宮台真司と小林よしのり
昨日のTBSラジオ「荒川強啓デイキャッチ」で宮台真司氏と小林よしのり氏が日本の防衛体制について語っていました。
二人は以前はお互いを無知呼ばわりし罵倒し合うほど考え方が違っていたのですが、今、「対米従属からの脱却」その一点で一致し、宮台氏ときたら小林氏の「新戦争論」(幻冬舎)を絶賛するほどに進化しています。
日本は自主防衛ができるように重武装し、アメリカとは距離を置くべきだ、と口を揃え、それができない安倍総理も、それを言わない保守論客も情けない、と言うのです。
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うーん、やっぱり評論だけするのは簡単なものだな、というのが感想です。「正論」を言うのは簡単。
安倍総理の「本音」はまさに自主防衛・重武装であると思います。戦後レジームからの脱却を目指している人なのですから、当然といえば当然です。
だけどね、日本の総理がそんな本音をあらわにしたらどうなると思います?
「右傾化」「極右」「独裁者」どころか狂人扱いされてしまうのではないでしょうか。マスコミも国民も上を下への大騒ぎとなり、政権は維持できなくなるかもしれません。元も子もなくなります。
小林氏も宮台氏も集団的自衛権など必要がない、と言いますが、2兆円かけて重武装する道のりは恐ろしく遠いと言わざるを得ない現状では、とりあえず集団的自衛権で対処するしかないのではないでしょうか。
安倍政権は、集団的自衛権の議論から入って国民の意識を少しずつ変えていっているように思います。現にあんなに護憲を叫んでいた人たちが、「集団的自衛権では歯止めがきかなくなる。きちんと憲法改正をするべきだ」などと改憲派に転向し始めました。
まあこれは、政権の企みによるものでなく、傍若無人な隣国のふるまいのおかげでしょうが、それにより少しずつ国民の意識が変わってきたことはラッキーだったと言うべきかもしれません。
しかしながら軍事アレルギーの日本国民にいきなり「本音」を表明しては、すべてが台無しになります。重武装で自主防衛が可能になるまでは、アメリカ頼りになるのも仕方がありません。
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キャスターの荒川氏が、「どこから手をつければ良いですかね」と聞くと、小林氏が「簡単なことですよ。その意志を持てばよい」と言いました。
この「意志」というのは、国民の意志に他ならないでしょう。民主主義なんだから。
「簡単なことですよ」・・・・、それが簡単にできれば苦労はありませんよねえ。いくら安倍総理が独立自存の国を目指したとしても、それにともなう重武装(あるいは核武装も含む)を国民が忌避するかぎり、そんなものは実現しませんて。
宮台小林両氏が重武装自主防衛を主張するのは、思ってても言わない他の保守論客よりはまあ勇気はあると思います。でも所詮評論家だから、批判されるにしてもたいしたことはありません。
日本では政治家がそれを言うと「極右」というレッテルを貼られ、とてつもなく危険な人物とされてしまうのです。
宮台氏と小林氏の言うことは正論ではあるけれど、政治や外交を実際にやってる人がこの二人の威勢の良い意見を聞いたらどう思うのでしょうね。
結局、具体的にどこから手をつければいいかの話にはならなくて、ご両人(というか特に宮台氏)は安倍総理とネトウヨをさんざんバカ呼ばわりして、番組が終わりました。
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コメント
世界の脅威は多様化、複雑化しています。伝統的な国家対決の他、テロやハイブリッド戦争など。全く一国で自主防衛など、どれだけ重武装しても不可能です。だからこそ積極的平和主義が必要なわけです。
左翼も右翼も情念だけで安全保障を語っています。安倍首相は情念はともかく、現実とうまく適合できる柔軟性は持ち合わせています。
投稿: Σ・亜歴 | 2015年4月25日 (土) 17時49分
★Σ・亜歴さん
>全く一国で自主防衛など、どれだけ重武装しても不可能です。だからこそ積極的平和主義が必要なわけです。<
なるほど、たしかに。だから自由主義国家間での集団安全保障が必要であり、日本も単独防衛でなく、まだまだ強いアメリカとの軍事同盟が不可欠というわけですね。
宮台小林両氏の主張は周回遅れの「正論」ということになりますか。
安倍首相は難題をうまくこなしているように見えますね。
投稿: robita | 2015年4月25日 (土) 23時46分
先日の「たかじんの…」の後継番組(辛坊さん司会)で、ヨーロッパの5つの国が話題に赤ったのですが、スイスを個別的自衛権を貫いている国として紹介していました。仮に戦争が起きてもどことも連帯することなく、自国は自分の国の戦力で守る、を貫いている、との説明。だから、徴兵制をとっているし、戦闘訓練にも力が入っており、万一攻撃にあったら、自滅覚悟で戦う、という方針だそうです。
スイスは考えた結果の方針でしょうが、徴兵までして「個別的自衛権」に固執は、今の私達の国では、ありえないですね。
テーマの番組は不知なので、関係ない話題ですが…。
投稿: 案山子 | 2015年4月29日 (水) 11時07分
★案山子さん
>テーマの番組は不知なので、関係ない話題ですが<
いえ、そんなことない。小林氏も宮台氏もまさにスイスを念頭に置いていると思いますよ。
二人とも自主防衛を主張し、小林氏は「アメリカとの軍事同盟はあってもいいけど・・・」程度の言い方をしていましたが、宮台氏の方はアメリカと訣別したくてたまらないようで、それならまさに重武装中立でどことも同盟を結ばず、攻められたら国民一丸となって闘う、最後は焦土作戦、というスイス方式を想定してるんじゃないかと思います。
日本政府としてはもちろん単独防衛は無理だとわかっているので、日米同盟を維持せざるを得ないですね。
日本もお金を出すだけでなくまずは自主防衛という行動によって追従一辺倒から変われるのかもしれません。
投稿: robita | 2015年4月29日 (水) 14時02分