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2013年10月21日 (月)

奇跡の国

外国にしばらく住んだ日本人は愛国心が強くなるとよく言われる。
外から眺めてみることで生まれ育った日本の良さに気がつくのだろう。

ただ遠く離れたから祖国を愛おしく感じる、ということなら、他の国の人も同じだろうと思うが、生活しやすいとか人々が穏やかで優しいとか町が清潔で楽しいだとかその他諸々具体的なことを考えると、やっぱり日本は世界的に見てとても良い国と言えるのではないかと思う。
そのことに日本人自身があまり気づいていないのではないだろうか。

作家の川口マーン恵美氏は20代でドイツに住み始め、すでに30年になる。

近著「住んでみたドイツ 8勝2敗で日本の勝ち(講談社+α新書)は、祖国愛に満ちた書である。

二国間を往復する川口氏が、両者の違いを冷静に分析する。そして本の帯にあるように「不便で窮屈なドイツ・・・日本人は世界一の楽園に住んでいた!」と教えてくれる。

学校制度、休暇の使い方、公共サービスなど、日本のほうが優れている点は多い。もちろん、ドイツのほうが良いと思えることもあるが、それこそ学ぶべき点として参考にすればいいと思う。

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「領土問題」を論じた章では、以前 街中の案山子さんのブログ で知ったアルザス地方の帰属にまつわる「最後の授業」の話が紹介される。

「原発」に関する章には、脱原発に熱狂したドイツ国民が現在では急速に現実に目覚めつつある様子が描かれる。
日本人は熱しやすく醒めやすいなどと自分たちのことを評するが、ドイツ人も熱狂しやすい民族であるようだ。

太陽光や風力発電の難しさに直面しているドイツの経験は我々日本人も知っておいたほうがいいと思う。
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余談だが、「脱原発」をあちこちで連呼しているらしい小泉元総理のことを、自民党の村上誠一郎衆議院議員が「小泉さんみたいに単細胞になりたい、うふっ」と言っているのをテレビで見て、その言い方がおかしく思わず笑ってしまった。
「単細胞」は失礼だが、政権与党としてそう言いたくもなるのではないか。
小泉さんも政権に就いていれば、「原発ゼロにかぎる」などと単純に言い切ることはできないだろう。
原発存続も脱原発も、同じように国家の安寧を脅かす可能性がある。どっちかを選ぶなんて簡単な問題ではないと思う。
国家の安全、国民の生活の保障という責任を負うのは大変なことである。メルケルさんや安倍さんの苦労をお察しする。

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さて、川口さんの本に戻るが、あとがきにこういう文章がある:
《 何かの拍子に、ドイツの街角で日の丸を見かけると、とても嬉しくなる。その一瞬、頭の中に日本の美しいイメージがパッと広がって、同時に、そこはかとない誇らしさも感じる。この感情こそが、日本で多くの人が忌み嫌っている愛国心だろう 》

長期の外国滞在中、日の丸を目にして、溢れんばかりの懐かしさとともに頼もしく誇らしい気持ちになったことがある人は多いと思う。
どんなに遠く離れていても祖国はいつも自分を待っていてくれる。無条件に受け入れてくれる。育ててくれた母親のよう、まさに母国。

人はわけもなく親に反発する時期もあるが、戦後教育による刷り込みは、成長とともに正常に戻る子供の反抗期とは別物だ。
その刷り込みがあまりにうまく作用した日本人の場合、正気を取り戻すのはとても難しい。

未だに日本人の心に巣食う洗脳の残滓が払拭される日がいつか来るだろうか。

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コメント

読まれましたか。わたしも既読。
「日本のホームレスは、ときには岩波文庫を読んでいたりする」というくだりは、この本の中でだったかしら。
教育を受ける機会もなく、よって文字も読めない人たちが、往々にしてホームレスを形成しているものだけれど、日本のホームレスはだれもが日本語を話せて、文字も読める、これは、他所ではないことだと教えられて、超納得でした。
改善もよほどし易いってことでしょうか、世界の貧困はもっとすごくて、厄介なのでしょう。

投稿: 街中の案山子 | 2013年10月21日 (月) 12時32分

★街中の案山子さん

>わたしも既読

だと思いました。
「薩摩スチューデント、西へ」のことを記事になさってたでしょう。「住んでみたドイツ・・」にもその本が紹介されてたから、もしかしたら、と思っていました。
「薩摩スチューデント」も面白そうですね。

>教育を受ける機会もなく、よって文字も読めない人たちが、往々にしてホームレスを形成しているものだけれど、日本のホームレスはだれもが日本語を話せて、文字も読める、これは、他所ではないことだと教えられて、超納得でした。<

そうですね。ドイツのような先進国でも教育格差というものが日本よりずっと顕著だなんて驚きでした。

>改善もよほどし易いってことでしょうか<

そう、もっと良くなるでしょうに、何がいけないんでしょうね。

投稿: robita | 2013年10月21日 (月) 22時21分

そうでした。川口さんに教えられて、「薩摩スチューデント、西へ」を読んだのでした。面白かったですよ。
当時の選抜された若者と一緒に船に乗り航海しているようでした(ワクワク気分)。但し、その選抜は、やはり殿様による選抜だったからか、膨大なお金がかかっていた割には、必ずしも後世花開いたわけではなかったようです。でも、それも含めて、躍動期というのはこういう局面があるのだろうと。

投稿: 街中の案山子 | 2013年10月22日 (火) 09時44分

★街中の案山子さん

>膨大なお金がかかっていた割には、必ずしも後世花開いたわけではなかったようです。でも、それも含めて、躍動期というのはこういう局面があるのだろうと。<

そうかもしれませんね。
人材を育てるのもひとつの投資でしょうから、うまくいったりいかなかったり。
でも、スチューデントたちの中には大臣になったり東京開成学校(東京大学)の初代校長になったり偉くなった人たちがいたんでしょう?
何かしらのものは身につけたんでしょうね。
財を成した人が人材育成に惜しみなくお金を提供する例は昔はよくあったのだろうと想像します。「海賊と呼ばれた男」(百田尚樹)の主人公もそういう助けがあって発展していったのでしょう。
もちろん「見込まれた男」だったからこそでしょうが。

「薩摩スチューデント」ぜひ読みたいと思います。


投稿: robita | 2013年10月22日 (火) 10時37分

林望氏の小説ですが、15名余りの留学生なのに、全員の性格やら行動の癖もよく描かれていて、親近感すら感じました。香港やマカオの植民地で家畜のように扱われている現地人を目の当たりにして動揺したり、生活レベルの差に愕然としたり、船中で本当に熱心に勉学に勤しむ姿は、日本人の「誉」です。あー、展開については、彼らの残した日記などの資料を基にした小説でした。
東京開成学校の初代校長に就任したとき、彼は30代前半なんですよ。西洋を知る人材がいかに求められていたか、ということ。
留学生の学問もさることながら、薩摩藩としての武器の購入という目的もあったようです。
これから読まれるのに、書かないほうがいいですね。

投稿: 街中の案山子 | 2013年10月22日 (火) 13時54分

★街中の案山子さん

>東京開成学校の初代校長に就任したとき、彼は30代前半なんですよ<

それは驚きですね! 仰るように、たしかに西洋事情を知る人材も貴重だったでしょうが、昔の人は、今よりはるかに早く大人になったんでしょうね。

>これから読まれるのに、書かないほうがいいですね<

いえいえ、貴女の紹介文でますます読みたくなりました

投稿: robita | 2013年10月22日 (火) 23時04分

一行の中に確か外国との貿易に通じた五代友厚がいますが、彼は坂本竜馬、トーマス・グラバーらとのつながりもある人物らしいです。
薩摩藩はどうしてそんなにも資金が潤沢だったか。長らく密貿易で富を蓄えていたから。
そして、英国から武器を購入するルートを持っているということは、ますます富を得る道に繋がっているということを知っていたのでしょう。
先日見たBS歴史館だったか(?)で、薩摩藩が輸入する武器を長州に流す(売る)ときに、亀山社中という商社の存在があった、といっていました。グラバーとも懇意だった竜馬は、取引の仲立ちをすることで富が生まれることを学んで、日本で始めての会社を作った男、というわけです。
話が横道それまくりでゴメン。
その時代時代で、精一杯生きている人間模様というのは、心を打ちます。

投稿: 街中の案山子 | 2013年10月23日 (水) 07時06分

★街中の案山子さん

>薩摩藩はどうしてそんなにも資金が潤沢だったか。長らく密貿易で富を蓄えていたから。<

幕府から遠く離れたところで監視をくぐり抜けた自由な商取引があったんですね。
民の力とか中央に縛られない地方の力は強いということでしょうか。才覚のある人に自由にやらせることが結局国の発展につながる、というのは「海賊と呼ばれた男」でも描かれています。

>その時代時代で、精一杯生きている人間模様というのは、心を打ちます<

たしかに。
西洋から様々な情報や技術がどっと入ってきた時代の物語は特に躍動感に溢れ魅力的ですね。


投稿: robita | 2013年10月23日 (水) 10時14分

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