闇市の闇
NHKの朝ドラ、主人がはまっていて熱心に見ているので、私も成り行きで一緒に見ています。
今やっているのは「べっぴんさん」。
子供服のファミリア創業者の話で、神戸生まれの私もよそ行きに着ていたその上品で可愛いデザインを懐かしく思い出します。
世間知らずのお嬢さんが商売を発展させていく苦労話はいいのですが、朝ドラの常で、戦中戦後の社会の描き方がファンタジー。
例えば今日、ヒロインの父親が、闇市を暴力で仕切る元締の男と相対して正論をぶち、説教するというカッコいい場面があったのですが、一般人があんな振る舞いができるような場所ではなかったでしょうねえ。
闇市といえば、(特に大阪や神戸は)三国人が幅を利かせ、警察さえも手を出せないところに、ヤクザ(というか任侠の世界の男たち)が制圧に乗り出していたといった状況だったらしいですから。
それともあの父親自身が闇市に睨みをきかせる顔役だったのでしょうかね。
しかしまあドラマなので、感動的に美しく盛り上げざるを得ないのでしょう。
そういえば、昔、知人の年配女性が杉良太郎のファンで、テレビ時代劇を毎週楽しく見ているのだけど、ご主人が時代考証的に矛盾する点をいちいち言うのでいやだと言っていたのを思い出します。
「うるさいなあ、もう。こっちは杉さまの顔を見たいだけなんだから、って言ってやるの」って言ってました。
そういうことなら、昔の少女漫画みたいな構成の朝ドラでも、その根強い人気にはそれなりの理由があるのかな、と思います。
あんまり文句ばかりつけてると、「うるさいなあ、もう。女優の可愛い顔を見るのが楽しみなだけなんだから」なんて言われそうです。
それはそれとして、ジャーナリストの故竹田圭吾氏の遺したtwitterの言葉には同意します。
≪『ごちそうさん』に限らないけど、戦時中を舞台にしたテレビドラマの主人公たちが、いかにも現代的な感覚で国家総動員法や言論統制に「良心からの抵抗」を試みるのがウソっぽくて苦手。そうした人々を善、反対の立場の人を悪と単純に塗り分ける物語設定もウソっぽくて苦手。≫
うん、実際の歴史を描く時にあんまりファンタジーを織り込むとしらける。
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コメント
うちの母も見られる時はやっぱり朝ドラをチェックしてます。
あまり暗い話だと見る気をなくすらしいので、朝からあまり重くて考えさせすぎるものを放送してしまうと今のように多くの人からの支持が得られなくなるのかもしれませんね。
投稿: コウイチ | 2016年11月 6日 (日) 13時23分
★コウイチさん
朝ドラは、ずっと同じ人が脚本や演出をやっているのではないかと思うほど、どの作品もタッチがそっくりですよね。半年続けなければいけないので同じような作りになってしまうのでしょうか。
内容は何も暗く重くする必要はないと思いますが、演出が稚拙な感じがしてどうも好きになれません。ただ、時計代わりにつけているだけという人も多いらしいので、その程度のものなのかなと
投稿: robita | 2016年11月 6日 (日) 23時05分
戦中も含めて昭和を描いた向田邦子や久世光彦のドラマは良かったですね。地味だったけど。
作者や脚本家の政治的イデオロギーを押し出すことがなくて、人間に普遍の心情や生活が淡々と描かれているドラマでした。
現在のテレビドラマは制作しているのが若い世代なので、知識も実感も無く、でも視聴者は高齢者、という何だか気の毒な立場かもしれません。いっそのこと時代ものなら、誰も本当のこと知らないから構わないのだろうけど。
投稿: kai | 2016年11月 7日 (月) 11時43分
朝ドラは見ていませんが、NHKが、ちょくちょく番組の宣伝をするので、なんとなく知っている程度。そうですか、ファミリアの創業者だったんですか。あの頃にスタートした事業者って、いっぱいいるのでしょうね。友人のご主人も、戦後に創業した会社の2代目。それぞれのドラマがあるでしょうね。
投稿: 案山子 | 2016年11月 7日 (月) 21時02分
★kaiさん
>向田邦子や久世光彦のドラマ<
あー、いいですね! すごく懐かしい。
向田邦子のドラマはよく見ました。久世光彦のエッセイも面白く読んだものです。
>作者や脚本家の政治的イデオロギーを押し出すことがなくて、人間に普遍の心情や生活が淡々と描かれているドラマでした。<
仰る通り。押しつけがましくなかったですね。
戦後生まれでも、日本がまだまだ終戦を引きずっている時代に子供時代を過ごした人はなおさら向田邦子の世界にグッとくると思います。
高齢者も朝ドラの昭和の描き方を見ても特に変だと思わなくなったのは、あまりに長く続いてスタイルがすっかり定着し、当たり前になってしまったのでしょう。
投稿: robita | 2016年11月 7日 (月) 22時44分
★案山子さん
朝ドラは視聴率も高いし話題になることも多いです。
戦後の混乱期は事業を起こすにはチャンスでもあったでしょうね。
投稿: robita | 2016年11月 7日 (月) 22時53分
今、輸入物の英国制作のドラマとしてトルストイ原作の「戦争と平和」が放映中だけれど、そんなの見ている人少ないのだろうか。以前に映画で2度みたけれど、ドラマのほうがより長時間にわたるので、丁寧な時代考証で作られた作品は興味深く見れますよ。
投稿: 案山子 | 2016年11月10日 (木) 12時19分
★案山子さん
NHKでやってるのに気づいたけれど、途中から見るのも何なので見ていません。いつか再放送でもあれば見たいです。
投稿: robita | 2016年11月10日 (木) 22時30分