若者よ、時代小説を読みたまえ
前記事で「愛国心を育てる必要がある」と書きましたが、それは押しつけがましく「国を愛せよ」などと教え込むことではありません。
その国に生まれ育っていく中で自然に涵養されていくものですから、まずは日本を嫌いになるような教え方をしないことが最も大事だと思います。(日教組、わかってるか)
現在、教育基本法に定められた「国を愛する態度」はどのような手段で子供たちに教えられているのでしょうか。
祖国を愛する心とは、歴史や伝統文化や小説や映画などの作品に触れる中で自ら感じ、気づき、考えながら会得していくものだと思います。
数日前、産経新聞に元通産官僚の松井孝治氏の「ウクライナ降伏論への疑問」(副題「ただ『生きる』ということでなく」)と題する小論文が掲載されました。https://www.sankei.com/article/20220328-F4HVKI2WIFJA5LLQUY7XTVCT3A/
「たしかに生命は大切だが、それはただ生きるということとは少し違うと思うのだ」と松井氏は述べます。
「『人生というものがそれ自身で意味を持っているかというと、・・・少なくとも人生そのままには意味はないのです』という哲学者田中美知太郎の言葉が今になって腑に落ちる」と。
全文をここに書けないのはとても残念ですが、松井さんのメッセージは私自身も腑に落ちました。
戦後教育によるものだと思いますが、日本人は「命より大事なものはない」「決して誰も死んではならない」という信仰が他国に比べてとても強いと思います。
そんな日本人でも、ウクライナの人々が独立と民主主義という「命以上の価値」のために戦うさまを目の当たりにした時、気づかされるものがあったはずです。
慶応大学で教えている松井さんは、歌舞伎の「仮名手本忠臣蔵」「伽羅先代萩」、落語「文七元結」「柳田格之進」、映画「七人の侍」「日本の一番長い日」などを、ゼミや授業で取り上げるそうです。
そこには、「名誉や罪の意識と引き換えに生命を捧げんとする心意気、他者や、より大きな帰属体のために身体を張って協働する価値観が描かれているから」ということです。
人間の個人的内面ばかりを探るような小説も数々あって若者の共感を得ることは多いですが、歴史の大きな流れの中で人が「善く生きる」とはどういうことなのかを考えさせてくれる文学作品に触れることもまた大事なことではないかと思います。
歴史の流れを決めているのは、自己の内面や自分を取り巻く小さな世界での対人関係で物事を考える人なのか、より大きな視座を持って自己の行動を決める人たちなのか、それは誰にもわかりません。
此方の人生観、彼方の人生観、どちらも個人の価値観であり、どちらにも価値はありますから、どちらが良いとも言えないし、どちらかに統一すべきものではもちろんないでしょう。
近代化以前の社会には身分制度があり、上位に位置した者は国を守る義務があり、国やお家を守るため、また個人の名誉を守るためにも命を捧げました。武士階級には命より大切なものがあったのです。
庶民には国を守るという意識も役割もなく、「命あっての物種」という考え方は庶民独特のものだったでしょう。
民主主義化した国でも国防の役割は政治家や官僚や軍隊にありますが、その指導層を作り上げるのは国民ですから、国民全員が国の守りについて真面目に考えざるを得ないのです。
愛国心教育の意味とはまさにそこにあると思います。
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