがいろいろな面で国益になるということに目覚めればなお良いですけど、それはないかな(笑) どちら様も大局観が必要ですね。
投稿: robita | 2013年8月31日 (土) 13時16分
過激な表現で申し訳ありません。実はマサカナちゃんに対してムッときたのできつい言い方になったと心配しています。
私はとても青山氏と並べられるほどではありません。ブログがきっかけて投稿している論壇から「外交評論家を名乗ったら」と言われたので、多少の照れを込めてそうしているだけです。
それはそうと、売れっ子解説者ほど要注意ですね。彼らは確かに独自の強い情報を持ってはいますが、同時に商売上手でもあります。テレビのような時間の限られたメディアではワン・フレーズで視聴者を印象づけないといけません。
ところで、マサカナちゃんに言い分はあるのですが、彼のブログには書き込めません。この記事の内容とも関係あるので、大変申し訳ありませんがマサカナちゃんへの質問をここでさせていただきます。
1)欧米離れの自主独立という政策を強く主張されているようですが、鳩山政権およびエルドアン政権が失敗しています。なぜでしょうか?これを冷静に分析できないようでは、今後のどの政権が自主独立を訴えようとも、そんなものは西洋文明が嫌いな野蛮人の呪いにしかなりません。
正しい自主独立路線の青写真のためにも、しっかりとした解説をよろしくお願いいたします。
2)アメリカの次期大統領について、かなり思わせぶりにヒラリー・クリントンに言及されています。クリントン氏が次の選挙に勝つとの見込めるだけ特別な情報でも得ているのでしょうか?どこからか教えてください。
そのそも、アメリカの大統領選挙では知名度や資金に恵まれながら予備選で敗退する候補者が数多いことは真魚さんもご存知のはず。わかっていてクリントン氏にしがみつくなら、相当に根拠ある情報を真魚さんが持っていると見ざるを得ません。一体、何ですか?
3)私の反論に対し「時代は私が言うように動いている」と言われましたが、目の前の現実に適応するだけなら政治を論じる意味がありません。それは単なる付和雷同の事大主義です。一体、思想、信念、主義主張など全くなしに政治を論じるつもりでしょうか?
そもそも時代の動きなど、その時の行動次第でいかようにも変わってきます。「深夜のNews」は思想なき事大主義なのですか?それとも何か主張があるのですか?
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以上の3つにしておきます。さもないと余人にはマサカナと思われる発言の多いブログに本気で反論すると、もう百科事典が何十巻でも編纂できます。
投稿: Σ・亜歴 | 2013年9月 3日 (火) 02時26分
先日は拙ブログへのコメントを有難うございました。もっとも私自身は、「世界はひとつ」という考えにはかなり懐疑的です。年のせいではなく若い頃からそうだったのも、インド・中東のような地域に関心があったからだと思います。あちらの世界はひとつになった時期があっても、長続きしないし、ブルガリア研究室さんから教えて頂きましたが、バルカン半島も同じでした。
「狂ったナショナリズム」なら、何時の時代も見られる現象ですね。大英帝国時代も独立運動家は「偏狭なナショナリスト」呼ばわりされたし、英国支配に協力していた現地人も、同胞の偏狭なナショナリズムを叱り飛ばしていた。
ただし、英国自身が歪んだナショナリズムの虜になっていたし、大英帝国、大米帝国ともに、ファナティックなナショナリストとその協力者が支えています。単なる付和雷同の事大主義に見えても、協力者は自分や属する組織の金や保身が第一のリアリストですが。
それにしても、毎度ながらΣ・亜歴氏の毎度の真魚氏への親愛ぶりは面白すぎます。自称「猿の葵」「白痴の葵」のブログにまで出向き、真魚氏のことを問いただしている。現実と自分の願望妄想を混同している猿の葵と真魚氏では相性がよいでしょう。
投稿: mugi | 2013年9月 4日 (水) 22時31分
★mugiさん
>「世界はひとつ」という考えにはかなり懐疑的です<
そうでしょうね。あの地域に詳しい人ならそう思って当然です。
イスラムの人々の特殊性を熟知している曽野綾子氏も、こちらの理屈が通じる相手ではないので、中東の紛争には介入せず放っておくべきだ、と今朝の新聞のコラムに書いてました。
アメリカにも放っておけない理由があるのでしょうから、そんな簡単なことでは済まないのでしょうが。
私の言う「世界はひとつ」は、理解し合った上でのことでなく、まあいわば破滅の後の再構築みたいなことなので、きっと100年後ぐらいか、200年後か、あるいは50年かも・・・(笑)
お三方でバトルをやってらっしゃるのですか。見てみようかな(笑)
投稿: robita | 2013年9月 4日 (水) 23時37分