「右傾化」という空気の作り方
「奥さまは愛国」という本を書店で見かけました。
題名だけで判断してはいけないと思いつつも、たぶん「こんな内容であろう」と想像しながら、家に帰って検索で書評などを読んでみました。
「こんな内容」というのは、厳しい社会状況の中で愛国という精神的よりどころを見出そうといていると言われる「ネトウヨ」になぞらえ、家事育児に追われる普通の主婦がよりどころを求めて愛国心に目覚めることを皮肉交じりに描いているのではないか、という憶測です。
しかしいくつか書評を読むと、愛国主婦たちは特に帰属先を求めているというのでもなさそうです。
ごく普通の、どころか綺麗に装った素敵な奥さま方がヘイトスピーチをしながらデモ行進している様子を、「右翼思想にかぶれた女たち」と切って捨てるのでなく、彼女たちが何を守ろうとしているのかなんとか「わかろう」とするその真剣な取材を評価しているものが多かったように思います。例えば作家の雨宮処凛さんの書評です。
私はこの本を読んでいないし、ヘイトスピーチをする愛国主婦を実際に見たことはないのですが、こういう現象は、この本の執筆者である北原みのりさんと朴順梨さんが「わからない。本当にわからない」と悩むほどのことだろうかと思います。
むしろ私は、こういう特殊な奥さまたちを取り上げてことさら「不可解だ」というリポートをまとめあげた、そのことにこそ怖さを感じるのです。
つまり「世の中が右傾化しておかしくなっている」「愛国心は不気味だ」、そういった空気が広がることに手を貸しているのではないでしょうか。
意図的にやっているのではないのかもしれませんが、自分でも気づかぬうちに知らず知らずある「空気」へと誘導してしまうことはあると思います。それはとても怖いことです。
はっきり言いましょう。
「腹が立つから罵倒してやる」、ただそれだけの単純な人たちのことを、何を大げさに「わからない。でもわかってあげなければ」などと親切に庇ってあげる必要があるのでしょうか。
簡単なことです。
あの人たちは、あからさまな排斥行動や汚い言葉で罵倒することはかえって自らを貶め、国益を損ない、日本人全体に迷惑がかかる、ということがわからない人たちなのです。
ああいう人たちの行動を見て、今の日本全体の傾向だと決め付けるのはいかがなものでしょうか。それこそ偏った空気を広めることに加担しているのではありませんか。
日本人のほとんどは、彼ら彼女らの品のない言動に眉をひそめているにちがいありません。
私たちはノイジーマイノリティのふるまいにのみ目を奪われるのでなく、常にサイレントマジョリティの存在を意識していなければならないと思います。
騒がしい少数派にうっかり乗せられて、奇妙な空気を広める手伝いをしてはなりません。
また、聞くところによると、ああいったヘイトスピーチや中韓排斥デモというのは、日本人の評判を落とすための工作員の仕業という疑惑さえ囁かれているというではありませんか。いわゆる「なりすまし」ということでしょうか。
嘘かまことか、いずれにしても本当に愛国の気持ちがあるなら、感情にまかせて日本人の品位を落とす行為などしないはずなのです。
執筆者の北原みのりさんも朴順梨さんも、「理解してあげたい」などというポーズをとるのでなく、「愛国は叫ぶものではない。吼えるのはやめなさい」と率直に言えばいいじゃないですか。
ポーズでないとしたら、お二人とも、そして雨宮処凛さんも、きっと善良な人々だと思います。そして善良さは時に罪深いものです。
本のおおまかな内容は雨宮さんの記事で読み取れます。しかし、本体を読まずに意見を言うのは公正とは言えませんから、時間があれば読んでみましょう。その時、別の感想を持つかもしれません。
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