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2018年8月21日 (火)

国民を教え導くのか 国民の程度に合わせるのか

今朝、自民党総裁選挙に立候補を表明した石破茂氏がテレビ朝日の「羽鳥慎一モーニングショー」に生出演していました。

安倍政権批判を期待するテレ朝と、国民に呼びかけて支持を得たい石破さんの思惑が一致したものでしょう。

石破さんはかなり厳しく安倍さんを批判していました。
加計問題では「加計理事長は首相の親友ならばこそきちんと説明すべき」、経済では「一部の人たちだけが豊かになって、格差が広がった」と野党のようなことを言います。

ただ、憲法9条問題だけは石破さんに理があるのは否めません。

安倍首相が提示した「2項は残して自衛隊を明記する」という案は石破さんの言う通り姑息です。

軍事力を否定し交戦権を禁じる2項をそのまま残して自衛隊を明記するという大きな矛盾を新たに作って、いったい改憲の意味があるのかと思います。

もちろん自民党の苦悩はわかります。
連立を組む公明党とはたもとを分かつわけにはいきません。

「平和の党」である公明党がこれならぎりぎり譲歩してくれるという案なのでしょうし、公明党だって、矛盾はわかるが支持者の強固な護憲の思いを無視するわけにはいかない、ということでしょう。

安倍首相は苦渋の選択をしたのです。

石破氏にそういう事情がわからないわけはなく、その上で理路整然と改憲論を述べます。

それはまさに正論で、総裁選で候補同士の討論があれば、この問題では安倍氏は分が悪い。

なぜなら、巨大な支持母体を持つ公明党の事情や強固な護憲派の正体を討論の場で論じるわけにはいかないからです。

石破氏は自民党の苦悩を知りながら、「国民を説得して、5割以上の賛成を得ることが大事なのであって、その努力もしないで『こういう案でなければ理解を得られない』というのは政治家としてどうなのか」などと正論を述べます。

ずるいですね。

案の定、ネットでは、この番組を見た反安倍派が石破氏を絶賛しています。

国民の十分な理解を得られないまま改憲の発議をするのは良くない、というのが石破さんの考えなのでしょうが、改憲は自民党の支持率が比較的高く安定している時に行うべきでしょう。

石破さんが総裁になったら支持率はどうなるかわかりません。

まして2項削除強硬派である石破さんに反発する国民は増えるのではないでしょうか。

石破さんの言う「国民を説得する」というのは非常に難しいことです。

ほとんどの護憲派はそんな説得に聞く耳持ちませんし真剣に議論するとも考えられません。

なぜなら、色々な政治討論番組でもう長年にわたって改憲問題をイヤと言うほどやっていて、そこではイヤというほど正論が語られているにも関わらず、ほとんどの国民はそんな議論には興味がありません。見ないのです。ただ「平和が大事だから護憲」と頑なに信じている人がどれだけ多いか。

こんな状態では、結局改憲できないまま、専門家の間だけで今までのような不毛な論争が続くだけだと思うのです。

番組コメンテーターの青木理氏や玉川徹氏もかなりずるい。

「僕は石破さんの考えに反対だけど、安倍さんより筋が通っている」と口を揃えて言うのです。

反対だけど筋が通っている、ってなんじゃそれ。もう「何が何でも安倍が悪い」丸出しですね。


安倍首相の改憲案はとても変だけど仕方がない。

それはこの民主主義国において国民の頭の中そのものを表している、ということに他ならないのですから。

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コメント

>robita様

早朝から失礼致します。

安倍総理の改憲案は、姑息(その場凌ぎ)というよりはむしろ次なる改憲に向けての叩き台の役割も兼ねています。だからこそ、これ迄積み上げた解釈改憲(自衛権容認)の上に立ち、先ずは自衛隊明記を優先させたいのでしょう。

石破氏の主張は一見正論のようですが、実際には改憲のハードルを高くして国民を反発させて9条改憲を阻止しようという構えでしょう。所謂「加計問題」の「石破4条件」と同じ発想です。

元々の自民党の改憲案は別冊宝島の『憲法大論争』に記されております。概要を述べますと、9条第1項の戦争放棄及び武力行使や武力による威嚇の禁止はほぼそのままで、第2項に自衛権を明記し、9条の2で5項にわたって国防軍について述べています。

そもそも戦争や武力武力行使そして武力による威嚇を禁止しながら自衛権を認めて国防軍を創設する事自体が無理筋なのです。国防軍を創設する以上は、自国を守ると同時に国際平和に貢献する位の意気込みが無ければならないと思います。

極論を申し上げれば、憲法第9条の第1項は「〜国際平和を誠実に希求する」所で止めておき、第2項で「前項の目的を達するため、日本はその国力と国際情勢に応じて、陸海空軍等からなる国防軍及びその他の戦力を保持する」と明記しておき、9条の2を新設して国防軍についての決まり事を明記すべきでしょう。

石破氏は「少なくても半数の国民の支持が無ければならない」と言いますが、軍隊アレルギーが強い国民が多いのに元々の自民党案に今の段階で多数の支持は得られないでしょう。石破氏はそれを解っていてわざと「国防軍」を盛り込んだのであって、国民を説得するつもりはさらさら無いでしょう(急ぐ必要は無い、と言っていますね)。

姑息といえば、より多くの国民の支持を得ようとして共産党にも擦り寄ろうとする石破氏の方が余程姑息です。まさかとは思いますが、安倍総理による改憲を阻止するために派閥を率いて自民党から離脱する可能性も私達は考えておくべきでしょう。

長々と駄文を連ねてしまった失礼につきましてはどうかご容赦下さいませ。それではこれで失礼致します。

投稿: まゆゆファンMM | 2018年8月23日 (木) 04時45分

★まゆゆファンMM さん

>次なる改憲に向けての叩き台<

たしかに一気にハードルを上げるのは多くの国民には受け入れられないでしょうね。

でも改憲の国民投票はそんなに簡単に続けざまに行えるものなんでしょうか。
叩き台を整えて、その次のチャンスはいつ来るのでしょうか。

以前、宮崎哲弥、井上達夫両氏のラジオでの対談について書いたことがあるのですが http://robita-48.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/post-6590.html
二人とも「ここで一気にやってしまわなければ本格的な改憲のチャンスが来るまで、また10年も待たなければならないかもしれない」と言っていました。
私もそう思います。

すぐに次の段階に行こうとすれば、またマスコミが「軍国主義的な憲法をなし崩し的に成立させようとしている」なんて大騒ぎをして国民がまたそれ煽られて大反発するのではないでしょうか。

かといって国民を説得して半数以上の賛成を得るのは、それもかなり難しい。
石破さんは「国民を説得するのが先」と言うけれど、そんなこと言っていたらいつになっても改憲できませんよね。

石破さんはただの軍事オタクで改憲に熱心なわけではない、なんて言われているようですが、私は改憲を急ぐ必要はあると思います。
「北朝鮮の脅威が」なんてよく言われますが、ほんとは一番備えなければならないのは中国の脅威に対してであり、国際平和維持活動への備えなんじゃないでしょうか。

マスコミも野党も本当はそういうことをわからないはずはないのですが、とにかく安倍政権のやることを邪魔しますね。

国の根幹に関わることなのだから、与野党もマスコミもここは協力しなければいけないのになあと思います。

どうしたらいいんでしょうねえ。

投稿: robita | 2018年8月23日 (木) 09時42分

>robita様

どのみち元々の自民党案では多数の国民の理解を得るのはほぼ不可能です。一気に改正しようとすれば必ず野党やマスコミが猛反発して印象操作に乗り出しますので、とても国民投票に持ち込むのは無理です。

更に重要な事は、自民党単独では衆議院でも3分の2に届かず、参議院に至っては辛うじて単独過半数に達しているという状況です。公明党は9条に関する限りはほぼ護憲派で、はっきり言って9条改正の際にはあてには出来ません。

今の段階で国防軍創設に向けて改憲するとすれば、せいぜい憲法改正の発議条件を緩和するのが精一杯です。或いは余程大きな実績を挙げて来年に衆参ダブル選挙に持ち込み、公明党に頼らずとも衆参で3分の2の賛成派を確保するしか有りません。支持率が高まれば改憲の最後の関門である国民投票もクリア出来るでしょう。

石破氏は今は憲法改正に消極的ですが、これ迄の言動から察するに、日本を中国の属国と化するための改憲なら喜んで実行するかも知れません。

駄文につきましてはどうかご容赦下さいませ。それではこれで失礼致します。

投稿: まゆゆファンMM | 2018年8月23日 (木) 15時17分

★まゆゆファンMM さん

仰ることはよくわかります。
櫻井よしこさんなども「今は安倍総理の案でいくしかない」という考えですよね。
改憲派はあらゆることを考えに考えて、中途半端だけどこの案しかないという結論に至ったのでしょうね。
一気にやっても、段階的にやっても、どちらにしてもマスコミは悪く言いますから、まあ、苦渋の決断でしょう。
考えの足りない国民が多いからこういうことになるのも仕方がないですね。

投稿: robita | 2018年8月23日 (木) 16時04分

初めの一歩は簡単なことからで良いのではないでしょうか?
憲法改正は何回までとは決まっていないと思います。

今でも解釈で多少の融通は効きますから。
国民の8割位の賛成の感触を得られてからと、安倍さんは思われているのでは?

投稿: のん子 | 2018年8月26日 (日) 13時22分

★のん子さん

石破さんがハードルの高い案を主張するのは、改憲をするつもりがないから、なんて言われますね。

>国民の8割位の賛成の感触を得られてからと、安倍さんは思われているのでは?<

そうですね。

現状に合わせてちょっと書き変えるだけのことなのに、怖がる国民がまだまだいますからね。洗脳の厄介なところです。
まあ少しずつやっていくしかないかもしれませんね。

投稿: robita | 2018年8月26日 (日) 22時39分

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