« 「国」と「政権」 | トップページ | 魑魅魍魎 »

2015年1月26日 (月)

宇宙人かゴキブリか、いや人間だ

「人質になるかもしれない、殺されるかもしれない、そういう危険性の高い地域へ自分の意志で行ったのです。覚悟はできているはずです。息子一人の命のために国の方針を変えるべきではありません」

もしこのような発言をする母親であれば、今の時代、「冷血母」だなんて言われてしまうのでしょうかね。

日本だけでなく、おそらく世界のどこにもそういう母親はいなくなってしまっただろうと思います。

子を思う本心を封じ込めて壮絶な覚悟を表明したら、テロリストがどういう行動に出るのかはわかりません。
しかし、莫大な身代金を犯人に払う、あるいはヨルダンとの関係が悪化するリスクを犯しても人質交換を無理やり頼み込む、それで一人の命が助かったとしても、それがより良いことなのかどうかもわかりません。

親日国ヨルダンを困らせるようなことをしてはならないと思いますし、テロリストを増長させるような莫大な身代金支払いにもおおいに問題があります。

以前、「体を張る」という文の中で、冒険や挑戦は若者の特権ではないか、と書きましたが、人質になって身代金を要求されるかもしれないという危険は、海とか山とか極地への冒険とは根本的に違いますね。

もちろん、救出に多大な費用と人手が必要というのは同じですが、「犯人」の存在の有無が決定的に違います。迷惑をかけるのは同じでも比較にならないほど解決は難しい。

国と個人のどちらを優先するかの問題かどうかわかりませんが、国家の命運、つまり1億2700万人の国民の命運を軽視するわけにはいきません。

手の打ちようもなく、政府は湯川遥菜さん(殺害が事実であるなら)と同じく後藤健二さんを助けることができないかもしれません。

冷酷と言われても最悪の結末を覚悟することも必要です。仕方がありません。この世は怖いところなのです。


私たち平和な国の人間には戦場の惨状やテロリストの残虐性がどんなものかわかりません。
後藤さんに死ぬ覚悟があったとしても、それをさせてくれない状況があるとしたら死ぬより残酷です。
殺してしまってはカードとして使えないから死なせてくれず、死ぬよりもっと辛い目に遭わされているのかもしれません。
テロリストの跋扈する危険地域に自由意志で行こうとする人はそういう事態も予想して覚悟しなければならないでしょう。

さて、さまざまなメディアでこの問題が論じられています。ネットなどでは誰を悪者にするかの議論が盛んです。

「二者択一の問題でなく」 で書いたことがありますが、「防犯」の問題と「罪の所在」の問題をごちゃまぜにして意見をぶつけ合ってどうなるというものではありません。

「防犯」・・・・当然、自分の意志で危険地域に入った人の責任です。
「罪の所在」・・・・当然、罪はテロリストにあります。

「防犯」に、「安倍首相が余計なことを言わなければ」というのを挙げる人もいるかもしれませんが、犯罪者への非難の意思を示すのはなにもおかしなことではありません。
ビクビクして犯罪者の機嫌を損ねないように振舞うことが既に彼らの思う壺です。

どうすれば殲滅させることができるのか。それともある程度の弱体化を図るぐらいのことしかできないのか。
どうすれば話が通じるのか。それとも話を通じさせるのは不可能な宇宙人みたいな連中なのか・・・・・。

元はといえば13年前にアメリカがイラク攻撃をしたことが間違っていた、と指摘する人は多いですが、では今どうすればいいかという提案をする人はいないようです。
.
    
よろしくお願いします → 人気ブログランキングへ

.

|

« 「国」と「政権」 | トップページ | 魑魅魍魎 »

コメント

何だかテレビは、都合のいいところを摘まんで、流しているようなので、距離を置いてしまいます。
周りがいくら止めても、自分の意志だからと、乗り込んで行ったのだということ。言葉という音声がないと取材効果がないから、求められて言葉にしたけれど、家族は身の置き所もない心情、でしょうね。

投稿: 案山子 | 2015年1月27日 (火) 13時13分

★案山子さん

>テレビは、都合のいいところを摘まんで、流しているようなので<

そうですね。ネットもすべて信用できるというわけではないですけど、色々な考え方を知ることができます。

後藤健二さんは無謀なことをする人ではなかったようですが、友人が捕らわれているのを見捨てることができなかったのかもしれません。
迷惑をかける結果を想像することさえできないほどつんのめってしまったのでしょうか。
激しい後悔もあるでしょうし申し訳ないという気持ちでいっぱいだと思います。肉体的にも精神的にも一番苦しいのは本人だろうと思います。
今現在のご家族の発言が、解放されて帰って来た場合の後藤さんの重荷を少しでも軽くするものであればいいなと思います。

投稿: robita | 2015年1月27日 (火) 22時13分

その世界のことは分かりませんが、
危険を侵してゲットした情報は値打ちが高い、などの、世俗っぽいものもあったりして、なんとも評することはできません。週刊誌などは、そういう人たちから、写真や記事を買っているのでしょう。で、危険と天秤にかける。それがその分野でフリーでやっている人の実態ではないでしょうか。

投稿: 案山子 | 2015年1月28日 (水) 10時47分

★案山子さん

あー、言われてみればそうですね。何も正義感だけとは限らないのですよね。情報は高額で買ってもらえるというのもあるでしょう。
企業なども危険地域へ赴任してもらう時は高い報酬を保障するらしいですし。

投稿: robita | 2015年1月28日 (水) 11時24分

そう。守るべき妻や子がいるのに、何度か交流があったというだけの人のために、命の危険を侵してまで出向いて行く、ちょっと違うような気がしますよ。

投稿: 案山子 | 2015年1月28日 (水) 12時44分

★案山子さん

たしかに。
官邸やヨルダンで不眠不休で奔走している政府関係者の苦労を思うとやりきれません。

投稿: robita | 2015年1月28日 (水) 14時17分

robitaさん、そっちもちょっと違うように思います。
政府関係者(外務省関係者かしら)は、苦労かしら?。外交の力量の見せ所、充実感をもって取り組んでいるかもしれません。自分の命がかかっているわけでもないし、自分の懐が痛むわけでもないし。仕事です。仕事に誇りを持っていればなおさらです。それも脚光を浴びているところにいるわけなのですから。きっと引退後は「あの時自分は、、、、」と逸話にしますよ。
ヨルダンで死刑判決をうけている女性との交換が条件に出ていますよね。イスラム国側の捕虜になっているパイロットと併せての交渉だと、ヨルダン側が重い腰を上げてくれるかもしれない、という話だったり。そうなってくると、イスラム国への身代金の支払いはなくなったとしても、ヨルダンへのODAとか、表面上はどんな形にしろ、上乗せの提案とセットになるのだろうな、と思ってしまいます。後藤氏救出で自国民のポイントを稼ぎたい政府。外交機密費はオフレコでしょうから。
「なんとしても後藤さんの命が大切です」とテレビの昼番組の司会者宮根さんはおっしゃっていますが、彼が優先しているのは、カンペの指示に従った番組進行と視聴率なんだという空気が見え見えだったりして、こっちも世俗そのものです。
なんといっても、どんな言葉で語ろうとも(沈黙していても)こんな事件が起きると、一番肝を冷やして、安否を心配するのはご家族だということは間違いない、と思います。
長いコメントでごめんなさい。

投稿: 案山子 | 2015年1月28日 (水) 16時03分

★案山子さん

うーん、なんか、手柄になるし脚光を浴びるから人質事件だって歓迎しちゃう、どんと来い!みたいに聞こえるんですけど、そうなんでしょうか?
大変な仕事だと思いますよ。
どんな仕事も大なり小なり苦労はあります。みんな苦労して頑張ります。
人質事件への対処は超難しいと私には思えるんですけどねえ。
将来自慢話にする人もいるでしょうし、淡々と語る人もいるでしょう。それぞれの個性というものじゃないかなあ。
マスコミや評論家は稼ぎ時で高揚し、魑魅魍魎が跳梁跋扈。

投稿: robita | 2015年1月28日 (水) 23時16分

手柄になるし脚光を浴びるから人質事件だって歓迎しちゃう、どんと来い!みたいに聞こえるんですけど、
   ↑
なんて!
口が裂けても、ありえません。
来た仕事には、全力を挙げて取り組む。それのみ、です。

話は横道にそれますが、
今読んでいる「東京ブラックアウト」という本(東京電力と原発事故、政府、政治家、キャリア官僚の世界を描いている)
で、原発再稼働させたい意向と反原発の潮流などのアレコレが書かれているのですが、
フクシマ50の作業員のことが出てきます。
もし、再度このような事故が起きた場合、収拾作業のために現場に残れと命じることができるか、それを命じるのはだれか、もし拒否されても拒むことはできない。すると事態はどうなるのか、という問題が議論されています。
事故が起きた時に果たしてだれが責任をとるかもはっきりしていないのに、遂行へ向かおうとする現状、、気が重くて中断中(
苦笑)。
まったく横道ですが、ご苦労な仕事、ということで、思い起こしたもので。
蛇足でした。

投稿: 案山子 | 2015年1月29日 (木) 07時53分

★案山子さん

>来た仕事には、全力を挙げて取り組む<

焦燥感に襲われながら全力で取り組んでいると思います。
そんな中、後藤さんの母親石堂順子さんの言動は心底息子の帰還を願っているとは思えないようなものでした。。
「健二の命を救って下さい。ヨルダンとの交渉にどうか最後まで全力をあげて下さい。残された時間はあとわずかです」という文書とともに安倍首相や官房長官に面会を求めて断られ、「信じられません。日本国を治めている人が・・・」と言ったそうです。
何かしらの反政権グループの後押しを受けているように思えます。
家族はただ堪え、祈るしかない。母親ならわかるはずですよね。
蛇足ですが、書いちゃいました。

>ご苦労な仕事、ということで、思い起こしたもので<

事故原発処理の仕事は、厄介で大変な仕事のうち、最たるものでしょうね。
いつの時代も、国家には「決死隊」が求められる局面があるものだと思います。
高濃度汚染されている原発内部での作業はたしかに決死隊とも呼べる人々に託されるものでしょう。
国全体が著しいダメージを受けるのを、なすすべもなく放置する事態は起きるのか否かといえば、そういうことにはならないと思います。
話し合いや説得の中から決死隊は自発的に生まれるんじゃないでしょうか。その他の国民はそれを願い、感謝し、何らかの形でサポートする、それしかできません。
そんな我々が、放射能をむやみに怖がるもんじゃないと私は思っていて、それをいっときずいぶん書いたものですが、再びそのことについて書いてみようと思います。

投稿: robita | 2015年1月29日 (木) 10時22分

コメントのやりとり、長くなりましたね。
でも、きちんと対応してくださりありがとうございます。

横道話に関してなんですが、robitaさんの

「話し合いや説得の中から決死隊は自発的に生まれるんじゃないでしょうか。」
   
というお考え、国が本腰を入れている事業に、非常時は 「 ↑ 」のような、その時にはどうにかなる、でよいものでしょうか。命がかかっているのですから、当然労働単価は高くなるし、名誉ある仕事と世間はたたえるでしょうが、そういえば、特攻隊みたいになりますね。

なんだか、今の私には、原発は廃棄物処理もできないのに、再稼働あり?の思いにあります。
先の中断している本(現役キャリア官僚が覆面で書いている本)を終いまで読んでみますね。

投稿: 案山子 | 2015年1月30日 (金) 09時13分

★案山子さん

>その時にはどうにかなる、でよいものでしょうか<

その時はどうにかなるという安易な考えでリスクの高い事業を推し進める、ということでなく、今現在事故原発の処理は続いてますよね。
その廃炉処理の過程でもっと危険な事態が起きたら(もう起きないことがわかっているのかもしれませんが)、やっぱり放置するわけにはいかないので誰かがやるしかないと思ったのです。
案山子さんのコメントよく読んだら、「他の原発を再稼動して事故が起きたら」ということでしたね。すみません。
今、川内原発の再稼動が問題になってますが、これについては私も「大丈夫なのか」という心配をしています。桜島や霧島火山帯が近くにあるのに、なぜよりによってここなのかわかりません。
たしかにあの原発が事故を起こすほどの火山噴火があれば、既に鹿児島全域が住めなくなるようなことになるのでしょうが、それでも原発が厄介なことになるのは変わりありませんね。

私は、次世代型小型原発に期待をしています。事故が起きても最小限の被害に抑えられるような。
それでも100%安全、事故は絶対に起きない、なんてことはどんな分野でもあり得ません。

>そういえば、特攻隊みたいになりますね<

「決死隊」というのは、原発に限らず、必要になる局面はあるだろうと私は思います。
特攻隊の場合は、「あんなことしなければよかった。あの前に降参しとけばよかった」で済みますが(と後世の人間は考えます)、「誰かがやらなければ国が滅びる」となれば、決断が迫られます。
(もしかしたら、放置して放射線が出続けても人体にそれほど影響がないのかもしれませんが)

>コメントのやりとり、長くなりましたね。<

そうですね。こういうやり取りをできるだけ多くの方にも見ていただきたいと思います。
案山子さん、ありがとうございますm(_ _)m

投稿: robita | 2015年1月30日 (金) 10時49分

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 宇宙人かゴキブリか、いや人間だ:

« 「国」と「政権」 | トップページ | 魑魅魍魎 »