先駆け
今ロシアに奪われたままになっている北方領土の奪い方は本当に理不尽なものだけれど、これを「交渉」で取り返すことなどできないでしょう。取り返したければ戦争をするか莫大な金で「買う」しかありません。
戦争も無理だし金も出したくない、というのであれば、北方4島など返ってこないのは当然だと思います。もう70年以上という長すぎる年月が経ってしまいました。
今回の日露首脳会談後の共同記者会見で強調されたことは「平和条約締結」ということです。
国境線が決定されたうえで平和条約が締結されるべきものならば、平和条約締結を最も大事と考えているロシアは歯舞・色丹をあきらめるかもしれない。
要約しますと:
シベリア、カムチャツカ半島、千島列島、北方領土に囲まれているオホーツク海だ。
千島列島と北方領土はこのオホーツク海という要塞を防護するための高い城壁である。(因みに、中国はこれに学んで南シナ海・東シナ海を自分たちの海にする戦略をとるようになった)
だから、「千島列島線」の一部である重要な国後・択捉をロシアが手放すことは考えられない。
他方、色丹・歯舞は、「千島列島線」の外側に位置しており、ロシアから見た戦略的価値は相対的に低い。日ソ共同宣言以来の「2島返還論」は、ここまで述べたようなロシア側の事情がある、と考えるべきなのである。
国後・択捉のロシア住民に聞くと、一様に日本人には好感を持っており、「この島で日本人と共に住み、共に働くことは大歓迎だ」と言う一方、島の帰属については「ロシアのものだ」と譲らない。
日本の旧島民に聞くと、「北方領土を返してもらいたいと思うのは当然のことだが、今住んでいるロシア人のことを考えると難しい。であるならば、少なくとも我々が自由に往来できる島にしてもらいたい。」という考えが多い。≫
≪本来、国境線が画定されないと平和条約は締結できない。
しかし、北方領土でこれを追求すれば、両国の主張が繰り返されるだけで前に進まない。
択捉と国後が、ロシアにとって最も大きな意味を持ち戦略的に返還困難であることを安倍政権は熟知しており、その中で編み出したのが、「北方領土を『特別な制度』により日露両国民が一緒に住むことができる島」とすることで平和条約締結を目指すとの「新しいアプローチ」なのだ。
もしこれに日露両国が合意できたならば、世界で例を見ない形での平和条約締結となる。前例もなく、前途多難な試みであるが期待しつつ見守っていくべきであろう。≫
自由な行き来と、島周辺の海域での漁船の安全な操業が日本側の願いであるならば、領土返還に固執するのは、得策ではないと思います。
私は国防に関する日本人の甘さについてよく書きますが、同時に「なぜ世界中のどの国も『誰かが攻めてくるかもしれない』と疑い、怖がり、国防に熱心になるのだろう」ということもよく考えます。
近年では、領土拡大に執着するのは、中国とISILぐらいしか思いつきません。
ロシアがクリミア半島を武力で奪ったといっても、ここを押さえておかないとやられる、という恐怖心からでしょう。
その恐怖を取り除くための国家間の取り決めってできるんじゃないでしょうか。
ロシア・ウクライナ問題に無知だから私はこんなことを考えてしまうのでしょうか?
ロシアの指導者もアメリカの指導者も、自分たちが世界の覇者になるべきと考えているでしょうか?
アメリカ大統領に決まったトランプ氏は、別に世界に影響力の強いアメリカでなくてもいいと考えているみたいです。
そう考えると、国家として拡大の野望に満ちているのは中国ぐらいじゃないでしょうか。
世界の海の自由航行や漁業については、国同士で話し合ってなんとか収められるような気がするんですけどねえ。中国を除いて。
なんだか、お互いに相手を怖がって、無駄に戦闘能力を磨いているように見えてきます。
歯舞・色丹がロシアにとってそれほど重要でないなら、この2島には軍事基地は作らないことを約束して返してもらうことも可能でしょう。
そして日本とロシアがこの地域で経済協力をし、発展させ、目を瞠るような共存共栄が実現できれば、その初めての成功例は世界に影響を及ぼすようになるんじゃないでしょうか。
世界中にこういった場所を作ろうという気運が高まれば事実上の国境崩壊の始まりです。
何も宇宙人襲来がなくたって、世界はひとつになれるんじゃないでしょうか。
・・・・・と、平和を愛する者として、安倍首相の「新しいアプローチ」という言葉に、暫しこんな夢を見させていただきました。
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コメント
こんばんは。今年、数か月前に、司馬遼太郎の「菜の花の沖」を読みました。文庫本で7冊の長編です。物語のメインの場は択捉なんですよ。効率の悪いやり方しか知らなかった蝦夷の民に、漁具を持っていき(稲作民族でないから藁縄も筵も持たなかった)、漁の仕方を伝授し、漁業の手立てを教え、魚から作った肥料を内地に運び、内地からもいろんなものを持ち込んだ)。当然人口も増えていった。国後と択捉の海峡をどう一枚の帆掛け船で乗り切っていくか、そんな物語の中にいました(司馬さんなので、当時の資料に基づいて実在の人物を描いています)。
18世紀後半から19世紀初めは、ロシアは漁というより、ヨーロッパに売りつけるための黒テンの毛皮の捕獲に感心があったそうですよ。カムチャッカから転々と続いている島のどこまでをどの国のものにするか、という話も出ているので、実は興味深いのですが。この本をよんだからどうというわけではないけれど、領土交渉している役人さんにも読書家がいるはずだし、何人が読んでいると思うのですが、とひとり思いやったりします。
以上、余談でした。
投稿: 案山子 | 2016年12月26日 (月) 21時25分
なんだか、以前にも同様なコメント書いたような気がしてきました。お手数ですが、削除してください。
投稿: 案山子 | 2016年12月27日 (火) 17時58分
★案山子さん
私も前に何を書いたかよく忘れます(笑)
案山子さんの菜の花の沖の話題は聞いたことあるような気がしますが、舞台が択捉というのは知りませんでした。
まだ領土の概念が曖昧だった時代は、樺太では日本人とロシア人は混在していたそうですね。
それぞれのテリトリーを守るために国は成るべくして成ったものでしょうが、遠い未来に国境がなくなるのかなくならないのか、それもまた成り行きでしょう。
投稿: robita | 2016年12月27日 (火) 23時37分